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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
52/96

僕と一緒なら心配ないよ

錬義(れんぎ)を迎えたアンデルセンは、彼の後ろに隠れている斬竜(キル)には顔を向けなかった。顔を向けなくてもロボットであるアンデルセンには情報は十分に得られる。元より、通信圏内に入ったところでミネルバが保存していた情報についてはすべて送信しており、おおむね把握されている。


「ルルルルルルル……!」


斬竜(キル)は、得体の知れない見慣れない存在アンデルセンやその脇に控えている者達(銃を構えた兵士達)に対して威嚇をしているものの、錬義(れんぎ)が平然としていることからそんなに危険な存在ではないことは察しているようだ。


ここまで一緒に過ごしたことで、一緒に狩りをし、一緒に休み、一緒にメシを食い、一緒に糞小便をし、一緒に戦ったことで、錬義(れんぎ)が警戒しない相手については特に危険はないことは学習したようである。


なので、知能は決して低くないようだ。ただし、ここまで言葉を話そうとするような気配は見せなかったので、正直なところ言葉が普通に話せるようになる可能性はほとんどないと思われるが。


しかし、それも問題ない。


アンデルセンも、


「ふむ。自身の感情を素直に表に出してくれるいいコじゃないか。素敵な相手を見付けてきたな。錬義(れんぎ)


どこか、


<彼女を連れてきた孫を褒める祖父>


のような雰囲気を見せながらそう告げた。ただし、急に体を動かすことはしない。斬竜(キル)が警戒するからである。アンデルセンの脇に控えた兵士達も、淡々とした様子だった。


そもそも、万が一のことがあってもアンデルセンだけで対処は十分に可能なのである。兵士を連れているのはただの<ポーズ>に過ぎない。加えて、実は狙撃もできるように周囲から専用のロボットが何機も狙っている。そういう備えは十分に行われているのだ。錬義(れんぎ)も承知の上でここにいる。


「相変わらずだな。ここは」


周囲を見回しながら錬義(れんぎ)は言う。彼も昔、母と一緒にここに暮らしていた時期があり、よく知っているからだ。


錬義(れんぎ)の母親は非常に気性が荒かったので、ここで監視の下で暮らしていたのだった。ほぼ、野生の獣に近い存在だったという。


まあそのことについてはまた後ほど語るとして、


「とにかく、二人の<新居>に案内しよう」


アンデルセンはそう告げて、自動車に乗り込んだ。大きめの四輪駆動車のボディを延伸した<ストレッチリムジン>と呼ばれる車両のような自動車だった。


「大丈夫。僕と一緒なら心配ないよ」


さすがに警戒する斬竜(キル)に、錬義(れんぎ)は穏やかな声で話し掛ける。慌てない。急がない。無理をさせない。アンデルセンと兵士達は先に乗り込んで、二人をただ待っていたのだった。



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