prologue
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運命の刃は、切れ味を失う。
『『ギィーーーーーッ!ギィーーーーーーッ!!!』』
この洞窟を占拠するモンスター、ゴブリン。
集団で咆哮するゴブリンが目に映す先には…一つの、人間の影。
「はぁ…狩れども狩れども、ゴブリンの数は減らねぇなぁ…はぁッ!!」
彼の持つ二本の刃は…まるで踊り子のように空を切り、舞う。
次々と肉を割いては…洞窟の岩肌を血飛沫で染め上げる。
バラバラに成りゆく肉塊に目もくれず、鋭い目は標的を映す。
「そんなんじゃ、僕は倒せねぇぞぉ?ほらほらぁ…ッ!!!」
彼の通る道を塞いだ者は…その地を、その者の墓場に変える。
モンスターにも、人間だろうと…等しく死を齎す災厄。
そんな…誰もが認める狂人であり、強欲であり、短気な彼を…人は、こう呼ぶ。
「っしゃあ、そろそろ最深部到達だな」
異端冒険者 エリーゼ・アルカルド と。
「この洞窟の光景を見るのも何度目だろうなぁ…日に日に湧く数が増えてる気がするんだが、気のせいか?」
そんな彼の運命の刃は…突如として、切れ味を失う。
「ッは…?おいおい…待てよ…どうして」
啞然とする彼の、鋭い視線を向ける先には
「どうして、女の子が倒れてるんだ…?」
何か、誰かの≪悪戯≫か 血塗られた≪運命の糸≫か
それとも…
≪罠≫か。
「お、おい…!しっかりしろ!大丈夫か!?」
これより紡がれるのは…
出会う事の無い筈だった存在同士が、手を繋ぐ。
そんなありふれたようで…常識外れの
ー 軌跡 ー
さぁ、始めようか。