表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/47

第十八話「波乱のお茶会」


今日は魔女達のお茶会の日だ。

詩音はあのメディナとの決闘から、姉のレオナとはプライベートでは会っていない。

百合喫茶ポワレで百合演技を交わす事はあっても本音で語り合った事はまだ無いのだ。

学年も違うしこちらから話しかけようとしても避けられてしまう。

姉とまともな人間関係を気付く為にも今回のお茶会はチャンスだと思い詩音は少しはりきっていた。


「あらメディナちゃん、早いのね」


「ごきげんよう、シオンお姉様。お茶会の準備は下級生のお仕事ですから」


そこには紅茶やお菓子の準備をしている中等部で詩音の妹(仮)のメディナと、

同じ一年生で風の魔女のシルフィーヌがいた。

他にも魔女候補生の下級生が何人かいたけど詩音がよく知らない娘なので割愛。

表の生徒会の仕事で少し遅れた詩音は、少し申し訳ない気持ちになりながらも二人の手伝いを申し出た。


「シオンさんいいんですよ、もう殆ど終わってますから」


嫌味なく笑顔で返してくれるシルフィーヌ。

その善意全開の態度に詩音は申し訳なく思った。


「表の生徒会の仕事の方が大変ですものね、シオンお姉様」


嫌味たっぷりで作り笑顔で返して来るメディナ。

その善意の欠片も無い態度に詩音は全く申し訳なく思わなかった。

そうこう問答している内にぞろぞろと上級生の魔女のお姉さま方が教室に入って来た。

辺りを見回すと姉妹同士で楽しく談笑している姿があちこちで見受けられる。

詩音はキョロキョロとレオナを探し、ようやく見つけ近付いた。

しかしそこには既にメディナがいた。


「あらシオン、ごきげんよう」


「ごきげんよう、お姉様」


互いに挨拶し一礼するレオナと詩音。

しかしそこにいたメディナが二人の間に割って入ろうとする。

詩音はそうはいくまいと先手を打った。


「メディナちゃん、私お姉様と話したい事があるの。ちょっと席をはずしてくれる?」


「・・・分かりましたわ、シオンお姉様」


妹は姉の言う事に絶対服従。

これが裏生徒会の鉄の掟なのだ。

そして詩音はレオナとの会話を続けようとする。

紅茶の話、魔術の話、好きな食べ物、趣味等話したい事は山の様にあった。


「あの、ええと・・・」


緊張して何を言ったらいいか分からない詩音。

それをなだめるかの様にレオナは詩音の肩に手をやった。


「落ち着いて、シオン。まずは深呼吸」


「は、はい!」


「あんたがシオンかい?」


そこで深呼吸して落ち着こうとした詩音の静寂を突如誰かが破った。

メディナではない、その人物は長身の赤毛のショートヘアの女性で、後ろにはかつて退けた炎の女魔術師エルデールがいた。


「・・・失礼ですがあなたは?」


「あたいをしらないのかい?サティア、紅蓮の魔女のサティアだよ」


どうやら三年生の魔女のお姉様らしい。

エルデールはその妹といった所か。


「あんたかい、レオナに勝った一年生って言うのは」


「そうですけど」


「じゃああたいと決闘しよう。あたいが勝ったらこれからはあたいの妹になるんだよ」


「え、そんな勝手に決められても・・・それにエルデールさんはどうするんです?妹なんでしょう?」


「エルデールはあんたに負けたそうじゃないか。あたい弱い娘には興味ないんだよね」


レオナと同じ事を言ってるが遠慮なくずけずけと言って来る分タチが悪い。

肝心の妹のエルデールはそれを聞いて泣き出す寸前でいる。

それを見た詩音は決闘を受ける決心をした。


「その決闘、受けます!」


「そうこなくっちゃ」


「ちょっと待って下さい、姉である私に断りもなく勝手に決めないでくれますか?」


レオナが眉をひそめ不機嫌そうにサティアに言う。


「言うじゃないかレオナ。でも決闘で決めた妹だ。愛着はないはずだろ?」


「それは・・・」


まさにその通りで言い返せないレオナ。

しかしレオナの内心はもやもやしていた。

レオナが続きを言う前に詩音が二人の間に割って入る。


「私にはあります!絆はこれから築いていくんです!」


本当は自身にレオナへの愛着があるのかはよく分からなかった詩音だったが、

考えるよりも先に声が出ていた。


「ほう、言ってくれるね。じゃあ決闘は決まりだね」


「もう一つ条件が。私が勝ったらエルデールに謝って下さい!」


「・・・分かったよ。私が負ける事なんて万に一つもないけどね」


詩音は紅茶を一口飲むと、その余韻を感じる間もなく教室を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ