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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
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錬義、ビバークを決める

「取り敢えず、あの子にもう一度逢いたいし、この辺りでビバークするか」


錬義(れんぎ)は、特に困った様子もなく、周囲を見回しながらそう言った。


しかしここは、鵺竜(こうりゅう)の生息域の真っただ中。新天地(フロンティア)ハンターとしては、普通は高度一千メートル以上の山岳地を目指す。


と言うのも、鵺竜(こうりゅう)の多くは、その巨体ゆえか、空気がわずかでも薄くなると途端に動きが鈍くなり、場合によっては死に至ることもあるのだ。だから、標高にすれば五百メートル程度の場所までしか生息していない。


そう考えると、平野部以外であれば人間が住むに適した場所も多そうではあるものの、今度は鵺竜(こうりゅう)の一部が小型化に舵を切って進化したらしい、<亜竜(ありゅう)>という大型の猛獣が多数住んでおり、さすがに『安全に暮らす』とはなかなかいかないのである。


その点、<錬是(れんぜ)>と呼ばれる台地の上には、亜竜(ありゅう)からさらに小型に進化した、それこそトラやライオンやクマ程度の猛獣がいる感じになるので、住むには問題ないのだ。


多数のロボットが集落の周囲を常に警戒してくれていることもあり、まれに<凶竜>という天災レベルの脅威が現れるとはいえ、それはまあ台風や地震のようなものでしかないとも捉えることができるゆえ、これまた大きな問題にはならないのだという。


鵺竜(こうりゅう)であればそれこそ体長三十メートルクラスのもざらだし、亜竜(ありゅう)であっても体長十メートルを超えるものが珍しくない上に数も多く、安心して暮らすのは難しいのだ。


なので、鵺竜(こうりゅう)は元より亜竜(ありゅう)もほぼいない場所で、かつ人間が暮らすに適した環境となると、どうしても限られてくる。


標高三千メートル以上であれば亜竜(ありゅう)もほぼいなくなるが、今度は標高が高すぎて人間が適応するにも容易ではない。


人間の世界である<錬是(れんぜ)>がある地は、標高千メートル程度で、大気の濃度も気圧もちょうど人間に適しており、それでいて周囲のすべてを千メートル級の断崖に囲まれているという<奇跡の天然の要害>なのである。さすがにそのような場所は、ここまでまだ確認されていない。


今はまだ人口が七百万人程度なので深刻な状況ではないものの、今の人口増加の傾向では、千年後には現在の自然環境と折り合いをつけるのも困難になるという試算が出ている。


『まだ一千年もある』と思うかもしれないが、だからといって手をこまねいていては『気付いたら手遅れ』ということは十分に有り得るので、余裕のあるうちから対策するのがここでは当たり前なのだ。


そんなこの世界に生きる錬義(れんぎ)は、野生のメンタリティを備えた人間なのだった。



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