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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
64/96

斬竜、不審な存在を警戒する

こうして朝からガッツリと食事をし、それからトイレで用を足す。昨日のでもうすでに使い方を理解したのか、錬義(れんぎ)も一緒に入ったものの教える必要もなかった。


ただ、浴衣のような部屋着についてはすっかり崩れて前も隠せていない。ただ羽織った状態で腰に帯が巻き付いているだけだ。


その恰好のままで庭を歩いて部屋に戻る。


そして今度は、部屋の郵便受けのようなところに届いていた新しいシャツを、錬義(れんぎ)斬竜(キル)に着せてあげた。彼が彼女のために依頼してあったものだ。


錬義も、届けられたジャージに新しい着替える。これも、検査と研究のためにここに滞在する間は無償で提供されるものである。


こうして二人とも着替えて、コテージ風の建物の外に出た。するとそこには、一体のロボットの姿。


<ドーベルマンSpec.V3>


朋群(ほうむ)人の社会においては<軍人>的な役割を負うことの多いロボットだった。最も数が多いホビットMk-XXX(サーティ)の上位機種であり、アンデルセンの下位互換機のような存在でもある。


実際、外見上も、アンデルセンを一回り小さくしたような印象の、二腕四脚のロボットだった。


「!?」


そんなドーベルマンSpec.V3の存在に気付いた斬竜は、明らかに警戒していた。錬義と出逢ったばかりの頃のように、獲物と見れば容赦なく襲い掛かっていた時とは違う。


しかしこれは、朋群(ほうむ)の野生動物では一般的な反応だった。このドーベルマンSpec.V3やアンデルセン、そしてホビットMk-XXX(サーティ)のような異形のロボットに対して、野生動物の多くはまず強く警戒し、距離を取ろうとする。いきなり襲い掛かったりすることはむしろ少ない。あまりに異様すぎることで、肉食獣ですら<獲物>と認識できないのだろう。


そしてそれは斬竜も同じだったということだ。


「……」


斬竜は、錬義の後ろに隠れるようにして警戒する。とは言え、『怯えている』というような印象ではなかった。あくまで警戒であり、自身に危険が及びそうだと判断すると容赦なく攻撃を加えられるように身構えているのが分かる。


『油断する』ということがない彼女の力強さを感じさせる姿だった。


「斬竜。あれは敵じゃないよ。危険はない」


錬義はそう言うものの、彼が警戒していないことは分かるものの、何か感じるところがあるのか、彼女はやはり強く警戒していた。と言うのも、実は、ドーベルマンSpec.V3の方も、彼女がどういう存在かを探るために敢えて戦闘態勢に入っていたのだ。


彼女はどういうわけかそれを感じ取っていたようであった。



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