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だんだんとボディブローのように効いてくることば

だんだんとボディブローのように効いてくることば


 会うたびに、「きれいだ」と常二が言うことをねだる美彌。

そう言われると、「うふっ」と言ってはにかむ美彌。

ところが、常二は美彌の母のことばを聞いてからは、美彌にキスを出来なくなり、手もつながごうとしなくなくなった。

 もちろん、常二は、美彌といると楽しいし、美彌の美しさに見蕩れることもある。一緒に歩いていて美彌の身体に、自分の手や肩が触れると、常二の身体の芯に戦慄が走る。美彌の豊かに盛り上がった胸のラインや、細いが均整の取れた白い脚を見ると、美彌に欲情する。しかし、常二は首を左右に振って頭の中の妄想を振り落とす。

 今日も、美彌と別れて下宿に一人帰ると、常二は我慢できずに自慰行為にふける。美彌の姿を思い出し、どうしようもない衝動に突き動かされて、熱でほてった身体から情念を放出する。そして必ず、後悔の思いがわき起こる。美彌を汚しているように思える。


 美彌は常二がキスをしなくなったのを不審に思いはじめていた。

学校から一緒に川沿いの道を帰りながら、今日一日の出来事をお互いにしゃべっていたとき、ふと話すのを止めた美彌は、

「ねえ、今日は下宿について行っていい?」と聞いてきた。

常二は美彌をまだ一度も下宿に連れてきていなかった。アルバイトに追われ、二人でゆっくりできる時間がなかったこともあるが、美彌を下宿に連れてくると、その時は、自分の衝動を抑えきれないと自覚していたことが大きかった。

そうなってしまうと、美彌との関係も終わってしまうのではないかと恐れていたのかもしれない。

何より、あの美彌の母の言葉が呪いになって効いていて、美彌の身体に触れることができなかった。

「また、今度にしよう。今日は都合が…」

「なんで最近手もつながないのよ、おかしいでしょう?」

「私のこと、いやになったの?」立ち止まって、美彌の大きな目が常二の目を見つめる。

常二はその視線に耐えられずに目をそらす。

追い打ちをかけるように、

「おかしいわ、この頃。常二、私に隠し事あるでしょ」

「好きな人できたの?」と小声で聞いた。

「いや、絶対、そんなことない」

「じゃあつれてって」美彌は怒って言った。

「今日は止めておこう」

「私、帰る」と言って一人で駅の方にかけだしていった。

常二はその後ろ姿を茫然と見送ることしかできなかった。

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