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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
54/96

朋群人の社会、その概要

地球人の世界では、


『相手が自分の思い通りに動いてくれることが正しい』


という思い込みがあったからこそ多くの問題が生じていた。自分の思い通りに他者を操ろうとして脅したり欺いたり暴力をふるったりということが行われてきたのだ。


なれば、そもそも、


『相手が自分の思い通りに動いてくれることはない』


という事実を前提にすればよいのでは? 何より、


『こいつの言うことには従いたくない』


などと思われるような者でいないことを心掛ければよいのでは?


朋群(ほうむ)人の社会ではそれがまず徹底されている。第一に相手からの信頼を勝ち取ることが優先されるのだ。特に、初対面の者同士では。だから初対面の相手を罵ったりもしない。匿名の陰に隠れて見ず知らずの相手を罵ったりもしない。多くの人間がそんなことをしていれば、疑心暗鬼にもなって当然だろう。


しかし同時に、相手が<用心>してくることも当然だと考えるので、斬竜(キル)のように警戒して従ってくれないことも、分かっている。


むしろ、ラーメンにつられて三十分程度で従ってくれるなら早い方だ。


リムジンの中でも、ラーメンを食べ終えると斬竜(キル)錬義(れんぎ)の陰に隠れるようにして、アンデルセンらを警戒した。しかしアンデルセンも兵士達も、平然としている。


なお、ミネルバは、二ヶ月以上に亘って錬義(れんぎ)と共に錬是(れんぜ)を離れていたので、滑走路近くの整備場で徹底したメンテナンス(分解整備(オーバーホール))を受けることになる。劣化した部品などについては全交換だ。


自分達がロボットのおかげで穏やかに暮らせていることを承知している朋群(ほうむ)人の社会においては、ロボットはとても大切にされている。しかしそれでいて、


『ロボット守るために人間が犠牲になる』


などというような本末転倒な事態が起こらないように、普段からメンテナンスが徹底されるのだ、


『壊れても必ず直る。だから人間が犠牲になってロボットを守る必要がない』


という認識が崩れないようにするために。


とは言え、一部のロボットの中は、それができない者もいる。修理できる技術が失われてしまっている、現在の朋群(ほうむ)人の社会では修理が不可能なロボットも、一部にあるのだ。


エレクシア。


メイフェア。


イレーネ。


以上の三人(三体)及び、


<アリアン>


と呼ばれる航空機がそうだった。これについても必要があれば後々説明することにもなるだろう。


すると、<宿泊施設>へと向かうリムジンの窓から、飛行機の姿が見えた。双発レシプロの小型旅客機が大型滑走路へのアプローチに入っているところだった。


これもまた、この世界の技術レベルを表す光景の一つであった。



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