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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
41/96

地球人、朋群人の社会には馴染めない

と、こう書くとまるで地球人女性には都合のいい社会のようにも思えるかもしれないが、これまた認識が甘いと言わざるを得ないだろう。なにしろ、


『裸で原野に放り出されても一人で生きていける』


ことは、当然、女性の側にも求められるのだ。


『男性に守ってもらおう』


『男性に稼いでもらおう』


という考えではそもそも相手にもしてもらえない。


朋群(ほうむ)人の社会において男性に頼らずとも子供を生み育てていけるタフネスさ>


は、『裸で原野に放り出されても一人で生きていける』だけの能力があってようやく成立するものだからだ。


つまり、


『性別に拘わらず地球人では、朋群(ほうむ)人の社会において、<自立した一人の人間>とは見做されない可能性が高い』


とも言えるだろうか。そもそも地球人の感性や感覚など通用しない社会であり、難癖を付ける意味が最初から存在しないのだ。地球人でこの社会に馴染めるのは、ごく一部の例外に過ぎないだろうと思われる。


もっとも、<非力な保護動物>としてなら、生存は可能である。別に地球人だからと朋群(ほうむ)人達は排除はしないからだ。ロボットの庇護の下、自分の生だけはまっとうできる体制は保障されている。


その程度の懐の深さもある。


ここは朋群(ほうむ)人と、朋群(ほうむ)に根付いた生物の世界であり、そちらに主権がある。ここで生きていたいならそれに従うしかない。敵対するのであれば、その報いは覚悟する必要があるのだ。


一応、命だけは保障されるものの、死ぬまで、<保護区>と称される施設で隔離幽閉されることになる。


心配は要らない。仕事などできなくても、働けなくても、それを理由に殺されたりはしない。<非力な保護動物>なのだから。寿命が尽きるまで保護はしてもらえる。


それが果たして<幸せ>と言えるかどうかは、本人の感じ方次第だろうが。


一か八かで歯向かおうとしても無駄である。地球人の力では、ここではわずか一歳の子供にすらまず勝てないからだ。その上でロボットが他者に危害を加えることを決して許さない。


朋群(ほうむ)人同士の<じゃれあい>程度ではロボットも干渉してこないものの、明らかに相手に危害を加えるつもりの<攻撃>は見逃してはもらえない。


なので、斬竜(キル)も、朋群(ほうむ)人達が暮らす<連是(れんぜ)>に行けば、他者に危害を加えることは敵わない可能性が高い。ここまでの様子を見ていても、彼女の力を上回るロボットなら珍しくもないからだ。


とは言え、錬義(れんぎ)は力尽くで彼女を従わせる意図は毛頭ない。あくまで彼女に認めてもらって受け入れてもらうことを望んでいるだけである。



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