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第十二話「王都襲撃・後編」


「さぁて、国王様。ここで死んでもらおうか」


「よ、寄るでない、曲者め!近衛兵達よ、であえ!」


「ふっ、雑兵がぞろぞろと・・・ブリュンヒルデ!」


ガアアアアアアアアアア!!!


巨大な白竜ブリュンヒルデの口から灼熱の業火が放たれる。

王との間に割って入った近衛兵達は一瞬にして塵と化した。


「ふははは、さすが若き邪竜の長ブリュンヒルデ。王都の近衛兵等相手にもならないわね」


「そこまでよ!仮面のなんか変なの!」


「失敬な・・・と、おやおやあなた様はエレーナ王妃ではないですか」


「天命覇姫のエレーナの名においてあなたを成敗するわ!」


金髪のショートヘアの少女は突如国王と仮面の女騎士との間に割って入ると、

仮面の女騎士に対して構えを取った。


「死にたくなければ去りなさい。今なら見逃してあげる」


「ご冗談を。ブリュンヒルデ!」


ブリュンヒルデはその大口を開くを再び灼熱の炎を吐いた。

しかし黒煙が晴れたその先には無事な国王とエレーナがいた。

彼女が魔力の障壁を張り防いだのだ。


「グアアアアアアアアアアア!!!」


激高するブリュンヒルデが第二の攻撃を仕掛けようと大口を開ける。

エレーナも二度目は無理だと覚悟したその時である、英雄は竜にまたがり現れた。


「ブック!障壁よ!」


突如割って入った詩音の魔術障壁にブリュンヒルデの炎はまたもや防がれる。

そして間髪いれずに竜王デュオンはブリュンヒルデに襲い掛かった。


「こ奴は私に任せて貰おう」


「そうね、私はこの仮面の女騎士を相手するわ」


詩音はデュオンから降りると氷の長剣を精製し構えた。


「ええい、この役立たずめ!」


仮面の女騎士はブリュンヒルデを諦めると魔術で強化したサーベルを構えた。

詩音と仮面の女騎士の二人が相まみえようとしたその時、

天命覇姫のエレーナが割って入った。


「あなたの相手は私がするわ」


「くくく、武器も持たず拳だけで私と戦うというのですか?愚かな・・・!」


「格闘家の武器は拳よ。しかもただの拳じゃないわ!」


エレーナが意識を集中させると両の拳に青白いオーラが纏われた。

どうやら魔術で拳を強化している様である。

魔女の魔力に匹敵するそれは強力な武器であり、同時に防具であった。


「行くわよ!仮面の騎士!」


エレーナは仮面の女騎士に突撃すると迫りくる剣撃をいなしていく。

仮面の女騎士の剣術も相当な物だったが、エレーナの武術はそれを遥かに上回っていた。


「これでとどめよ!」


「くはっ!?」


仮面の女騎士の仮面に一撃を加えるエレーナの強化された拳。

仮面が盾となり砕け散り、女騎士の素顔をあらわにした。


「貴様はリュオーネ・・・!女の癖に魔力0の貴様は王家から追放した筈!」


仮面の騎士の素顔に狼狽える国王。

どうやら仮面の騎士の正体は国王の娘、この国の王族らしい。


「だから復讐に来たのですよ、父上」


「そんな・・・あなたは私の姉さんって事?」


「そうよ。この男はずっと隠しておきたかったみたいだけどね」


「当然だ!貴様は我が家名を傷つける汚点!生かしてやっただけでもありがたく―」


「いい加減にしなさい!」


ぱちん!


詩音の平手打ちが国王に決まる。


「何をする!」


「何をも何もないわよ、悪いのは全部あなたじゃない!」


そして女騎士リュオーネの前に詩音は進み出る。


「それでもこんな形で復讐なんて許されたもんじゃないわ」


「最後に聞いておく、あなたの名は?」


「天道詩音、地球の魔女よ」


こうしてリュオーネによる王都襲撃計画は失敗した。

彼女はまもなく拘束され投獄される事になる。

詩音が王に平手打ちをかました件は今回の活躍から不問とされ、

無事正式に詩音は「地球の魔女」の、シルフィーヌは「風の魔女」の称号を得る事ができた。

そして・・・


「なんであなたまで付いてくる訳?」


学園への帰り道には詩音とシルフィーヌの隣には王妃にして天命覇姫の魔術格闘士、エレーナがいた。


「お父様の命令で魔女になる為に魔術学校に通う事になったの。丁度同じ学校だからついていく事にした訳」


「そう、別に構わないけど邪魔だけはしないでよ」


「承知してるわ、シオン殿」


「ふふふ、賑やかになりましたわね」


まるで仲睦まじい姉妹の様にじゃれあう詩音とエレーナに微笑むシルフィーヌであった。

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