ガラクタ山のトリモチさん

噂話

「ねえねえ知ってる？」

窓から風が入り込む。秋も深まったある日の教室。茜色の光に包まれたそこに、涼やかな風が吹き込んでくる。

黒い髪の少女からの問いかけに、亜麻色の髪の少年は困ったような顔で言葉を返す。

「唐突に何なんだよ……」

「『ガラクタ山のトリモチさん』の噂！」

にこやかな、楽しげな表情が浮かぶ。ふわりふわりと黒いセーラー服が風に揺れていた。長い長い髪も、ゆらりゆらりと靡いてる。

「赤い髪の女の子がガラクタ山で願いを叶えてくれる、っていう噂話だよ！！」

キラキラと目を輝かせて、ワクワクとした様子で語る。少女は少年に言葉を投げ掛け続ける。

曰く、強い願いや悩みがあれば、ガラクタの山の中に迷い込むらしい。

曰く、赤い髪の女の子がそこに住んでいるらしい。

曰く、その女の子は願いを叶えてくれるらしい。

＿＿願いを叶えるキカイをくれるらしい。

「んで、それがどうしたんだよ」

「楽しそうじゃない！？夢があると思うの！」

夕暮れの教室、少年と少女は、ただ語る。不思議なキカイの話を語る。