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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
45/96

僕と一緒に行くかい……?

斬竜(キル)…僕と一緒に行くかい……?』


錬義(れんぎ)はそう問い掛けたが、もちろん、彼女に人間の言葉は理解できないだろう。ただ、ゆっくりと動き出したミネルバに近付きながら自分に手を差し出す彼の振る舞いに何かを察したのか、斬竜(キル)も彼に向かって走った。


そして二人でミネルバに駆け寄って、座席に飛び乗る。彼がミネルバに乗っているのを見ていたことで、どうすればいいのかを理解したのかもしれない。


そんな部分からも、彼女の知能が決して低くないことが窺える。


正直、二人で座るにはいささか狭い座席だったが、性能的には十分だった。数十メートル滑走しただけで、ミネルバはふわりと宙に浮きあがり、一気に上昇していく。


後には、唖然とした様子で空を見上げるルプシスが残されただけだった。


こうして空に逃れた二人は、一路、連是(れんぜ)へと向かってフライトを開始した。


とは言え、錬是(れんぜ)までは一万二千キロ以上。日中飛び続けても確実に二週間はかかる距離だった。


一応、連是(れんぜ)から五千キロ辺りまで近付けば無線で給電してくれる<基幹ドローン>というものが飛んでいるので、一日中飛び続けられるようにはなるものの、そもそも斬竜(キル)は飛行機に長時間乗り続けるということに慣れていないであろうことから、おそらく、錬義(れんぎ)が一人で帰るよりはずっと時間が掛かると思われる。


それでも、ちょっとでも居心地がよくなるように、錬義(れんぎ)は空を飛びながら座席とミネルバの本体を繋いでいる<ステー>に付けられたハンドルを回し始めた。すると、座席の前後長が徐々に伸びていく。


普段は一人乗りで使っているが、実は二人乗りにもできる仕様だったのだ。


もっともそれでやっとバイクの二人乗りくらいの広さだが。


足も、前席に座る錬義(れんぎ)を挟むようにしないと、後席に座る者は伸ばすこともできない。


ただ、斬竜(キル)は、空を飛んでいることが不安なのか、騒ぎはしないものの錬義(れんぎ)の体にしっかりとしがみついて動かない。


しかも、かすかに震えてるのも分かる。まあそれは、上空に来たことで少し寒いのかもしれないが。だから彼は、ミネルバの翼のトランクを開いて毛布を出してきて、彼女の体に掛けてあげた。


「さすがに裸じゃ寒いからね」


と声を掛けつつ。


そんな風にしてる間はもちろんほとんど操縦はできないが、ミネルバ自体がロボットなのでまったく問題ない。帰るまですべて完全に任せてしまっても問題ない。寝てても大丈夫なのだ。


あくまで斬竜(キル)がこの空旅にどこまで耐えられるかが問題なだけである。



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