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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
20/96

朋群人、その結婚制度

地球人はとかく不合理な価値観に拘る傾向にある。すでに社会的に合理性を欠いた慣習や風習をありがたがったり、間違った認識を基にして定着した考え方に拘泥したりもする。


しかし、朋群(ほうむ)人にはまだ、そういう部分がほとんどない。男性だ女性だという性別にも執着しない。惹かれ合えばパートナーとなり、結ばれる。確かに異性同士で結ばれることがほとんどだが、実は朋群(ほうむ)人は種族ごとに遺伝子が異なり、それがゆえに生殖が成立しないことも多かった。つまり、異なる種族同士で結ばれても子は授からないことも多いのだ。


けれど、だからと言って、


『違う種族同士で結ばれるなど、言語道断!』


といった考え方もしない。そもそも、厳密な<結婚制度>そのものがまだ存在していなかった。なので、一対一でなくてもいいし、気持ちが冷めればすぐに別れてもいい。記録が残らないので、


『戸籍が汚れた』


みたいなことを考えたりもしない。


『愛する人を大切にしたい』


という気持ちだけが必要だった。むしろそれ以外はどうでもいい。


だが、不思議と出生率は三パーセントを上回り続けている。子供が生まれれば社会そのもので育てようとするからというのもあるだろう。育児に向き不向きがあっても困らない。誰かが必ず力を貸してくれるからだ。


育児に向いていないなら無理をしなくてもいい。男性に無理に育児に参加してもらおうとはしないが、実際、まったく育児をしない男性も少なくないが、別にそれで困ったりもしない。できない者に無理にやらせる必要もない。性別に関係なく、


『子供を育てたい』


と考える者が多いのだ。


いや、正しくは『育てたい』ではなく、


『一緒にこの世界を楽しみたい』


と言った方が正確だろうか。


『せっかくこの世界に来てくれたんだから、楽しんでいってくれ!』


という感じかもしれない。捨て置かれる子供もいない。自分には育てられないと思えば任せられる者もいる。


そんな社会だから、


『生まれてくるんじゃなかった』


などと考える者もほとんどいない。生きているうちなら何も諦めなくていい。諦めなくても死ねばそれで終わりなのだから、生きているうちは生きればいいのだ。


だから錬義(れんぎ)も、


『この世はこんなに楽しいことに満ちている!』


と考えられる人間だった。


凶竜の姫様に惹かれたのも、ただ単純に彼女が魅力的に思えたからだ。彼女の命の輝きが素敵だったからだ。


だが同時に、<研究者としての習性>が非常に強いので、凶竜の姫様についても徹底的に知りたいと考えていたのだった。



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