表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/114

<episode 48> 悪役令嬢、かつてない衝撃を受ける。※お食事中の方はご注意ください

「そのスイーツがどうしても許せぬのじゃ!!」


 ズガガガガーーーン!!

 かつてない心の衝撃。

 ワタクシが命の次に大事にしていると評判のスイーツに、これほどまで憎しみを抱いている人物がいたとは青天の霹靂、未曽有の事態である。

 このサキュバス一族のお姫様とやら、スイーツに親を殺されでもしたのだろうか……?


「わらわはスイーツが憎い。ふんわり口の中でとろける純白のホイップクリームたっぷりのショートケーキ。官能的な甘みとちょっぴりほろ苦さが魅力のガトーショコラ。一番許せぬのはメープルシロップたっぷりのパンケーキ……。あれは反則。あれは魂を堕落させる禁断の食べ物……。そんなスイーツたちのせいで、わらわはこんな姿になってしまったのじゃ。だから、許せぬ。そして地獄に来てまでスイーツを食べているくせに、見事なプロポーションと美しさを維持して、あまつさえ、のほほんとハーレム生活を楽しんでいるエトランジュ・フォン・ローゼンブルク。そなたも許せぬのじゃ」


 ふむふむ。ちょっと整理してみよう。

 ①このアリアとかいうお姫様は、自分の容姿にコンプレックを持っている。

 ②その原因をスイーツのせいにして強い憎しみを抱いている。

 ③そして毎日スイーツ生活しているのに太らないワタクシにも強い憎しみを抱いている。

 なるほど。こういうことか。

 …………うん、わかった。

 これは珍しく完全に言いがかりだ。ワタクシもスイーツも何一つ悪くない。


 彼女の口ぶりから察するに元々は大のスイーツ好き、我が同志だったことは明らかだ。

 スイーツは罪作りな存在だ。ついついちょっぴり食べ過ぎてしまう。しかし、そのせいでうっかり太ってしまう。

 これは古来より宇宙全土の女性たちを悩ませ続けてきたジレンマである。彼女もそんな悩める乙女の一人なのであろう。

 ワタクシも同志に武器を向けたくない。何とかして、道を外してしまった彼女を正気に引き戻せないものか……。


 そうだ!

 ここは全宇宙のスイーツ好きを代表して、極上のスイーツで彼女をおもてなしするのはどうだろう。

 類は友を呼ぶ。スイーツ好きはスイーツ好きを知る。スイーツ好き同士、スイーツを食べながら対話すれば、きっと正気を取り戻してくれるはずだ。

 よし。ここで会ったのも何かのご縁。彼女を救うのがワタクシの使命だと思って人肌脱いで差し上げま───


「わらわはスイーツが憎い。憎くて憎くて憎くて仕方がない。だから、この世界から……スイーツを滅ぼしてやるのじゃ!!」


 ズガガガガガガガーーーーーーーーーンンンンン!!!!!!!!


「な、な、な…………?」


 あまりの衝撃に言葉が出ない。

 スイーツを滅ぼすですって……?

 あの生きとし生けるものすべてが愛してやまないスイーツを……?

 世界平和への唯一の希望と言われるあのスイーツを滅ぼすですって……?

 仮に、万が一にも、そんな事態に陥ったら人類は死滅するしかない。


「こ、こいつはマズいぞ。あのお姫さん、エトランジュに向かって絶対に言ってはならないことを言ってしまった」


「どういうことでありますか、ネコタロー殿?」


 この緊急事態に狼狽えるネコタローに、訳を尋ねるクック。

 長年ワタクシと過ごしてきたネコタローが、さも恐ろしそうに、まるで子供たちに怪談話を聞かせるかのように語り始める。


「あれは忘れもしない3年前の冬。エトランジュがスイーツ目当てで王侯貴族が集まるパーティーに出席したときのこと。第一王子の婚約者だったエトランジュに嫉妬していたご令嬢方が、スイーツ山盛りを手にしてルンルン気分のエトランジュに故意にぶつかるという暴挙に出たことがあった。スイーツは床に落ちて台無し。ショックのあまりに声も出ないエトランジュ。その様子を見て、ご満悦の意地悪なご令嬢方。だが意外にもパーティーはそのまま何事もなく平穏に終わった」


「え? 何事もなかったのでありますか? 信じられないであります……」


「問題はその後だ。帰宅したご令嬢方の部屋は見るも無残なウン●まみれ。悪質な事件として徹底的に捜査されたものの原因は不明。エトランジュの転移魔法による犯行であることは誰の目にも明らかだったが証拠がなく迷宮入り。被害に遭ったご令嬢方は今もウン●の悪夢にうなされているという噂だ……」


「うへぇ。なんて恐ろしい復讐をしやがるんだ、姐さんは……」


「どうやら、チビルツがウン●をチビったみたいでスー」


「チビってねえよ!!」


 背後で仲間たちがワイワイと騒いでいる。ネコタローは一体どんなエピソードを語ったのだろうか。途中から全然耳に入ってこなくなった。なぜなら今、ワタクシの脳みそは怒りに震え、怒りに満たされているからだ。

 いかな理由があろうとも、スイーツを滅ぼすなどという蛮行は断じて許すわけにはいかない。

 世界の平和を守るため、何としても、いかなる手段を使おうとも断固阻止せねばならない。


 スイーツの敵は人類の敵。かつての同志と戦わねばならないのは悲しいけれど、これはもはや戦争なのだ。心を鬼にして全宇宙のスイーツ好きを代表し、彼女を屠らねばなるまい。

 ここで会ったが百年目。そこまで自分の容姿にコンプレックスがあると言うのなら、ワタクシが跡形も残らないように地獄の藻屑として化して差し上げようではないか。

 スイーツの敵は一人残らず皆殺しだ。

 逃げるやつはスイーツの敵だ。逃げないやつはよく訓練されたスイーツの敵だ。

 さあ、覚悟なさい。

【お知らせ】

電撃マオウにてコミカライズ決定!!!!


強化期間のため当面の間、毎日更新します。

ランキング入りを目指しますので、ブックマーク、いいね!、★で応援よろしくお願いいたします。

挿絵(By みてみん)

Xと書いてTwitterと読む:@RomanKitayama

Facebook:喜多山浪漫

Instagram:romankitayama


YouTube:@kitayamaromanchannel

tiktok:@kitayamaromanchannel


みてみん:喜多山浪漫

pixiv:喜多山浪漫

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ