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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
33/96

錬義、おやつをいただく

錬義(れんぎ)は、さらに蹴り飛ばしたヘビの頭を踏み潰し、ナイフでその場で捌いて串に通し、コンロの火で炙ってまるでおやつのように食べてしまった。


そうして一休みして、再びミネルバに乗り込んで飛び立つ。彼が飛び立ってしばらくすると、サススクロファ竜(サススクロファ)の群れが近付いてきた。たまたま通りがかっただけだろうが、サススクロファは草食が主ではあるものの実は雑食性なので、動物も襲うことがある。早々に飛び立って正解だっただろう。彼自身は大丈夫でも、サススクロファに迷惑がかかるという意味で。


ただし、錬義(れんぎ)自身もサススクロファの卵を奪ったりすることもあるので、そういう意味では迷惑もかけている。あくまで、


『必要もないのに衝突する』


という意味での<迷惑>だ。生きるために必要なことであれば、容赦はしない。己が生きるために他の命を奪うことを躊躇ったりもしない。彼はそういう人間だ。


殺し合いになった時、相手を殺さなければ自分が死ぬとなれば、これまた躊躇なく殺す。この世界で生きていくには、まだまだそういう部分が必要となる。


その代わり、必要なければ相手が何者だろうと殺さないが。自分の感情だけに振り回されない豪胆さもある。


だから生き延びてこられた。


<研究者>であってもそういう部分が必要だった。いや、むしろフィールドワークが中心の研究者にこそそういう部分が求められるとも言えるか。


なにしろ相手は人間の道理が通用しない<野生の獣>。人間の<情>など糞の役にも立たない。<情>を通したいならそれこそ彼らの<道理>を理解しなければならない。


斬竜(キル)に対する彼の気持ちがまさにそれと言えるだろうか。


『彼女をお嫁さんにできたら素敵だろうな♡』


という<情>を通したいなら、まず彼女にとっての<道理>を理解しなければ話にならない。彼女にとっての、


<殺さなくていい道理>


を理解しなければ、一緒にいることはできない。<殺さなくていい道理>をわずかにでも外れれば彼女は即、命を狙ってくる。容赦なく。そういうものだ。


それを知るために彼女のことを知らなければならない。


が、どうやら彼女はまだ穴の中らしい。


なので、穴の上空にドローンを配し、彼女が動き出したらそれが分かるようにし、せっかくなのでサススクロファ(厳密にはその近似種)の観察を行う。


別種であることが確定しないと名前を付けるわけにもいかないので、それが確定するまではサススクロファと呼称することになる。


その群れは、十三頭の群れだった。若干、大きめの群れだと言える。



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