二話『 組合 』
二話『 組合 』
彼の名は エリーゼ・アルカルド
異端冒険者と罵られ、多くの人間から嫌われている…文字通り≪最強≫の冒険者。
二本の剣は、まるで舞うように空を切り裂き
鋭い目付きは、まるで獣のように目標を捉え
俊敏な足は、まるで鳥のように素早く動く
そして…性格にも少々難ありと言う噂が立っている。
例えば…
「はぁ…!?僕に出せる討伐依頼は無いだぁ…!?」
そう、とても短気な所である。
「申し訳ありません…アルカルド様に見合った討伐依頼は、今のところ一件も無いんです…」
「別に僕に見合わなくても良いからさぁ?何かねぇのかよ…何でもいいからさぁ?頼むよ~…!」
「と…申されましても…」
此処は冒険者組合。
≪ 人間の自由 ≫を掲げ、国外に生息するモンスターを討伐したり…薬草採取・運搬の護衛等の…
国で管理する事のできないような細かな依頼、業務を冒険者に委託する場。
そして、冒険者の中でもランク付けが義務付けられている。
下から五段階。
≪D≫
どの冒険者も、最初はこのランクから始まる。
簡単なモンスター討伐や薬草採取で経験を積み、冒険者の心得を学んでいく。
死亡確率も低く…数日の依頼を得れば、誰でも通過できるランク。
≪C≫
このランクで受けられる依頼で追加されるのは、運搬の護衛。
別の国から来る商人を外敵から守護し、実践経験を積む。
しかし…依頼としての難易度は低い為、このクラスも通過は容易。
≪B≫
さらに強力なモンスター討伐依頼を受ける事ができる。
このランクで留まる人間が大半で、死亡確率も跳ね上がる。
だが…報酬額も、一気に跳ね上がる。
≪A≫
此処まで到達できた者ならば、自由に国境を超える事を許される。
更に、依頼料も報酬に含まれるようになり…敢えて危険な依頼を受けずとも、安定した金銭を受け取れる。
≪S≫
そして…Sランク。
このランクは、、称号に近い。
現に、エリーゼ・アルカルドは此の称号を所有する、数少ない一人だ。
冒険者組合がざわつき始める。
『おいおい…またやってんのか、あいつ』
『あ~あ、可哀想に…あの子、新入りだぜ?』
『奴が…異端冒険者、見ただけで恐ろしいわ』
『次はあの子が殺されちゃうんかね~、う~怖い怖い』
そんな不穏な空気を切り裂くかのように
「おっはよ~ございま~す!」
本日二度目の扉の悲鳴を聞きながら、勢い良く入ってきたのは…
「やぁアルカルド少年~今日も威勢が良さそうだね~!」
「げ、、お前か…ルミ」
「げって何よげって~、朝っぱらから辛辣だね~!!」
ルンド・ミーラ
彼が軽口を叩ける唯一の存在で、唯一の幼馴染。
長髪の穢れ無き黒髪を有し、大きな膨らみを強調する胸と、子供の頃から維持されている綺麗なラインをした身体。
そんな思わず見惚れていたくなるような見た目を持ち合わせ、一部では人気博す女性‥‥だが、言い寄ってくる男は極めて少ない。
言い寄った者の 顛末 を、この国で知らない者はいないから。
そして…「ルミ」というのは友情の証として、この国で彼だけが呼ぶことを許されている略称。
「それで~、今日はどうしたの?また依頼が無いって騒いでるの~?」
「げ、何で分かんだよ」
「それがいつもの事でしょ~?あと【げ】を辞めなさい【げ】を、一応私が年上なんだからね~?」
「でもクラスは…」
「はいそれ以上言ったら、少年のもみあげが5cm短くなるからね~?」
「げげげげげげげげ(すみませんでした)」
「ん~人の言葉で話そうか~?」
そんな何気なく、他愛のない会話が続く。
先程まで強張っていた顔が、少しずつ解れていくような感覚を受ける。
彼は改めて笑顔で向き直ると…
「ルミ」
「ん~?な~に~?」
「ありが…」
「お二方とも、お話でしたら此処以外でやってください…!!!!」
「「うるせぇ!!!!」」
「ひうぅ…」
場の空気が凍り出す。
この場に居る誰もが思った
あの新入りの子、死んだな…と。
≪ 作者劇・一 『 もみあげこわい 』≫
もみあげが無くなるって…悍ましいね。
気を付けよ…。
「あれ~?削ってあげても良いんだよ~?」
まてまて…!?
た…助けてぇ…アルカルドォ…!!!!
「‥‥なむさん」
え。
こうして、作者のもみあげは消失したのであった。
…って、終わらねぇよぉ!?
≪ 作者劇・一 END ≫