一話『 日常 』
第一章『 運命の洞窟 』
全ては、此処から始まる。
一話『 日常 』
朝の日差しが窓から差し込む。
鳥は囀り…人間の声が少しづつ増えていく頃…
彼、冒険者 エリーゼ・アルカルドは
御就寝中である。
「ん‥‥ん~…っはぇ」
意識を取り戻し、窓の光を浴びながら…重たい上半身を起こし、
「なーんだぁ、夢かぁ…ぐぅ」
2度寝する。
上半身を起き上がらせたまま目を閉じて、意識は夢の中。
丸まった背中は微動だにせず…下を向いた顔はコクッコクッと、何度も頷くかのような動作をしながら現実と夢の間を反復横跳びする。
だが…躊躇無く、その時は訪れた。
「いつまで寝てんだ馬鹿息子!早く起きろ!!」
扉の≪ガンッ≫という壁との衝突があったであろう悲鳴と共に、男声が耳を突き抜ける。
彼にとっては視認しなくても、誰か分かる存在が鬼のような形相をしていた。
「んぁ~…うるせぇなぁ、、親父、あと5時間くらい良いだろ…」
「良い訳あるか!今日こそ、うちの商品を積み荷から降ろすの手伝って貰うぞ!!!」
「ぐぅえ、それは何度も言ってるが…僕はやりたくねぇんだって…!!!」
「じゃあ早く起きて出てけ!仕事の邪魔だ!!」
「仕方ねぇなぁ、、わーったよ出てく出てく」
流れるような会話を終えた後…目を擦り、大欠伸をして
ベッドから起き上がる。
まるで何もなかったかのように、寝癖で絡まった髪を台所に溜まっている水で解いていく。
すると、後ろに人影が一つ
しかし、同じく視認しなくてもまた誰か分かる人だった。
「アルカルド…また、今日も行くの…?」
「そうだよ母さん、親父に出ていけって言われたからな」
嫌味交じりで言いながら、少し笑みを零す。
「もうお父さんったら、言葉がいつも足りないんだから…」
「分かってるよ、、でも大丈夫」
濡れた髪をタオルで拭き取りながら、不敵に笑う。
「今日も行ってくる」
「ええ、気を付けて」
二本の剣を両腰に装着し、変わり映えのしない服を着用する。
そんな何時もと変わらない『 日常 』のように身支度を整え…
彼、 異端冒険者 エリーゼ・アルカルド の一日が始まる。
扉を開け、朝の光に包まれながら…彼は今日も家から姿を消す。
残された二人は
互いに苦笑いを浮かべていた。
「‥‥少しくらい、手伝ってくれればいいものを…」
「貴方がそう言わないのがダメなんですッ!」
「ぜ…善処する‥‥」