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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
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錬義、試行錯誤する

どのようにアプローチすることが斬竜(キル)に対する<求愛行動>になるのか現時点では分からないので、とにかく彼女が興味を持っているもので気を引くということを錬義(れんぎ)は試していた。


もしそれが<求愛行動>には当たらなくてもいい。少なくともこうやって彼女との距離を縮め、


『敵ではない』


という認識を持ってもらえればそれでいいのだ。


野生の場合、多くは雌の側に選択権がある。雄は雌に様々な形でアピールして、雌に受け入れてもらわないといけないのだ。でないと下手をすれば雌に食われてしまうような種もいる。


生物としての地球人にも元来はそういう面があったと思われるのだが、なぜか地球人の男性はその事実を認めたがらず、


『女は男の言うことを聞いていればいい!』


という態度を取る傾向にある。が、朋群(ほうむ)人達の実感はまったく違っていた。朋群(ほうむ)人の女性はまだまだ野生に近いからか非常に気が強くしかも能力が高く、子を成す以外で男性を必要としない種族が多かった。


なにより、子供の頃から、


『男にとって都合のいいお人形でいてくれ』


的な育て方をされない上にそもそも身体能力的にも自力で生きていけ、さらには子供についても互いに協力し合い『社会で育てる』ことが徹底されているため、


<育児に理解を示さない非協力的な男性>


など無理に育児に関わらせる必要がないのである。男性には自分で勝手に生きててもらって、子供を作る時だけ協力してもらえればそれでいいのだ。


ただし、自分で自分の面倒も見られないような男性はそれこそ相手にされない。女性が育児をする時にはますます男性の世話などしていられなくなるので、自分で自分の世話もできないような男性はいてもらっては邪魔なのだ。


一緒に暮らしていたいなら、


『自分のことは自分でできる』


『育児についても自ら積極的に関わる』


ことが求められる社会だった。


おそらく地球人の男性がここに放り出されると、それこそ相手にもされない可能性が高い。


当然か。生物として非力で脆弱という時点で魅力に欠け、その上で『自分で自分の世話もできない』となれば、どこに魅力を感じればいいのかまるで分からないだろう。


『育児に関わらなくていい』


『複数の女性と同時に付き合ってもいい』


と言われれば<楽園>のようにも感じるかもしれないが、現実はそんなに甘くない。


『裸で原野に放り出されても一人で生きていける』


程度の能力を持つことが最低限求められる朋群(ほうむ)人の社会では、<地球人の常識>など糞の役にも立たないのである。


『郷に入っては郷に従え』


という言葉があるが、まず、『郷に従う』ことができないだろう。



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