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次の月曜3限

次の月曜3限


 常二は2限の講義の後、友人と別れて学生会館にあるカフェに向かった。

何組かのグループがテーブルを占めていて、満席かと思ったが、奥の二人掛けの席を探すと、手を振る美彌を見つけた。

美彌は、前会ったときと違って、濃い化粧をしていた。リップが赤く照っている。服も他の学生が着ていないような上品なものだった。

「待った?」

「今来たところよ」と白い歯を見せた。

「今日は一段ときれいだね」

「本当?ありがとう」美彌はうれしそうに笑顔で常二を見る。

常二はカフェオレを二つ運んできて、美彌と一緒に飲んだ。

カップを置きながら美彌は、

「常二君て、彼女いるの?」といきなり聞いてきた。

「いない」

「そう」しばらく間をおいて、

「ねえ、いやじゃなかったら」と言って美彌は言葉を切った。

「いやじゃなかったら?」

「あたしとつきあってほしい」真顔でさらりと言う。

常二はカフェオレを吹き出しそうになった。

カップを置いて、「いいよ」と答えた。

常二は言ったあと、これは悪い冗談ではないのかと思った。

どこかから誰かが、常二の表情をカメラで録画しているのではないか。

しかし、美彌は、そんなつまらないことをするとは思えない。

「僕の、どこがいいの?」

「あの時から」美彌はそう答えた。

「あの時って、中央芝生で?」

「そう、中央芝生で。あの時、あなたにジュースかけちゃったでしょう」

「よく覚えている」

「あの時、一目で気に入ったの」

「イケメンだったから?」冗談で言ってみた。

「うん、顔も好きだし、雰囲気が良かったの」

「照れるやん」常二が茶化すと、

「私のことどう思った?」と逆に尋ねた。

「きれいで、やさしそうな人だなって思った」と正直に答えた。

「タイプ?」

「そう、めっちゃタイプ」常二が即答すると、美彌はうれしそうに、

「うふっ」と笑った。

「話しやすそうに思ったの」

「何でも聞くよ」

「本当?」

美彌の大きな二重の目がさらに大きくなった。

「何が好き?」何でも知りたいからと美彌は言い足した。

「本と音楽かな」

「私も本が好き。音楽はどんなのが好き?」

「洋楽、ロックが好き。美彌は?」と言ってから、常二は、

「美彌って呼んでいいかな」と尋ねた。

「もう一回言ってみて」

「美彌」すかさず言うと、

「うふっ」と満足そうに笑う。

「にやけてますけど」

「もう一回お願い」おねがーいと語尾を伸ばした。

「あほらし」あきれると、

「大事にしてね」と返された。


 その日から毎日、常二は美彌と会って話をするようになった。

美彌はよくしゃべる人で、常二はいつも聞き役に回った。

明るくて、楽しい話ばかりなので、美彌と会うことがうれしかった。

しかし、もし自分の家のことを聞かれたらどうしようか、気後れがしていた。

美彌は、ライブハウスに一緒に来ていた佐知や美和を連れてくることもあった。

「この子、最近、のろけばかり話すのよ」と常二に知らせた。

「そんなに私、のろけてる?」恥ずかしそうに顔を赤らめて佐知に聞く。そんな美禰を見て、

「美彌の機嫌がよかったら、僕はうれしいよ」とフォローした。

美彌は「うふっ」と笑い声をもらした。

「はい、またのろけ」佐知が笑った。

美彌と一緒にいる姿を常二の友人に見られて、常二は仲のよい柴崎から、

「お前、いつの間にあんな美人つかまえたんや?」と問い詰められた。

「もう、行くとこまでいったんか?」

「そんなんとちがう。美禰とは友達」

「美彌さんの友達を紹介してもらいたいわ。頼んどいてくれ」柴崎は常二にこう言って、顔の前で手を合わせた。


 佐知や美和から、常二と出会ってから美彌が楽しそうにしていると聞き、うれしくなった。

こんな男でも、人を幸せな気分にさせているのかと思うと、上機嫌になる。

常二の実家は未だ経済的に苦しく、仕送りも途絶えたままだった。

後期の授業料を工面することが常二には目下のところ最大の課題だ。

美禰ともっと過ごしたいのだが、アルバイトも増やさなくてはいけない。

就職が決まった先輩に家庭教師のアルバイトを譲ってもらうことになったのはありがたかった。



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