エレクシア、錬義の価値を語る
エレクシアは続ける。
「錬義。あなたは今、自身の非力さを悔いていらっしゃるようですが、それは無用の後悔です。あなたは十分に強い。朋群人の中でも十指に入る強さでしょう。私が戦闘能力も有したロボットだから敵わなかっただけです。
加えてあなたの功績は、斬竜に愛されていること。斬竜に『番いたい』と思わせるだけの存在であったこと。斬竜が愛するだけの価値を示したことです。今回の強攻試験で彼女を守る武力を見せることではありません。あなたはすでに十分に役目を果たしていたのです。
むしろ、斬竜があなたを巻き込んでもいいと考えていたら、私は斬竜を処分していたでしょう。あなたほどの人物でも斬竜にとってのリミッターとなり得なければ、今の朋群人社会では彼女を止められるものはいないでしょうから。
いずれにせよ、あなたがいたことで斬竜は人間との折り合い方を学んだのです。それは十分に大きな功績です」
そう語り、さらに、
「今回の最大稼働により、私の活動許容限界を超えてしまいました。あとは、アンデルセンに任せることにします」
と口にして、その場に座り込み、仰向けに横になってしまった。
すでに製造から八百年以上経っている上に、竜女帝との戦いで機体の限界寸前まで稼働した影響及び、彼女をメンテナンスできる設備がもう限られているため、<活動許容限界>を設定し、それを超えないように稼働していたのである。
これは決して、
『それを超えると壊れてしまう』
という意味ではなく、今後も朋群人社会を可能な限り長く見守るために設けられたものであった。
すると、どこからともなく何台ものホビットMk-XXXが現れ、車椅子を用意し、エレクシアをそれに乗せて、いずこかへ連れ去っていった。
この頃には錬義も自力で体を起こせるくらいに回復し、
「ご苦労だったな、錬義」
再び姿を現したアンデルセンを座って出迎えることができた。
斬竜は、錬義に縋りついて警戒しているが、彼がそっと体を撫でてくれていることもあってか、取り敢えず落ち着いていた。彼女がエレクシアに激怒したのは、エレクシアが錬義を打ちのめしたからである。
それが彼女の<タガ>を外してしまった。愛する錬義を傷付けられて、キレてしまったのだ。
けれど同時に、エレクシアがもう錬義を傷付ける意図がないことを察すると、攻撃を収めることもできた。
これらの事実を総合的に判断し、アンデルセンが告げる。
「居住できる地域については限定されるが、ここ、錬是の地で共に暮らすことについては、許可しよう」




