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<episode 34> 悪役令嬢、さすがにちょっぴり弱気になる。

第4幕開幕です!

引き続き悪役令嬢エトランジュの物語にお付き合いいただけると嬉しいです。

 ワタクシの魔法が使えなくなった以上、戦略と戦術を根本から見直す必要がある。

 改めて直近の戦闘を振り返ってみると、自ら最前線に立ち過ぎたように思う。それは、家来を戦場に送り込んでおきながら自分だけは安全なところで高みの見物などもってのほか、人の上に立つ者としてそんな卑怯者にだけはなるまいというワタクシの信条ゆえの行動だった。


 その信条には変わらず一点の曇りもないが、魔法を使えなくなった今、主として何をすべきか自らに問うた結果、家来の個性を活かし、戦いを通して家来を育成することもまた人の上に立つ者の責任だという考えに至った。

 そして、魔法を使えなくなったという問題を、チーム(我が地獄の軍団)の成長の機会と捉え、発想を転換することにした。

 どんなときもポジティブシンキング。前向きな思考こそが新たな可能性を切り拓くのだ。

 さて、そうと決まれば、改めて家来たちの特徴を整理しておこう。


 ヒッヒ    《近接物理攻撃に強い。たまに敵をノックバックさせる》

 クック    《防御力が高い歩く壁。たまにド根性でトドメの一撃に耐える》

 ヒャッハー  《弓が得意で遠距離攻撃可能。たまにクリティカルヒットを与える》

 ネコタロー  《移動速度が速い。防御力は低いが、敵の攻撃を回避する確率が高い》

 スイーティア 《ひたすら前進して殴る。たまにスイーツで味方のHPを回復する》

 エリト    《ムチで中距離物理攻撃できる。たまに敵の動きを一時停止させる》

 シュワルツ  《銃火器による遠距離攻撃可能。たまに手榴弾での時間差攻撃する》


 こうして見ると、地獄に堕ちた当初と比べて随分と戦力が充実してきた。

 彼らの個性をうまく活かすことができれば、ワタクシの魔法がなくても何とでもなる気がする。


 けれども……。一抹の不安が頭をよぎる。

 公爵令嬢としての地位も財産も失い、頼みの闇魔法まで使えなくなってしまった今のワタクシにどれほどの価値があるのだろうか。せいぜい残っているのは揺るぎない美貌と隠し切れないエレガントさぐらいのものだ。

 スイーティアとネコタローはともかく、他の地獄の悪魔たちはワタクシの強さに惹かれて家来になったのだから、魔法の使えないワタクシのことをいつ見限ってもおかしくない。そう考えると、恐ろしくなる。

 こんなにも不安になるなんて、地獄に堕ちてからほんの数日の間に出会った家来たちだけど、その存在は思っていた以上に大きいようだ。


 いやいやいや。

 いけない。こんな後ろ向きな思考を巡らせたところで何一つ得することはない。

魔法が使えなくなったぐらいで弱気になってどうする。ワタクシは、エトランジュ・フォン・ローゼンブルク公爵令嬢。どんなときもポジティブシンキング。

 こんなワタクシらしくない弱気は、誰にも知られないように、そっとゴミ箱にポイしてしまうとしよう……。

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