表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凶竜の姫様  作者: 京衛武百十
出逢い
14/96

ストルティオ竜、サススクロファ竜を狙う

乾いた荒野の夜は寒かったが、錬義(れんぎ)はそれをものともせずぐっすりと眠った。そして空が明るくなり始めた頃、


「!」


がばっと体を起こし、着る寝袋を脱ぎ、ラーメンが入っていた布から今度は干し肉を取り出して、そのままバリバリと貪る。顎の強さが分かる光景だった。その後、ポケットから<デンタルフロス>を取り出して、歯の隙間に詰まった食べカスを掻き出す。それが終わると使ったデンタルフロスはそのまま捨てる。植物の繊維を利用して作られているものであり、早々に生分解されるのだ。


歯磨き粉は使わない。口をゆすぐ水がもったいないからだ。ラーメンをスープも残さず食うのもそれが理由だ。


<便利で清潔な社会>に住んでいる人間には理解できないかもしれないが、ここではむしろ当然の在り方である。<潔癖症>ではまともに生きられない世界ゆえに。


そうして準備を終え、荷物をミネルバの翼に収納し、岩の端から下を覗き込んだ。すると、ストルティオ竜(ストルティオ)の亜種らしき亜竜(ありゅう)もすでに活動を開始していた。


しかも、何やら緊張した様子だ。


「…なるほど……」


錬義(れんぎ)は地平線の方に視線を向けた。その手前に、いくつかの影。何らかの動物の姿。


「あれは、サススクロファ竜(サススクロファ)の仲間かな?」


サススクロファ竜(サススクロファ)>は、亜竜(ありゅう)の一種で、体長は約五メートル。雑食性のイノシシに似た動物である。普段は十数頭の群れを作って、川や地下水が湧き出した池の近くに住み、そこに生える背の低い植物や、水を求めて集まってくる小動物を餌にしていた。そして、ストルティオ竜(ストルティオ)の好物でもある。


川に沿ってサススクロファ竜(サススクロファ)が来たことを匂いで察し、狩りをするためにストルティオ竜(ストルティオ)が動き出したというわけだ。


卵を守るために一頭のメスが残り、四頭が移動を開始する、その様子を、錬義(れんぎ)は双眼鏡で追った。


さらに、ミネルバの翼のトランクから今度は小さな機械を取り出す。ドローンだった。


「ミネルバ、頼む」


そう告げるとドローンが作動。サススクロファ竜(サススクロファ)目掛けて飛んでいった。ミネルバに制御してもらい、記録を取るのである。


距離にして約一キロ。それを一気に飛んで、一分少々で辿り着く。


錬義(れんぎ)も岩の上から双眼鏡で観察をするが、その時、


「!?」


彼の体に緊張が走った。


「ミネルバ! テイクオフ!!」


双眼鏡をミネルバの機体に固定して、錬義(れんぎ)が叫ぶ。


「彼女だ! サススクロファ竜(サススクロファ)を狙ってる!! 僕も行くぞ!!」


叫びながら、錬義(れんぎ)はプロペラを回転させるミネルバの機体を掴んで、あろうことか、岩の上から放り投げるように空中へと放ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ