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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
82/96

斬竜、力を使いこなす

まさか斬竜(キル)が<空間干渉>まで使うと知って、錬義(れんぎ)は、


「斬竜……!」


彼女の名を呼んだ。恐ろしいわけじゃなかった。むしろ彼女の底知れなさにワクワクしてしまうのもある。けれど、彼女が強大な力を発揮すればするほど、朋群(ほうむ)人の社会にとっては大きなリスクになるはずだった。だから錬義は、


『ごめん……僕が君を連れてきたばかりに……』


心の中で詫びてしまう。


彼女に一目惚れして、あわよくば人間社会で一緒に暮らして、<伴侶>になれればと思った。竜女帝の子、<凶竜の姫様>らしいと察したことで彼女の力を自分なりに確かめて、でもそこまで危険なそれでもないと思って、十分に対応できると考えて、連れてきてしまった。


だけどそれは自分が非力だっただけで、彼女の力を引き出せなかっただけで、彼女にはこんな大きく危険な力が秘められていたと察することができなかった己の浅慮を悔やんだ。


しかし、こんなもの、それこそエレクシアでなければ引き出せなかっただろう。エレクシアがいなければ、一生、使うこともなかった力かもしれない。だがそれもあくまで、『かもしれない』というだけの話。実際にそれを持っているなら、何かのはずみで発揮されることもあったかもしれないのだ。


『かもしれない』で語るなら、他の『かもしれない』可能性も想定しなければならない。


「錬義……」


それまで離れて見ていたミネルバが、彼の下に来て、体を撫でてくれる。


「ちくしょう……」


悔しさに震える彼の体を。


けれど、そんな彼を余所に、斬竜とエレクシアの戦いは続いた。


「グアッッ!!」


斬竜の方は、使っているうちにコツを掴んできたのか、明らかに意図して<空間干渉>の力を使い始めていた。エレクシアはそれすら躱してみせるものの、背後にあったコテージの建物がグシャリ!と、まるで雑巾でも絞るかのように捩じられて崩壊した。


いかなエレクシアと言えど、空間そのものを捩じってしまうその力の前では、耐えることができないだろう。ただ、その力が使われる一瞬前に予兆があるがゆえに、竜女帝と戦った際にそれを観測できたがゆえに、反応することができるだけである。


そしてエレクシアは、錬義(れんぎ)とミネルバを背にして立った。それは、斬竜がもし、<空間干渉の力>をそのまま使えば、彼もミネルバも巻き添えを食うということでもある。リンクすることでホビットMk-XXX(サーティ)の体を使っているだけのミネルバは、整備工場にある本体が無事なら何も問題ない。だが、生身の人間である錬義は……



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