錬義と斬竜、新しい住まいへ
こうして、斬竜が錬義と共にここ<錬是>の地で一緒に暮らすことが認められた。とは言え、
「ははは…これはまた辺鄙な場所だな」
候補地としてアンデルセンより提示されたもののうちの一つを選び与えられた場所に、オーバーホールを終えたミネルバに乗って斬竜と共にやってきた錬義が素直な評価を口にした。彼が言う通り、そこは本当にただの原野だった。
とは言え、錬是では一般的に見られる<ジャングルを思わせる密林>と、低木と背の低い草が生えているサバンナ的な草原との境目辺りのその場所は、水利も決して悪くなく、野生の動物が生きるには十分に豊かな自然であると言えるだろう。
そしてそこに、全高三十メートルくらいの、
<ローターがないヘリコプター>
のようなものが着陸していた。しかしそれも、錬義達と入れ替わるようにふわりと宙に浮き、離脱していく。
<アリアン>と呼ばれる、輸送用フローティングヘリだった。錬義と斬竜がここで暮らすのに必要な資材を運んできたのである。そしてアリアンが去った後には、百平方メートルほどの広さのウッドデッキ?の上に一軒の小さなコテージ風の家が建っていた。それこそ、<総合研究施設アンデルセン>で二人が泊っていたのと同じ形式の。
しかもご丁寧に、コテージの脇には例のトイレも備え付けられている。
実はそれらは、ユニット化された<仮設住宅>でもあった。ウッドデッキ風の足場の下には排水処理設備及び地下水を利用した飲料水精製設備なども備えられていて、ホビットMk-XXXらの手にかかれば二日で設置できるものであった。
<仮設住宅>とは言え、テント暮らしもお手の物である錬義やそもそも野生として生きていた斬竜にとっては、十分すぎるほどの立派な<家>である。
タキシングでウッドデッキ風の足場の脇までミネルバを寄せた錬義が斬竜と共に降り、
「今日からここが僕と斬竜の家だよ♡」
と改めて紹介した。もっとも、
「?」
斬竜には何のことだかよく分かっていないようだが。
とは言え、あのコテージと同じものがそこにあるのは理解していて、つまり、そこが新しい<巣>になることは、彼女にも分かったようだ。さっそく、トイレで用を済ませた彼女は、コテージに入ってまず食糧保管庫を勝手に開け、そこに入っていたカップラーメンを取り出し、
「ン……!」
と錬義に向かって差し出した。
『これを食べられるようにしろ!』
ということなのは明白だった。
「うん。分かった。すぐに用意するよ♡」
錬義はとても嬉しそうに微笑んだのだった。




