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自己分析と入学と爆炎と

多分10話くらい一気に出してしばらく動かないかも〜


グレゴリオ魔法歴2020年、魔道具と呼ばれる魔法を使うための道具から魔法を引き出せる者を魔法使いと呼ぶ時代、自らの魔力と知識で魔法を編んだ過去と違い魔道具の形は多様に、そして引き出せる魔法もその数を把握しているものはいないと言われるほどになった現代、公立魔法学園の巨大な門の前に少し草臥れた様にも時代に逆行するかの様にも見えるいわゆる魔法使いらしい服と何より身の丈ほどの杖を持った青年が立っていた。



「あっはぁー!でかいなぁやっぱ!」

見上げる。奥に見えるビルや空飛ぶ箒使いなんかも高いところにあるがそれはそれとして感心する。

「今日からここで魔法を修行できるって思うと感慨深いなぁ…」

ここはこのちっぽけな島国で最も大きな魔法学を教える高等学校、海を渡った先や遥宇宙の彼方にはもっと大きな学校もあるが、経済的にもそして将来的にもこの学校の学生となると言うのは大変に重要なのだ。

「…ま、そうは言っても日本中の魔法使いがほとんど入学するんですけどねぇ…」

そう、別にここは映画の中の様な招待状を出す選民主義極まった学校ではないし、そもそも魔力を持たない純粋に魔法使いでない人間はもう世界に半分もいない、それにもう半分の魔力を持たない人々も普通に魔法を使うことはできる。魔力のある無しで差別があった時代もあったそうだがそれはすでに過去の話…の筈だ。

たまに上級国民と揶揄される様な政治家一族だったり、高額納税者だったりが様々な問題発言をしたりするが表向きはないので大丈夫!一応な…


ポッケを漁って合格証書を取り出してすでに見上げる様な大きさの門に近づくと魔力が熾り証書が消えると同時に門が開き、俺の手の甲に8桁の学籍番号が付与された。

勿論、魔力を操作すれば番号を出したり引っ込めたりできるし、中で入学手続きを進めれば学生証など学生生活に必要な証を作れる。が、とりあえず今は出しておく。どうせすぐ聞かれるし何回か書いたりするのだ。

門を潜り後ろでそれが閉まる音と共に心を引き締め、歩き出す。


俺は絶対…絶対に…

「金持ちになれる様な、いい仕事につくんだ!」

できれば年収2000万円位のいい仕事がいい!

そう決意を固めながら一歩一歩進んでいく。



咲き誇る桜並木のその奥に巨大な校舎とそれを含む様々な施設が立ち並ぶここは日本の太平洋側に浮かぶ巨大な人工島であり学園都市、四国くらいの大きさの球が水面から半分顔を出しているその姿から東京都魔法球特区と呼ばれる此処は次世代の魔法使いとそれと同じくらいの厄介ごとが舞い込む魔法都市だ。




「20201857…はい、照合が完了しました。薄井 全様、漢字に間違いはありませんか?」

「大丈夫です!ありがとうございます!」

挨拶は元気よく、学校という閉鎖空間において度々言われて軽視されがちだが社会に出てまず必要なのは愛想と愛嬌、気に入られるというのは何も媚びるだけではない、己をどう見せるかは自分次第だ。

笑顔で学生手帳と学生証を受け取りお辞儀してお礼を言う。これだけで人は『礼儀正しい』とか『元気がいい』とか思ってくれる。

これも媚だとかいう奴は社会で生き残るのが難しいだろう。なにせ一般常識の範囲内で当たり前に当たり前のことをしているだけでそれに反発するなんて疲れるしだるいしむしろそっちのほうが狙ってるんじゃないかと思う。そういう反社会的スタンスをとっている人たちの方がそういうことを気にするというのに…

「そもそも挨拶するだけで特にリスクもなく気に入られるなんてなかなかないんだけどなぁ…」

俺は良い子ではない、お金持ちになりたいとか良い仕事につきたいとか色々と欲まみれで、どちらかと言えば悪い奴だろう。

昨今の社会状況的に子供への声かけや迷子の案内はしてないし、見ないフリだし、落とし物にも触らない、やって自己満足とそれを大きく上回る社会的地位と精神へのダメージを受けるより0は0のまま放っておくタイプだ。

「この誘拐犯!触らないでうちの子に!」

「だから、お前さんがこの子を放置してただけだろうがよ、言っとくがこいつ2回も轢かれかけてんだぜ?礼とは言わないが責めてもうちょっとまともな反応はできないのかよクソ女がヨォ?」


金髪、ピアス、極悪人相…まぁ、彼は良い奴なんだろう。もしくは猫を助ける不良枠か…どちらにせよ頭はあまりよくない様でなんでこうなったかとか、人集りや駆けつけてくる警察なんか気にもしていない、喚き散らすあの母親らしきナニカもどうかしているし、助けてもらったはずの子供はすっかり怯えて彼に縋り付いている。

「不良ってのはつくづく損だよなぁ…」

まぁ、昨今身綺麗でも同性でもなんだってああいう類のバカはつっかかってくるものだ。運も悪い様である。

こういうのはやはり無視が一番だ。そう思った時いきなり雰囲気が変わった。

「あぁぁあああ!!うるさい!あいつが悪いって言ってるでしょ!私はあの子の母親なのよ!!?」

単純な感情任せの魔力放出、しかし最悪なことに彼女から熾った魔力属性はどうやら火、そして彼女の感情は極めて高いレベルの怒りだ。

火は怒りの象徴、怒りの感情は大概『燃え盛る』魔力とは感情、魂の力そのものであり精神に大きく作用される。よって彼女の魔力で一種の攻性魔法が発動し運悪く射線上にいた俺目掛けて火炎球が飛んできたのは本当に最悪で…最高だった。

ボン!

「おい!」

そうだな…今回俺は運悪く魔力保護をしておらず。そして相手は感情任せに放った魔法で俺を傷つけた。不良くんが心配なのか知らないが大きな声で呼びかけてくるがそんなことはどうでも良い、これは…金になる。

「うわー!」

反射で出した杖を引っ込めて適当に腕に火傷を負ったまま俺はローブに秘められた耐性魔法を発動し同じくローブで呼吸の補助と大気の安定を図り爆炎の中救助を待つ。すると数秒もしないうちに警備員が火を消し、俺を助け出してくれた。

火炎球を放ったバカ女は青ざめており、不良くんはどうやらマジで良い奴らしくすぐに駆け寄ってきて学生証を見せる。警備員は二、三個質問をすると彼を俺の近づけた。

「大丈夫か?今治療する。」

「あ、ありがとう…」

ピアスのいくつかを触り聞き取れないほどの速さで詠唱を完了すると腰のポーチから取り出した薬草や薬品、包帯などを適切に使用して魔法の効力を増加させる。…素晴らしい技量と制御、それに引き出されている魔法も治癒だけではない、再生力向上や怪我の程度の鑑定、冷却や消毒などなど…適当に防御せずマトモに受けといて正解だった。きっと彼は正直だから軽度ならそれ相応に言ってしまうだろう。

「はぁー、最悪だ。」

「そうだな、ちと深いからもう少しかかりそうだ。」

彼はとても真摯でそれでいて悲しいくらいに愚直だ。ちょっと好感が持ててきた…これがかの有名な『猫を助ける不良』効果くんですか…これはなかなか、馬鹿にできない、ちょっと真似できそうにないし事ここまで来るともはや人間性の問題だろう。

「ありがとう。後で、名前を聞かせてくれないかな?」

「ああ、いいぞ、元はと言えば俺がアレを怒らせちまったせいだしな…ったく、意味わかんネェことで切れやがって…」

奥の方で喚いていた女が警備員と警察両方に拘束されたのを見届け、俺はやはり彼がいい奴なのだと再確認して目を閉じた。





「どうですか、彼の様子は?」

遠視の魔法を切った男は高級な椅子に適当に座った女性に問う。

「うーん、ちょっと人間性に問題があるかもだけど、いいんじゃない?あの一瞬で杖を構えて、引っ込めて態と保護魔法を切ってわざわざ炎に焼かれるとかなかなか気が狂ってて…あ、多分お金目当てだろうねあのバカ女はまんまと絞られるわけだけど、とりあえずこっちからも注意飛ばさないと、一応ここ一般開放してても学校敷地内だし〜」

煙管を適当に咥えてモゴモゴと喋るそれを男は手元の資料と共に評価する。

「かしこまりました。では中級クラス上位でいいでしょうか?」

「んま、マイナーメジャーな杖じゃあそうなるよね、せめて指輪か銃とかならもうちょっと査定あげれたけど〜、あ、後まだ普通の試験はあるからそれでちゃんと補正入れてよね、あのピアスの子は特殊クラスに入れといてね、家出してるし勘当もされてるけど結界魔法の大家であの医聖の愛弟子だから〜」

「っは!では失礼いたします。」

男は女性の提案を書類にまとめ丁寧に退出した。

「『剣聖』、『英雄』、『医聖』ね、今年は豊作だけど…」

1人になった部屋で彼女は呟く。

「杖、杖の子がいいね、性根ひん曲がってるしどうせろくなこと考えてないだろうけど…多分、一番面白いねぇ〜」

ケラケラと笑って紫煙を吐き出す。

「とりあえず前期は放置、どうせ夏休みまでになんかするっしょ!」

彼女は楽しそうに笑みを浮かべた。

流れに乗って行きたいかもー

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