すごいな、お前!!
錬義は、<凶竜の姫様>を逆さまに抱え上げた。足も大きく広げられた状態で、少女のなにもかもが丸見えの状態だった。
だが、それどころじゃない。錬義はそんなことにはまるで構うこともなく、
「大丈夫か!?」
少女を気遣う。
しかし、その瞬間、
「!?」
少女の太腿が錬義の頭を挟んで固定、しかもその体で視界を遮られたところに、少女が上半身を跳ね上げた。彼の股間目掛けて頭突きを繰り出したのである。
が、錬義もそれに反応し、両手を交差させて少女の喉の辺りを受け止めた。これにより頭突きの威力の大半が削がれ、少し強めに股間に頭を押し付けるだけの格好になった。咄嗟に少女が股間を狙ってくるであろうことを察しての反応だった。
直後、少女は、錬義の頭を太腿で挟んだまま、体を大きく捩じった。それにより彼の首を折ろうとしたのだろうか。しかし錬義も、彼女の動きに合わせて体を回転させ、自ら地面に転がる。ちょうど、形としては、<フランケンシュタイナー>という技を少女が掛けたような形になったと言えるだろうか。
そうして二人して地面を転がった後、互いにその場を飛び退いて、間合いを取った上で、睨み合う。
少女は、<凶竜の姫様>は、殺意をまるで隠そうともしない<肉食獣そのものの貌>を向け、錬義も、少女の<あられもない姿>を目の当たりにしたことなどまるで意に介していない緊張した面持ちで、身構えた。しかも、
「ははっ! すごい! すごいな、お前!!」
嬉しそうに声を上げる。一切油断はしていないが。
さらにその時、ブーン!という音が。
「!?」
凶竜の姫様がその音の方に視線を向けると、鳥のような影が自分目掛けて急降下しているのに気付いた。と同時に、彼女は、まったくためらうことなく全力でその場を飛び退き、走り去ってしまう。
自分が不利だ悟るとそれこそ<プライド>など欠片も見せずに逃げる。
野生の動物そのものの振る舞いだった。
そしてこの時、凶竜の姫様目掛けて急降下してきたのは、錬義が乗っていた<ウルトラライトプレーン>だった。それが、まるで自分の意思を持つかのように、錬義を援護するかのように、動いたのである。
と言うか、本当に援護のために急降下したのだが。
地面すれすれで上昇に転じ、その場を旋回し始めたそれに対して、
「ありがと、ミネルバ」
錬義が礼を口にする。
そう、この<ウルトラライトプレーン>の名は、<ミネルバ>。実は、
<ウルトラライトプレーン型のロボット>
だったのである。しかも、自律行動が可能な、スタンドアロン機だったのだ。
新天地ハンターとしての錬義の<相棒>である。




