錬義と斬竜、ワイルドな朝食
そうしてぐっすりと眠った錬義と斬竜だったが、それだけに空が明るくなり始めると目が覚めてしまった。
まず斬竜が目を覚まして見慣れない場所だったことにビクッと体を竦ませると、
「……おはよう……大丈夫だよ。ここは安全だ」
錬義も目を覚ましてそう声を掛けた。その彼の様子に斬竜も安心したようだ。
そして起きた途端に、錬義は食糧保管庫から大きな肉の塊を取り出して、電子レンジに放り込んだ。それを丸ごと温め始める。
「……」
そんな彼の様子を、斬竜がじっと見ている。肉を取り出したことは匂いで気付いたのだろう。そしてそれに何かしてから食べるというのは、ここまで彼と一緒にいたことで理解しているようだ。
が、「ぐう!」と彼女の腹が抗議でもするかのように音を立てた。さすがに昨夜はラーメンを三杯しか食べていないので、もう腹が減っているということか。
すると錬義はやはり食糧保管庫から今度はハムを取り出してきて、これまた部屋に備え付けられていた包丁で厚さ二センチくらいに切り、彼女に手渡した。それを受け取った斬竜はふんふんと匂いを嗅いで、少し警戒していたようだったものの食欲に負けたか、ガブリ!と大きな口を開けて食らい付く。
「!?」
瞬間、斬竜は気に入ったのかガツガツと貪り始める。
ハムとして加工されたものだったので塩分は多いものの、斬竜の塩分耐性が非常に高いことはすでに察せられているので、野生動物にハムを与えるよりは気にせずに済むだろう。
ハムを一枚食べきったところに、錬義はさらに彼女に敢えて分厚く切ったハムを渡した。斬竜はそれにも食らい付き、たちまち貪っていく。
そうして大きなハムの塊を斬竜と錬義の二人だけで食べきってしまって、そこに、
「ピピ! ピピ! ピピ!」
と、電子レンジのアラームが。錬義が電子レンジの蓋を開けてジリジリと音を立てる肉の塊を取り出すと、それをテーブルの上に置いて包丁で無造作に切り分け始めた。それこそ、ごろりとした大きさの塊で。
今はまだ野生と変わらない斬竜にはこの方が食べ応えがあって好みだろうと考えて、敢えて雑に切り分けたのだ。
すると斬竜は、肉の塊にそっと指を触れさせ、
「!」
ビクッと手をひっこめた。
「まだ少し熱いかもね。気を付けて」
錬義の忠告を具体的には理解していないとしても、斬竜は、
『熱いは、痛い』
というのはもう理解しているので、しばらく経ってからまたつんつんと指でつついてもう大丈夫となったら掴んで、しかしさっきのハムのようにいきなりはかぶりつかず、そろそろと歯を潜り込ませて熱さを確かめながら食べたのだった。




