実際の竜女帝の姿
ヤナカは、アクシーズと呼ばれる種族の特徴として体が小さく、胸も大きくない。地球人と比較すると、十代になったばかりの子供のようにも見えるが、これでもすでに＜成人＞である。
一方、マヒルの方は、身長は二メートルを超えているものの、実はヤナカより一歳年下だった。このように、朋群人は種族によって差異が大きいという特徴もある。
そんなマヒルの姿を、斬竜はまじまじと見ていた。無理もない。彼の姿は、彼女の母親である＜竜女帝＞を思わせるそれだったのだから。だから母親の姿を思い出してしまったのだろう。
もっとも、実際の竜女帝の姿は、
『マヒルのそれを百倍狂暴にした』
感じだったそうだが。しかも竜女帝の身長は三メートルを超えており、マヒルよりもはるかに大きい。だから実際には似ても似つかないのだ。それでも、尻尾を持ち、恐竜を無理矢理に人間に似せて作ったかのような、鱗に覆われた青黒い体というのは、竜女帝を思わせるには十分だっただろう。
かと言って、斬竜もマヒルが自分の母親とは別だというのは分かっているらしく、よろこんで近寄っていったりもしない。
しかも、今のところは腹も減っていないようなので大丈夫そうではあるものの、空腹になってくれば食欲が優先されれば、マヒルやヤナカを獲物として襲う可能性だってある。
朋群人であるマヒルもそれは承知しており、油断はしない。
そしてヤナカも。
愛想を振りまくでもなく自分とマヒルを睨むように見ている斬竜に、
「愛嬌のない女だな！」
ヤナカは何ともずけずけと言ってのける。それに対してマヒルは、
「こらこら、失礼だよ。愛嬌がないのはヤナカも同じじゃないか」
諫めるように苦笑いを浮かべながら言った。けれども錬義もヤナカの性分はよく知っているので、
「あはは♡ 手厳しいな。でもこれでも、彼女にも可愛いところはあるんだよ」
笑顔で返す。決して気分を害したりはしていなかった。その上で、
「エレクシア様はお元気かな！？」
錬義が問い掛ける。
「ああ。今は屋敷で寛いでらっしゃるよ」
マヒルが応える。
「マヒルの作った屋敷の住み心地はどうなんだろうな」
「作ったって言っても、僕はほとんど手伝っただけみたいなものだから」
「でも、ガッツリ関わったんだろ？ 斗真璃や璃澄も元気か？」
「ああ、みんな元気だよ」
そうやって会話を続ける。
お互い立ったままで、しかも二十メートルの距離を置きながら、それでも錬義とマヒルとヤナカについては＜気の置けない仲＞であることは察せられる、穏やかな空気が流れていたのだった。
