錬義と斬竜、寄り添い合って眠る
水浴びをして体がさっぱりとした上に、ここまでのところ目立った危険も察知できなかったからか、斬竜はすごく眠たそうな様子になっていた。部屋に備えられていた浴衣風の部屋着に着替えさせて、同じく浴衣風の部屋着に着替えた錬義がベッドの上に寝転ぶと、彼女もその隣で横になった途端に、スースーと寝息を立て始める。
いろいろあって緊張が続いた後でそれが解けたからだろう。
「おやすみ……」
囁くようにして声を掛け、錬義も目を瞑ると、すぐに眠りに落ちてしまい、二人で寄り添い合うようにして眠ったのだった。
が、二人はそうやって眠ってしまったが、研究施設としてはまだまだ眠れない。いや、眠ることがない。人間の職員についてはもちろん休みもとるものの、アンデルセンをはじめとしたロボット達にはそもそも休息は必要ないので、ベッドに設置されたセンサーにより得られる二人のバイタルサインも詳細に分析する。
それによると、錬義も斬竜も、非常に深い眠りに入っていることが分かった。錬義はもちろんここが安全であることは承知しているし、彼がリラックスしていることで斬竜も安心できているのだろう。なので、こうやって深い眠りもとれることが分かる。
ちなみに、ここで<職員>として働いているロボットは、
<ホビットMk-XXX>
と呼ばれるロボット達である。ホビットMk-XXXは、現在の朋群人の社会最大の<マンパワー>であり、最も多くの場面で運用されている汎用機だった。それこそ、一般家庭の家事全般から、<商店の店員>、<建築作業員>、<インフラ工事の作業員>、<あらゆる生産ラインのライン工>、<農業従事者>、<漁師>、<ガードマン>、<警官>、<役場の窓口係>等々、それこそ<人手>を要するほぼすべての場面で運用されている。一部、さらに高い性能を求められる<軍人>としての役割などについては、上位機種である<ドーベルマンSpec.V3>が運用されているが。
それでも、人間にできる仕事のほとんどはホビットMk-XXXでこなせてしまうので、人手が足りないとなれば順次投入されるために、マンパワーが不足することもない。そして、<ブラック労働>などと言われるような過重労働を人間に強いることもない。
だからこそ安定した社会運営が可能なのである。
そして、そんなロボットの実務上の実質的な頂点に存在するのが、アンデルセンだった。他の七賢人達は、ある意味、
<朋群人社会の象徴>
として祀られている状態とも言えるだろう。




