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凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
19/96

凶竜の姫様、荒野を散歩する

サススクロファ竜(サススクロファ)の幼体を貪ってまるで妊婦のような腹になった凶竜の姫様は、河で血を洗い流した後、はるか上空で旋回を続ける錬義(れんぎ)とミネルバをギロリと睨み付けたりもしたものの自分には手出しできないことを悟ったのか、不機嫌そうに正面を向いて、どすどすと地面を踏みしめるようにして歩いた。本当に不機嫌なのだろう。


『妙な奴に目をつけられた』


とでも感じているのかもしれない。


とは言え、そのまま歩いているうちに気もまぎれたのか、しばらくするとただ少女が荒野を散歩しているような雰囲気になっていた。


全裸かつ、腹が大きく膨れた状態だが。


それでも、たまに生えている草に鼻を近付けてふんふんと匂いをかいだり、遠くを歩いている鵺竜(こうりゅう)らしき動物を見送ったり、岩陰に蹲って昼寝をしたりという姿を見るだけなら、なんとものどかな様子にも見えなくもなかった。


かと思うと、不意に目を覚まして地面に爪を立てて穴を掘ってそこにまたがったりも。


どうやら、糞をしているようだ。


「……」


息を止めて難しい(かお)をして体をプルプルと小刻みに震わせたかと思うと、


「へあ~……」


と弛緩した表情になり、少し前に出て尻を地面にこすりつけ、それから地面を爪で掻いて土を後ろに送り出す。どうやら出した糞を埋めているようだ。まるで犬である。


が、それはおそらく、少しでも糞の臭いを減らして他の動物に狙われないようにという戦略かもしれない。


まあその真偽はさておき、これら一部始終を、錬義(れんぎ)は上空から双眼鏡でつぶさに観察していた。


地球人の場合、他人の排泄行為など、しかも異性のそれなど見たいとも思わないし見てしまったらそれこそ、


『百年の恋も冷める』


かもしれないが、メンタリティが野生寄りの朋群(ほうむ)人の多くは、そんなことをいちいち気にしなかった。生きていれば当然ある<生理現象>については地球人のように特別視などせず、ありのままに受け止めるのである。


むしろ、健康的に生理現象を発現させている方が、


『命が強い』


として感心される傾向にさえある。


なので錬義(れんぎ)も、そういう風にしか捉えない。


なお、地球人には、一部、異性の排泄姿に性的な意味合いを見出す者もいるが、残念ながら現在の朋群(ほうむ)人にはそのような<性癖>は基本的に見られない。


なにしろ、<性>そのものが特別なものなどではなく、ただただ相手の属性の一部分でしかないのである。


だから、最初に凶竜の姫様と出逢って激突した錬義(れんぎ)が彼女の体を見ても、別に何とも思わなかったのだ。



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