ありがとうで成り立つ世界 少女編
経済という紀元前のシステムが機能を失っている今、貧困はさらに開き続け、生きる事が困難になる時代が来るかも知れません。
そんな風にならない為に今のシステムを見直すきっかけになればと思います。
ありがとうで成り立つ世界
ありがとう これはまるで魔法の言葉
ありがとう これはまるで奇跡の言葉
ありがとう これはまるで呪文
ありがとう これは世界とつながる言葉
この物語りは、作者の妄想の中の世界かも知れないし、もしかしたら別の世界の話しかもしれません。
もしくは、この先の未来の形の話しかもしれません。
どの現実を選ぶか、どの現実にしたいのかは、皆さん次第です。
ありがとうの世界 少女編
ある国に貧しい戦争孤児の少女が居ました。
少女には、父親や母親、兄弟はいません。
父親は、誰かが始めた戦争に駆り立てられ、そのまま帰らぬ人になり、
母親は、誰かがばら撒いた病気に苦しみ帰らぬ人になり、
兄弟は、誰かの欲を満たす為に拐われ売られてしまいました。
この国では、一部の大人が全てを牛耳り、全てをコントロールしています。
少女は、毎日生きる選択をするのに必死です。
ある時は、路上に出ては、物乞いをして食べ物を貰う。
またある時は、喉を潤す為に泥水をすすり、空腹を満たす。
またある時は、残飯をあさり、暴言を浴びせられています。
洋服は、ボロボロの布を体に巻き付け、髪の毛は、ボサボサで体は、泥だらけです。
それでも生きる事を必死で選択しています。
少女以外の周りの人は、綺麗な服を身にまとい、用意された食事を嗜み、贅沢を楽しんでいます。
そう。
この国では、生きている事がどれだけ大変な事か、少女以外は、考えた事がありません。
そんなある日、いつも通り少女は、物乞いをしていました。
いつもと同じで道ゆく人が少女を笑い、罵声を浴びせる。2時間必死で声を出し続けるも、その日は何も貰えません。
次は、残飯を焦りにゴミが溜まっている路地裏に行くも、その日は、綺麗に残飯もその他のゴミもゴミ回収車に回収されお腹を満たせるものは、何もありませんでした。
それでも空腹を満たす為に泥水をすすりに溜池に行くも、嫌がらせかの様に池は、埋め立てられてしまっていました。
そしてついに、絶望を覚えた少女は、その場に寝転び意識が朦朧とする中、深い眠りにつく事になってしまいました。
深い眠りの途中に少女は、これが最後かと思い、今まで生かしてくれてありがとうと伝え意識を手放して逝きました。
意識をだんだんと手放していく中、優しい男の声で、今までよく頑張ったね、これからありがとうの世界に連れていくよ?と声が聞こえました。
その声に導かれる様に彼女は、残りの全ての意識を手放しました。
優しい光、優しい風が体を包み込み、心地よさを覚えた時に意識は、再び少女の元に戻りました。
そして頭、手、足に感覚が戻っていき目覚めの手助けをしてくれて、深い眠りから体を起こそうとした時に、ある声が聞こえました。
『大丈夫かい?』
その声にビクッとなり、飛び上がると優しそうな小太りの眼鏡をかけた老人が立っていました。
その声に少女は、ビクビクしながら
『大丈夫です。ありがとうございます。』
と掠れ声で答えました。
そして辺りを見渡し、いつもとは、違う景色に戸惑いを覚え、不安を覚えます。
そんな少女の様子を見て、老人は、隣に座りただただ穏やかな表情で少女に問いました。
その穏やかな表情と声は、初めて会う人なのに、何故か少女の不安を包み込み和らげてくれました。
『君は、どこから来たのかな?』
少女は、
『わからない。けどここじゃない場所。』
と答え、また辺りを見渡しました。
自然が豊かで、木々は、今まで見た事ないくらいに、輝いて見えます。
何よりも、こんなにも呼吸をするのが気持ち良い物だった事に驚いています。
そして少女は、
『こんな景色見たの初めて。』
と呟きました。
その呟きに老人は、何かを察知し
『そうか、今まで苦労してきたんだな。』
と言い少女の頭を撫でました。
久しぶりに誰かに優しくされたからなのか、久しぶりに温もりある手で頭を撫でられたからなのか、自然と涙が出てきました。
一通り泣き終えて、少女に落ち着きが戻ると
老人は、この世界について説明をしました。
『ここは、君が居た国とは、別の国で『ありがとう』と言いう言葉で全てが成り立っているんだ。』
『ありがとうで始まり、ありがとうで終わる世界。』
老人が何を言っているのか分からず、不思議な人だなと思っていると
『物は、試しだ。街へ行ってみよう。』
と老人は、少女に伝えて2人で街へ行く事になりました。
街へ向かう道中にまた少女は、驚きました。
今まで居た世界で見てきた景色は、コンクリートに覆われて、ガスが空を覆い、木々は、飾り程度に置いてあるだけでした。
それは、まるで工場の敷地内という感覚です。
ただ、今目の前に広がる景色は、コンクリートでは無い、不思議な何かで出来ており、空には、ガスが無く遠くの山も見渡せて、そんな景色に木々は、綺麗に共存出来ていました。
その景色は、まるで地球が生物であるかの様に、地球が生きている事を表しているかの様でした。
一体ここは、どこなのか。
一体ここは、なんなのか。
初めての光景に戸惑いながらも心地よさを覚えました。
『この景色は、みんなが自然に感謝をした結果なんだよ。』
『人間は、常に自然と共に生きてる。その事をみんなが知っているから、ありがとうを自然にも伝えてるんだ。』
その言葉に少女は、驚きました。
今までの居た国では、そんな事誰も思っていなかった事。
邪魔になれば燃やして、邪魔になれば伐採して、自分達の思い通りにならない物は、ひたすら消していく。
その上でゴミを生み出しては、消してを繰り返していく。
少女は、当たり前だと思っていた事に対して罪悪感を覚えました。
そして以下に自分達が大切な何かが抜けていた事を思い出したました。
街へ着くとそこには、人が溢れていました。
ただいつもと違うのは、みんな個性ある服装で個性ある何かを一人一人が胸張ってやっていました。
路上で歌を歌う人、紙芝居を話す人、手品を披露する人、食事を作る人、家を建てる人、道を作る人、色んな事をやっています。
そしてもう一つ違うのは、みんな自分からやっているという事。
今までの国では、何をやるにも罵声が飛び交い、嫌々やっている人がほとんどでした。
でもこの国では、まるっきり違っています。
『どうしてなの?』
と老人に尋ねると
老人は、
『この国では、これが当たり前なんだ。』
『みんなありがとうと言いたい、みんなありがとうと言われたい、それ以上は、求めてないんだよ。』
少女は、何を言ってるのか分からないと言いたそうな表情をしているので、老人は笑って言いました。
『つまりね、彼らは、自分の好きな事で人の為に立ちたいと思っているんだ。』
『そしてそれが出来る事に感謝している。』
『それをみんなわかってるから、ありがとうと伝えてる。』
その言葉にまだ疑問が残っている少女は、老人にこう言いました。
『お金は、貰わないの?』
老人は、その言葉を聞きまた笑って言いました。
『ワシ達人間は、お金を貰う必要がそもそも無いんだよ。』
『人の為に何かをするのが当たり前、人の為に何か出来るのが有り難い事。』
『それ以上に何を求める必要があるのかい?』
『困ってる人が居たら、手助けをする。』
『それに対して見返りを求める事なんてしないんだ。ありがとうという言葉で全てが成立出来るのに、それ以上に何かを求める必要があるのかい?』
その言葉を聞いた少女は、この世界の常識に驚きを隠せませんでした。
そしてそれを踏まえた上で街を見渡してみると、、、
食事を提供してる人は、楽しそうに嬉しそうに美味しいご飯を提供し、それに対してみんながありがとうと伝えている。その言葉を聞いて食事を提供してる人は、心から喜びを感じている。
路上で歌を歌っている人は、歌で伝えられる事が楽しくて、嬉しくそうにしていて、その歌を聞いてる人は、そんな人にありがとうを伝えている。その言葉を聞いてさらに歌声に力が入り、心から歌えている喜びを感じている。
『ありがとうの世界か。。。』
少女は、涙を流しました。
こんな素敵な国があった事にただただ喜びを感じています。
老人は、言いました。
『今まで君が居た国がどんな国だったのかは、なんとなく想像が着く。』
『きっとみんな何かに執着や恐れを感じて生きているんだろう。』
『人より優れないとダメだと、どれだけ思い込んでいるんだろう。』
『人よりも価値ある人間にならないとダメだと、どれだけ教え込まれてきたんだろう。』
『人は、生まれてきた時点で誰もが優れていて、誰もが誰よりも価値ある人間なのにね。』
『いつからその事を忘れてしまったんだろうね。』
悲しそうな表情で老人は、言いました。
そしてその言葉を聞いた少女も何故か悲しくなりました。
悲しさに浸っている中、ある詩人の歌が耳に聞こえてきました。
『貴方が生まれた意味を探しなさい。
貴方が生まれた事に価値がある。
貴方が誇れる事をやり続けなさい。
貴方が好きな事には価値がある。
貴方は価値ある人間だから
貴方の為に、人の為に与え続けなさい。
相手に求める事を忘れなさい。
Feel calm
心には常に穏やかさ。
物質に囚われる事をやめなさい。
言葉、言霊には、物質よりも価値がある。
物で直接人の心を温められますか?
それに言霊が乗って始めて心が温まる。
言葉と言霊は、ある意味貴方
言葉と言霊は、ある意味私
人と人の世界を繋げる唯一の意識。
だからありがとうを忘れずに
だからありがとうを伝え合おう。』
その詩人の歌は、確かに少女の心に突き刺さり、そして世界に対して初めて、心から生きる喜びを見出したのでした。
ありがとう。
この世界では、ありがとうをみんなが言い続け、みんながありがとうという言葉だけを受け取ります。
何故か?
それは、ありがとうと言える事がみんなにとってある意味、生きる為のチケットであり、ありがとうが世界と自分を繋げる言葉だと知っているからです。
〜ありがとうで成り立つ世界〜
物質に囚われる事を辞めた人達が作った新しい世界の形であり、そこには、本当の意味での幸せがあります。
この物語の続きは、また今度。
もしくは、この物語の続きは、貴方が生きる事自体なのかもしれません。
書き終えて、この世界を否定する人も居ると思うし、肯定してくれる人も居ると思います。
受け取り方は、人それぞれで、人それぞれ違った素晴らしい世界を持っているので僕は、そんな人の全てを認めます。
この物語りを通して、世界がみんなが好きな事を当たり前にやれ、当たり前に豊かさを持ち、分け与えられる様になれば良いなと思っています。
Feel calm.
心には穏やかさを持つこと。
読んでくれて、ありがとう。