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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
61/96

錬義と斬竜、ゆったりと過ごす

彼女の青黒い髪は、汚れていたことでより暗い色になっていただけのようだ。浴槽の中でほぐすようにして洗うと汚れが落ち、まるで鳥の羽毛のような艶やかな青色に変わっていく。とは言え、全部を丁寧に洗うことはできないので、途中までだ。急ぐ必要はない。斬竜(キル)にはゆっくり馴染んでいってもらえばいい。


ちなみに、斬竜(キル)は保護されている上に錬義(れんぎ)は彼女の保護観察者という立場なので、<宿泊料>はかからない。改めて言うがここはそもそも<研究施設>であって<宿泊施設>ではないのだ。


浴槽の中で髪を洗ったことで水がすっかり汚れてしまったものの、元より二人ともそんなことは気にしない。そして風呂の湯もすべて回収されて分析され、危険な病原体を持っていないか等について徹底的に調べられる。


つまり、<汚れ>ではなく重要な検体>である。それらの分析は、このコテージ風の建物から少し離れたところにある分析施設で行われている。ちなみに、トイレの排水も同じだ。すでに斬竜(キル)は小も大も済ませているので、それこそ貴重な資料として徹底的に調べられる。


それは、ロボット達によって一日中休みなく行われ、もうこの時点で斬竜(キル)の腸内細菌の分析までほぼ済んでいた。そしてこの時点では、危険な病原体については検出されなかった。ほぼすべて既知の細菌類であり、新たに発見されたものも即時解析され、現在の薬品薬物薬剤で対処可能なことが判明する。


そうとは露知らず、斬竜(キル)錬義(れんぎ)との水浴びを楽しみ、リラックスしていた。


こうして一時間近く水浴びをして上がった時には、斬竜(キル)の体がかなりさっぱりした印象になっていた。日に焼けて褐色になっていた体も、汚れが落ちたことでかなり明るい印象になっただろうか。


髪については、頭の方はまだ完全には綺麗になっていないものの、首から下の部分はすっかり汚れが落ちて、サラサラとした青色の、美しいそれに変貌している。


さりとてこれすらただ水洗いしただけなので、きちんとシャンプーをすればもっと綺麗になるだろう。だがそれも急ぐことはしない。彼女にとって不快な場所になっては意味がないのだ。


それを忘れてはいけないし、忘れない社会だからこそ、決定的な衝突を起こさずに済んだ社会なのである。


<凶竜>のような、それこそ問答無用で人間を憎んでいる存在以外とはだが。


しかし同時に、<凶竜>のような、和解が決して敵わない埒外の存在がいることにより、『備えを怠らない』という意識が保たれているというのもあるだろうが。



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