相棒ミネルバ、アピールする
新天地ハンターとしての錬義の<相棒>であるミネルバは、彼の周囲を旋回しながら、まるで犬が主人に対してアピールするかのように翼を振ってみせた。
そう、相棒ではありつつ、ミネルバの知能そのものは人間の幼児と同等程度なので、ある意味では<ペット>のような存在でもある。
が、これまでにも何度も錬義の命も救った頼りになる相棒であることもまた、事実なのだ。
そんなミネルバのエネルギー源は、電気。翼に付けられたソーラーパネルによって電力を得、バッテリーに充電し利用している。非常に高効率なソーラーパネルなので、これだけで十分に飛行が可能だ。
もちろん、日が出ているうちだけだが。バッテリーのみだと、数時間しか飛ぶことはできない。とは言え、その辺りをきちんとわきまえていれば実用上は何も問題ない。夜はちゃんと休むようにすればいいだけだ。
なお、<凶竜の姫様>を追っていたらしいエレファントス竜はすでにこの場を立ち去っていた。ずっと離れたところをゆったりと歩いている。凶竜の姫様が何かやって、怒りを買ったのだろう。
さりとて、それ自体がここでは日常の光景だ。今回は凶竜の姫様だったが、普通に肉食の鵺竜も数多くいるので、それらと命のやり取りをすることも当然ある。
そして錬義は、凶竜の姫様が走り去った方向を見詰めて、少し微笑んでいた。
『また、逢えるといいな……』
なんてことを思う。そんな彼の下に着陸してきたミネルバが、
『私を見て!』
と言わんばかりに彼の前に進み出て、
「ブーン! ブゥーン!」
とプロペラを回転させた。本当に犬のようだ。ミネルバに<言葉で会話する機能>はないが、本来はあくまで、
<自動操縦機能が付いた飛行機>
でしかないはずなので別に言葉で会話する必要はないのだが、個人で長く使っていると、このミネルバのように自分で<アピール>するようになる個体もあるのだと言う。
「あはは、ごめんごめん、ミネルバ♡」
錬義は、自分に構ってくれない錬義に拗ねているかのように振る舞うミネルバを労い、翼をそっと撫でた。
翼は、ナイロン製の布のようにも見える素材でできているが、実は刃物程度では傷もつかない非常に強靭な材質であり、<すでに失われた技術>が残したものを利用して作られていた。
かと思うと、計器類はデジタルのふりをしたアナログであったりと、技術レベルが実にちぐはぐな、<技術のパッチワーク>ともいう形で成立している機体である。
これが、ここ、惑星<朋群>の人間の世界を端的に表していたのだった。




