錬義、自分の気持ちを考察する
サススクロファの群れは、川沿いを、草を食みながらゆっくりと移動していた。十三頭のうちの四頭は幼体のようだ。それを守るように成体のサススクロファが取り囲んでいる。この辺りはゾウのようでもある。
その様子を窺っていた錬義の端末に着信が。それを確認すると、画面に斬竜の姿。穴から出てきたのだ。
すると今度は、陸イグアナ竜の巣に忍び寄っていく。また陸イグアナ竜を狙っているようだ。しかし、一度目は失敗。すんでのところで躱されて穴の中に逃げられてしまった。
けれど彼女は諦めずに再挑戦。今度は捕らえることに成功し、その場で食らい付く。
それにしても大変な食欲である。ただ、これについては、錬義も心当たりがあった。実は彼も、食べようと思えばそれこそ際限なく食べられてしまうのである。途轍もない身体能力を維持するには途轍もないカロリーが必要ということなのだろう。あまり動き回らないようにすることであまり食べずに済んでいるものの、激しく動けば当然、それだけ食欲も湧いてきてしまう。
斬竜も同じということかもしれない。
『凶竜の姫様ではあるけど、竜女帝の娘なら、彼女も恐竜人間ってことになるのかもしれないな……』
そんなことも思う。
『三人目の恐竜人間ってことか……』
そんな風に想いを馳せる。
<恐竜人間>についてはまた後ほど触れることもあるだろうが、今はとにかく斬竜の姿を追う。逆にサススクロファの方はドローンに記録を任せた。
斬竜への想いが募っているのだ。
彼にとっては初めての経験だった。
錬是に戻れば彼を慕ってくれる女性もいるものの、彼の頭の中には鵺竜や亜竜への関心しかなく、その女性達のこともただの<友人>としか思えなかった。健康な男ではあるものの、そういう部分ではまだ未成熟だったのかもしれない。
けれど、斬竜と出逢ったことで、ようやく彼にも異性への関心が芽生えたのだろう。
いわば<初恋>ということか。
「女の子を好きになるっていうのは、こんな気分なんだな……」
陸イグアナ竜を貪る様子を双眼鏡で見ながら、錬義はそう呟いた。そして、
「そっか。マヒルの奴もこんな気持ちだったんだ……」
とも呟く。が、その時、
「あ……!」
錬義が声を上げた。彼の視界の隅に捉えられたものに視線を向けると、そこにいたのは、ティランタスだったのだ。先ほどエレファントスを狩ったのとは別の個体だった。それが斬竜に狙いを付けていたのである。
もっとも、斬竜の方もすでにそれを察していたのだが。




