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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
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本来の<生物の世界>

そんな二人だけ(正確にはミネルバもいるが)の旅は、正直、夢のような時間だっただろう。斬竜(キル)も、基本的には落ち着いた様子だった。ここまでのその様子で、彼女自身は人間を憎んでいるわけではないと改めて確認できた。


ただし、敵対するようであれば瞬間的に攻撃態勢に移り、容赦なく命も狙ってくるだろうが。しかしそれは野生の生き物であればむしろ当然の姿なのだ。<礼儀礼節>などという概念を頼りに『<安心安全>が得られて当然』などと考えている地球人がおかしいのである。


本来の<生物の世界>というのは、


『生きるか死ぬか?』


が大原則であり、そこには善も悪もない。そんなものは地球人がでっち上げた虚構の概念だ。その虚構の概念に頼っていたから地球人は長く複雑な問題を抱え続けた。厳密にはいまだに完全には解決されていないが、少なくとも二十世紀や二十一世紀頃に比べれば多少はマシになっている。


……はずである。


しかしそれもここ朋群(ほうむ)には関係のない話だ。地球人の現在の技術では朋群(ほうむ)に辿り着くのは至難の業であり、むしろ宇宙の藻屑と化す危険性の方がほとんどを占めるだろう。そんな危険を冒す物好きな愚か者も多くはない。


善も悪もなく、ただ生きるか死ぬかという世界で生きていくために、朋群(ほうむ)人は、とにかく相手を知ろうとする。相手を知ることで折り合いをつけられる距離感や接し方を探る。地球人のように自分の価値観を一方的に押し付けてくることも基本的にはない。それをする時は、まあ、


<じゃれ合い>


がしたい時と言えるだろう。要するに構ってほしいのだ。


錬義(れんぎ)斬竜(キル)の関係は、正直、そこまでではなかったかもしれない。微妙に距離があるのだ。親しいのは間違いないのだが、斬竜(キル)は完全に心を許してるわけでもなさそうだ。


でも、それがいい。


むしろ錬義(れんぎ)にデレデレの甘々な斬竜(キル)というのは、今の時点では違和感があるかもしれない。なにしろ発情もしていないのだから。


あくまで<仲間>という感じだろうか。


そんな状態で旅を続け、錬是(れんぜ)に近付くほどに緑が増え、それに伴って鵺竜(こうりゅう)亜竜(ありゅう)の姿も増えていった。その分、地上に降りる時には注意も必要になっていったが、斬竜(キル)は野生の勘とでも言うべきか危険が増していることを本能的に察してか、錬義(れんぎ)の傍を離れることはなく、何か問題を起こすこともなかった。


迂闊なことをすれば自分の命が危ないことを感じ取っていたのかもしれない。


ちなみに、ラーメンは早々に斬竜(キル)がすべて食べ尽くしてしまったので、最初は拗ねてしまったりして慰めるのに一苦労だったりもしたが。



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