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<episode 13> 悪役令嬢、専属メイドを救出する。

 地獄の断罪人との戦いは、拍子抜けするほどあっさりと終わった。

 ヒッヒたちがあれだけ怯えるからにはそれ相応の強敵だと覚悟していたが、何の事ない、ものの数分で殲滅することができた。


 ネコタローとヒッヒを前衛に据えて増殖+狂戦士化。

 断罪人もそれなりの数だったため、クックを増殖+防御力アップの補助魔法で強化して防御にあたらせた。

 敵を討ち漏らさないように、ヒャッハーには増殖+命中率アップの補助魔法をかけてからの弓矢による遠距離攻撃。弓矢には毒も付加しておくという念の入れようだ。

 ここまでやれば、王国騎士団一個中隊をも撃滅せしめるだろう。こう見えてワタクシは意外と戦上手なのだ。


「す、すごい……。地獄の最下層だった僕たちが断罪人と戦って勝利するだなんて……」


 いまだ信じられないといった表情のヒッヒ。


「それもこれもすべてはご主人様の闇魔法と、天才軍師も裸足でお魚くわえて逃げ出す采配のおかげであります! 吾輩、感動であります!」


 むせび泣きながら天を仰いでガッツポーズを決めているクック。


「ボクたち、無敵の地獄の大軍団だね♪ ひゃっはー!」


 嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねてはしゃいでいるヒャッハー。

 といった具合に、三者三様、思い思いに勝利の喜びを表現している。


「この程度の勝利、当然ですわ。これからはもっと自信をお持ちなさい。貴方たちにはワタクシがついているんですからね」


「はい! ご主人様は、僕たちにとって闇の聖女様のようです」


 闇の聖女エトランジュ。またしても新たな二つ名が誕生してしまった。

 聖女という響きも悪くない。闇と矛盾しているのがちょっぴり気になるけど。


「にゃーご」


 ネコタローも、ワタクシが尊敬を集めるのが嬉しいらしく、「どうニャ?」と言わんばかりにドヤ顔だ。

 ふふ、可愛い。思わずギュッと抱き締める。


「お嬢様。助けていただいて、ありがとうございます。まさか地獄でお会いできるなんて夢にも───」


 笑顔で駆け寄って礼を述べるスイーティアを右手で制する。

 スイーティアにしてみれば、奇跡の再会を喜び合いたかったのだろうが、そうはいかない。


「スイーツを……」


「はい?」


「お礼なんていいから、今すぐ、一刻も早く、可及的速やかに貴方のスイーツを食べさせてちょうだい!!」


 スイーティアは一瞬戸惑いと呆れの表情を見せたが、すぐにクスリと笑って、満面の笑みで答えてくれた。


「はい、お嬢様!!」


 ワタクシは今、鬼のような形相をしていただろう。

 戦いを終えてMPを消耗したワタクシはスイーツに飢えに飢えているのだ。その状況下で、目の前に恋焦がれた極上のスイーツの作り手である専属メイドがいるのだから、もはや蛇の生殺しもいいところ。禁断症状・中期の一歩手前の大ピンチ。公爵令嬢にあるまじき鬼の形相もやむを得まい。


 ちなみに禁断症状とは以下のように分類、定義される。

   初期症状:手の震え、冷や汗、スイーツが無いと死ぬという強迫観念

   中期症状:不安、焦燥感、仰向けになってスイーツ食べたいと駄々をこねる

   末期症状:幻聴、幻覚、周囲すべてのものがスイーツに見える


 ワタクシが末期症状に至れば、おそらく地獄全域は焦土と化すことだろう。

 スイーティアとの再会にワタクシ自身はもちろんのこと、地獄の魔王とやらも心から感謝するべきだ。

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