アンデルセン
こうして、アカネとの交信を行った二日後、正確には五十六時間後なので<三日目>になるのだが、ミネルバは<アンデルセン>上空へと到達した。
そのミネルバの後方を、二機の飛行機が飛んでいる。
<ドーベルマンSpec.V3>というロボットに、フライトユニットという<飛行用ロボット>を連結させた機体だった。いわば、<錬是における航空戦力>である。錬義が外部からの<客>を連れ帰ったということで念のためにスクランブル発進してきたのだ。
そして、
「やあ、錬義。おかえり。こちらの受け入れ態勢は整っている。七番滑走路に下りてくれたまえ」
携帯端末からそう指示が聞こえてきた。
「了解、アンデルセン。よろしく頼む」
錬義が応え、指定された七番滑走路へのアプローチに入った。ゆっくりと高度を下げていく。彼の体に掴まっている斬竜も落ち着いたものだ。
何やら見慣れない景色を不思議そうには見詰めているものの、特に警戒した様子はない。まあ、フライトユニットを連結したドーベルマンSpec.V3が現れた時には警戒もしていたが、攻撃してくる様子もないので気にしなくなったのだろう。
<七番滑走路>は、全長千メートルの中型滑走路だが、正直、ミネルバが着陸するにはむしろ大仰でさえある。実際には百メートルも要らないのだから。
とは言え、そこが斬竜が収容されることになる施設から最も近かったので、指定されたというのもあったようだ。
そうして何も問題なく着陸し、そのままタキシングで移動。滑走路の端に、何人かの人影と車両が見えた。いや、正確には、
<人間とロボットと車両>
だが。
「やあ、おかえり。錬義」
ミネルバから下りた錬義と斬竜を真っ先に出迎えたのは、四脚二腕の、やや武骨な印象のあるロボットだった。
「や、アンデルセン。またお世話になるよ」
錬義はそう気軽な感じで挨拶するが、そのロボットこそが、現状で人間達の前に唯一姿を見せている七賢人の一人、<アンデルセン>である。
ここ、総合研究施設<アンデルセン>の責任者にして<町長>でもあるが。
アンデルセンは、先にも触れた通り、やや武骨な印象のある四脚二腕のロボットであり、頭部は、
<ヘルメットとゴーグルを着けた軍人>
のようにも見えるデザインをしていた。その外見から受ける印象の通り、元は、
<外からの脅威に備えた武力としてのロボット>
である。もっとも、錬是における<外からの脅威>とは、<凶竜>を主に差しているだけで、人間同士の戦争はここまでのところ起ってはいない。




