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入籍に驚く

 当面、二人の入籍は公表しないことにしたが、美和と柴崎だけには知らせることにした。

常二のアルバイトは、今のまま続けることにした。ライブハウスと塾と家庭教師である。

下宿もそのまま住み続ける。ある程度、生活費のめどが立てば、二人で折半して、美彌の家に近い北口か夙川に部屋を借りようと決めた。

とにかく二人とも学業をきちんと続けて、卒業することを約束した。


 翌日、大学の学生会館のカフェで待ち合わせた美和と柴崎は、美彌の口から入籍したと聞くと、

「にゅうせき、なに、籍を入れたの?」美和は目を見開いて美彌と常二の二人を交互に見る。

「ほんま?だましたら、あかんで。結婚したんか?」柴崎は信じられないという顔をして常二を見た。

「妻の氏を選んだから、僕は阪上常二になった」

「阪上君って呼ぶのか?別人やん」

「今まで通り賀集でいいよ」と常二が答えた。

「これであなたも阪上ファミリーの一員ね」と美彌と同じようなことを言った。

「しでかしたら大阪湾に沈むわよ」

「本当にそれ、脅しやから、やめて」

「今から水泳の練習やっといたら?」と柴崎がフォローにならないことを言う。

「とにかく、美彌、常二さん、おめでとう。お祝いをしなくちゃ」美和が笑顔で言う。

「しばらくは、あなたたち以外には知らせないつもりなの、お願いね」

「秋に美和の結婚式もあるし、めでたいこと続きやな」柴崎が言うので、

「お前のとこはないのか?」常二が聞いた。

「俺のところは、就活のことでけんか中や。俺が東京の会社を受ける言うたら、あいつ、遠距離は無理やから別れるって」柴崎は特徴のあるあごを突き出して言う。

「あの子は絶対、お前と別れないと思うわ、僕は」

「どうして?」と美彌が聞いてきたが、とても口に出せないことなので、答えなかった。

柴崎には常二の言おうとしたことが伝わって、「あいつ、情熱的やから」と言ってにやけ顔をした。

近いうちに四人でお祝いの食事でもしようと言って、美和と柴崎と別れた。


 土曜日のライブハウスの仕事を終えると、夙川で乗りかえて苦楽園に行き、タクシーで美彌の家に行く。

着くのは十二時前になるが、いつも美彌が食事の用意をして待っている。

美彌の母と父は先に休んでいることが多かった。

二人で今日一日あったことを話ながら、常二は食事を取る。美彌は横で食べ終わるのを待っている。

食事が終わると、二人で片付けをして、美彌の部屋に上がる。

二階にも浴室があり、シャワーを浴びて、美彌のベッドで寝る。

日曜日は二人で過ごせる唯一の一日だが、深夜まで起きている二人は、朝、遅い時間までベッドの中で過ごすことが多かった。

常二はカーテンから漏れる朝の光の中で、白く浮かび上がる美彌の顔や身体を見る。

いつまでも起こさずにずっと見ていたくなる、見飽きない美しさだった。


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