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<episode 18> 悪役令嬢、ど根性メイドの戦働きに見惚れる。

 要塞もかくやという威容の乗り物からゾロゾロと登場する地獄の悪魔たち。

 いかに大きくとも外見からはあれだけの人数を収容できるようには思えない。もしかすると中は異次元空間にでもなっているのかもしれない。これはますます欲しくなってきた。


 一方、不特定多数の悪魔たちに真っ向から立ち向かおうと袖をまくってズンズンと歩みを進めていくスイーティア。

 こっそり魔法で補助していることに本人は気づいていない。にもかかわらず単騎猪突猛進するスイーティアの雄姿に、三人組はあんぐりと口を開けたまま呆然としている。


「貴方たち、スイーティアを独りで戦わせるおつもり?」


 ワタクシの言葉にハッと目を覚ました三人組が慌ててスイーティアに追従する。

 やれやれ。これでは、どちらが悪魔だかわからない。


「にゃーご」


 ネコタローも「困ったもんだ」とでも言いたげに、のそのそと三人組に続く。


 当のスイーティアの様子を見ると、驚くことなかれ、迷うことなく黙々と悪魔たちを殴り倒しているではないか。

 彼女は剣術の心得がないので下手に武器を持つとかえって危険を伴うため、徒手空拳……平たく言えば素手で殴るという最も原始的な戦い方を選択した。その結果、素手で次から次へと悪魔たちをボコボコにしていくバトルメイドが爆誕し、メイド無双している。なかなか斬新な光景だ。


 魔法で能力を底上げしているとはいえ、敵は悪魔。そんなに簡単に倒せるような相手ではない。

 しかし、意外や意外。初めての戦いに萎縮することもなく、獅子奮迅の働きを見せている。敵悪魔が火を噴こうが、激しい水流をあびせようが、彼女の歩みは止まらない。一体、何が彼女を突き動かすのか。


 スイーティアの戦働きに見惚れていると、敵悪魔たちが我先にと乗り物の中へ退却し始めた。最後の悪魔が要塞の扉をガシャンと閉じた後、戦場は元の静けさを取り戻した。

 こうして、スイーティアの初陣は見事勝利に終わった。


「やりました、お嬢様!!」


 勝利の報告に戻ってきたスイーティアは、ふんふん!と鼻息も荒く、興奮冷めやらぬ様子だ。

 三人組はスイーティアの奮戦が嬉しい驚きだったのか、賞賛の言葉で彼女を労っている。ネコタローも満足げな表情でうんうんと頷いている。どうやら、みんな彼女のことを共に戦う仲間として認めてくれたようだ。


「それにしても、ムチ打ち地獄では大人しくムチに打たれていたメイドさんが、あれほどの戦いぶりを見せるとは……本当に驚きです」


「ふふっ。そこはそれ。お嬢様のためなら、えんりゃこりゃ。たとえ火の中水の中ってやつですよ」


 言っていることはよくわからないけど、ワタクシのために頑張ったという確かな気持ちだけは伝わってくる。

 今や世界屈指のパティシエと言っても過言ではないスイーティアだが、もともとはドジっ子メイドの代名詞のようなおっちょこちょいで、料理も少々……いや、かなり下手だった。

 しかし、ワタクシがスイーツをこよなく愛していると知るや否や、猛勉強に猛練習の徹夜続きで瞬く間にスイーツ作りをマスターしていったのだ。

 そんなわけで、とにかくワタクシの専属メイドは根性がすごいのだ。ワタクシはひそかに彼女をど根性メイドと呼んでいる。

……本人には秘密だけど。

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