錬義、エレクシアの力を知る
『斬竜がこの社会の根幹を揺るがすほどの危険な存在であると判明すれば私はマスターの指示通り、この社会を守るために脅威の排除もためらいません。
これは私に与えられた大前提です。例外はありません。許しも請いません。私は、私が発揮しうる最大のパフォーマンスで、対処します』
エレクシアのその言葉には嘘がないことを、錬義も感じ取っていた。元より『ロボットには嘘は吐けない』ことは子供でも知っていることだ。『敢えて事実を告げない』ことはできても、<嘘>は吐けない。
だから彼女は実際にそうしようとするだろう。だから、
「改めて問います。<排除>とは、この世からですか? この社会からですか?」
と口にする。それに対してエレクシアは、
「第一に社会からです。それが叶わない場合には、この世界から排除します」
感情をこめずどこまでも淡々と告げる。なんとなく人間味さえ感じさせるアンデルセンとはかなり違っている印象だった。けれど同時に、言っている内容ほど恐ろし気な印象もない。
『この世界から排除します』というのは、エレクシア自身も望んでいないであろうことが伝わってくる気がした。それは本当に最後の手段ということなのだろう。
それを聞いて、錬義は、
「分かりました。では、僕は最後まで彼女を守ります」
斬竜の脇で、体中に気魄を漲らせて身構えた。そんな彼に、
「結構です。では、始めます」
エレクシアはまったく気負った様子もなく涼し気に告げて、
「!?」
まるで映画の演出の<コマ落ち>のように一瞬で眼前に迫ってみせた。と同時に、それこそ体の中で爆弾でも爆発したかのような衝撃を感じ、錬義の体がその場に崩れ落ちる。
『な……あ……!?』
何が起こったのかまったく分からなかった。気付いたらそうなっていたのだ。意識ははっきりしているのに体がまるで言うことを聞かない。起き上がることもできない。おそらく掌打か何かを受けたのだろうとは思うものの、彼がこれまで受けてきたどれよりも強力な一撃だった。
『斬竜を守る』
そんな決意などまったく意味をなさない。圧倒的な力。
『竜女帝は、このエレクシア様達を相手に互角以上に戦ったのか……?』
その事実に行き当たり、戦慄する。
が、同時に、途轍もない熱を発する熱源がすぐ傍に現れたかのような気配。
「え……?」
思わずかろうじて視線を向けると、そこでは、エレクシアと斬竜が猛然と打ち合っている光景が。それが熱を発しているのだ。
『斬竜……っ!?』




