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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
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夢色星団

こうして斬竜(キル)との距離を縮めようとするものの、この日はまたラーメン一杯と川イグアナ竜(イグアニア)二匹を平らげて彼女は去っていった。


『ラーメンの残りはあと三個。さあて、どうなることやら……』


そんなことを考えながら、錬義(れんぎ)は<着る寝袋>に収まってごろりと地面に寝そべった。


ランタンを消すとそれこそ人口の光がほぼないここで空を見上げると、溺れそうなほどの星々。もっとも、地球で知られている<星座>はここには一つもない。当然か、何しろ<銀河系の外>なのだから。


<ダークマターシャッター現象>と呼ばれる謎の現象により地球からは一切観測できなかった<夢色星団>と称される星団内に存在し、こうして見える星々はすべて夢色星団内の星である。今のところ、<星座>というもの自体が定着していないが、個人的に星座を考えている者もいる。錬義(れんぎ)はあまり興味を持っていないが。


『ここに<人類>が誕生して八百年か……まだまだ一瞬だな……』


そんなことも思う。確かに地球人類が発生してからの時間と比べると、本当に<一瞬>である。朋群(ほうむ)人類がこれからどのようになっていくのかはまったく予測もつかないが、少なくとも無益な争いで破滅するような愚かな真似だけは避けたいと思う。


朋群(ほうむ)人の始祖であり、朋群(ほうむ)唯一の地球人でもあった人物がここに辿り着いた時にも、地球人は何度も大きな危機を迎えつつもそれを乗り越え宇宙に広がっていったからこそ、ここ朋群(ほうむ)にも辿り着いた。


個々の地球人は確かに生物としては脆弱で、ロボットや地球の技術と共にこの星に降り立っていなければそれこそ一日も経たずに始祖も死んで朋群(ほうむ)人は発生しなかったかもしれないが、同時に、<種としての地球人>はむしろ強大過ぎて危険な存在ですらあっただろう。<個としての強さ>を捨て<群としての強さ>に特化したからこそのものだとも言えるかもしれない。


『話してみたいよな……始祖と……映像だけはあるけど、やっぱり、直接本人にいろいろ訊いてみたいこともある……』


自身の名の由来ともなった始祖<錬是(れんぜ)>に想いを馳せる。錬義(れんぎ)自身は始祖との血の繋がりはないものの、始祖が大切にしようとしたものについては、自分も大切にしたいと思う。


自分にとって大切なものを守るために全力を尽くしたいと思う。そして、始祖が文字通り<朋群(ほうむ)人の祖>となったように、自分も斬竜(キル)を射止めたい。


『不思議だよな……こんな気持ちになれる相手に出逢えるなんて……』


星空を見上げながら、そんなことも思ったのだった。



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