錬義とマヒル、気の置けない仲
錬義とマヒルの出逢いは、今から数年前。マヒルが学校を卒業し就職したばかりの頃である。マヒルはまだ幼かった頃に母親を亡くし、ヤナカの母親に息子同然に面倒を見てもらって暮らしていた。
体こそ大きく力も強かったマヒルだったものの、繊細な心の持ち主でもあった彼は、母親を亡くしたことと共に自身がたった一人のダイナソアンであったことでどこか寂しい気持ちを常に抱えていたそうだ。
けれど実はその頃にはすでに錬義とその母親の天照の存在も確認はされていたのだが、なにぶん、人間社会に到底溶け込めそうにない天照の性分から、公にはされてこなかったのである。
ただ、その天照も老衰で亡くなり、それなりの年齢になってから自家受精で宿した錬義を一人残していく結果となった。
母親と違い、アンデルセンや人間の職員らとも頻繁に交流ができていた錬義は逆に人間として暮らす方が良いと判断され、朋群人社会において首都の機能も持つ<アリニドラニ市>へと生活の拠点を移すことになり、そこで、同じダイナソアンのマヒルと出遭うことになったのだった。
すると、似たような境遇を持つダイナソアン同士ということもあってか錬義とマヒルはすぐに意気投合。それこそ幼い頃から友人であったかのように親しくなっていった。
そしてマヒルは建築職人として、錬義は研究者として、改めてそれぞれの道を歩みつつ、親交を深めていったのである。
そんなマヒルの下に届いた、
『三人目(錬義やマヒルの亡くなった母親を含めれば五人目)のダイナソアンが発見され、しかもそれを見付けたのが錬義』
の報せに、いても立ってもいられず、仕事の休みを利用してこうして訪ねてきたということだ。
地球人のように、
『同じテーブルに着いて茶を飲みながら談笑する』
という形ではないものの、朋群人である錬義やマヒルにとってはこれは別にそんなに珍しいことでもなく、再会を喜び合うことに対して何一つ水を差すようなものでもなかった。
「二人は、マヒルとヤナカ。僕の友人だよ。と言っても、斬竜にはまだ理解できないか。だけど、二人は敵じゃない。それだけは分かってほしいかな」
錬義は斬竜の体を抱き締めつつ、穏やかにそう話し掛けた。彼のその様子に、斬竜も強い警戒心は抱いていない。今はそれで十分だった。彼女は、<凶竜の姫様>。人間の理屈は通用しない。
それを理解した上で付き合っているのだから、何も気にする必要はない。そして、マヒルもヤナカもそれは承知してくれている。
だからこの再開も、実に穏やかに終えられたのだった。




