融合、そして、同化 その3
朝飯を食べてログイン。
ちなみにメニューはエッグベネディクトだった。
「今日はあの洞窟にいくから準備しておいてね。昼まで準備して、昼食を食べたら洞窟に行くから」
「了解」
ボス戦ならこのふざけた鉄刀を直さないとな…作り方調べるか…
「私はサクヤと服作りしてるから何か用があったらメッセージ飛ばしてね」
カナカムに手を振ってサロンから工房へ向かった。
今は工房の炉に火を灯しながら日本刀の作り方を調べている。
正直めんどくさいし作り方は複雑だ。
専用の砂鉄が必要で、たらら製鉄で作らないと正式な玉鋼にはならない。
それに加えてそれを何層にも重ねて………
「…これ初心者が作るものじゃないぞ」
流石に何かしらのシステムサポートはあるはずだが…
「めんどくさいな…この棒の形を整えるか」
多く見積もって四時間しかないのに製鉄からやる暇はない。
少し形を整えて扱い易くする程度の加工に留めておくか。
焼き直しで鉄を柔らかくし、刃の形へと変化させる。
仮の武器だから妥協する部分もあるが、実用的範囲なはずだ。
少なくとも、俺が使うだけだから多少品質が悪くともいい。
刃の叩き直しが済めば次は持ち手だ。
この聖柄状態はかなりマズイ。
なんせ数回すっぽ抜けかけた。
確か革を巻きつければ……
「…汚っ」
もう一度やり直す。
丁寧に巻きつけて……
そして納得のいくものができるまで試行錯誤する事一時間。
「…もうこれでいいか」
1周分にカットした革を何個か貼りつける方針でやれば納得するものができた。
少し釈然としないが…使えるならいいか。
銘を設定できる……よし、徹甲刀にするか。
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徹甲刀
推奨ステータス
STR 100
DEX 50
特殊効果
打撃属性付与
説明
鉄インゴットを大量に溶かし製作した刀というものに真っ向から反する太刀。
鋭さで斬るのではなく、その圧倒的質量で叩き切る。
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「喧嘩を売られてるよな…これ…」
何が刀というものに真っ向から反するだ…もう少し言い方はあっただろ…
「まぁいい。キチンと使えるみたいだしな」
少し重いが、鞘からの抜刀に支障はない。
それどころか適度な重さでやり易い気もする。
少し試し振りをして、次は回復アイテム製作に入る。
メッセージを送ると二階に残りの設備を置いているらしい。
案内すると言われたので炉の火を消し、階段を登って二階へ。
「それが新しく作った刀?それにしてはゴツいけど…」
「徹甲刀。何故か打撃属性もついている」
「…刀なのに打撃っ…wそれに説明っ…w待って…wツボに入ったから…ww」
壁に手をついて失笑しているカナカム。
イラって来たので横腹を軽く蹴る。
「…ていっ」
「ブフッ!?」
思ったよりも溝に入ったのかかなり痛そうだ。
それでも原因はカナカムだから俺は悪くねえ。
「そこまでおかしい事か?」
「確かに便利だけど説明が…説明文にまで煽られるとか何かしたの?」
「覚えがあるわけないだろ」
初めて1週間経ってないんだからな
「とりあえず強力だとは思う。これからもその調子で作ってね」
「最初からそれでよかったよな」
笑いで誤魔化されながらも部屋へ。
「101が調合室。隣の102、裁縫室に私たちはいるから、何かあったらまたメッセージ送ってね」
「了解」
カナカムが隣の部屋に入るのを見て中へ入る。
中にはファンタジー的薬局にあるような、名前は忘れたが材料をすり潰すものや瓶類などの道具が所狭しと並んでいる。
作業台らしいところだけ少し片付け、倉庫から薬草を取り出す。
とりあえず回復薬でも……ポーションだったか?
…M○だったら薬草とキノコで…
置いていた小さめのナイフでキノコブツ切りにし、ちぎった薬草とともにすり潰すものに入れる。
「かなり力いるな…これ……」
もしスタミナがあれば目に見えて減っているだろう。
暫くすると粉が粘ついてきた。
…粘つくなら水には入れないほうがいいな…よし、丸薬にするか
手を改めて洗って固める。
日に当てておけばそのうち完成するだろう。
「…よく考えればポーションといえば錬金術師だったよな」
…メッセージで聞くと錬金室はさっきの部屋を挟んだ向こう側の203号室らしい。
時間も残り少ない。
迅速に移動し器具を確認する。
「錬金釜…でいいのか?」
薬草と近くにあったガラス瓶をを入れて魔力を込める。
メーター代わりの鉱石が光を放てば……
「完成だ」
蓋を開けると中に入れた瓶の中に緑色の液体が入っていた。
「一つあたり一分ってところだな。慣れればもう少し早くなりそうだな…っと、製作のレベル上がったか」
生産系スキルはレベルが上がると品質と効率が上がる。
多くの良品を少ない疲労で作れる…って事でいいのか?
まぁ、素材量が減ることはないが。
「次は55秒…少し込める量を多くするか」
…錬金は使用する魔力…MPを多くすると完成時間が短くなるらしい。
「二倍程入れて40秒…微妙だな。時間までポーション作り…MP持つか?」
だが考えても仕方ない。
後々のことも考えて出来るだけ作るとしよう…
「…わかめんやつれてない?大丈夫?」
「MP使いすぎても疲れるんだな」
飯の時間になっても返事がなく、様子を見るために部屋を覗くと俺は床に突っ伏していたらしい。
あのままだと空腹でも倒れてそうだったから助かったな。
そして、昼はホテルにある和食のレストランで食べる事に。
…この焼鮭の塩加減…絶妙だ…
「わかめんは私達と違って地人だからMPが枯渇しやすいの。私達森人はMP、INT、DEXに補正が掛かるけれど、地人はSTRとDEXが高くて、AGIが絶望的。生産に特化した種族よ。わかめんは縮地で誤魔化しているけど、それもいつまで…」
「サクヤ!後のことを考えても仕方ないじゃない!しばらくはこの3人で冒険する、でしょ?」
「…わかったわよ」
そうだな…俺のAGIは13lvで17…低いよなこれ
…とにかく足手纏いにならないようにしないとな
「私が前線、サクヤが後衛、わかめんが遊撃。この3人でバランスはいいでしょ?」
「そうね……カナカムが回避をしくじらなきゃ、ね。」
「…その時はカバーお願いします」
「私はカナカムを信じてるから耐久は控えめよ?そのかわりに制圧力は高いじゃない」
「そうだけど…納得いかない…」
味噌汁もいいな…コクが出ている
「私だってこんなエクストラスキルが出るなんて思わないわよ…短剣・短刀限定で念動力コスト軽減でしょう?それに専用スキルもあるし…私は吸血鬼かっての」
「ちょっとサクヤ口調崩れてるってば」
……食べるのに邪魔だな…静かにしてくれ
「カナカムは属性を槍に付与する汎用性が高い便利なスキルじゃない!私なんて必要な分の武器持ち歩かなきゃダメなのよ?元々あの装備がポケットが多いから助かっているけれど…」
危ねぇっお茶零すところだったぞ
「落ち着いてサクヤ、そろそろ他の人も来ちゃうから」
「嫌よ!ビール持って来なさいビール!」
机を叩くな…静かに食わせろ…
「当店ではランチタイム時にアルコール類を提供しておりません」
「…そ、そう……」
よくやった、店員さん
水を差されたサクヤは落ち着いたのか、一杯水を飲んで先に部屋へ帰った。
「…それじゃ私達も帰ろっか」
「だな」
「今日は北の洞窟を攻略して次の街まで行く。それでいい?」
「いいわよ」
「了解だ」
アイテムをインベントリに収納し、装備の最終点検をする。
…徹甲刀は作ったばかりだから特に問題はないか。
丸薬とポーション…よし、全部あるな。
カナカムに連れられて門の前へ。
「移動手段ってなにかしら?」
「…馬車でも引くのか?」
「そんなわけないでしょ…私の愛車、スカーレットよ」
赤い流線的なデザイン。
スーパーカーってやつか。
…エンジン音も身体に響く。
「早く乗って。野次馬が来たら飛ばしにくいから♪」
「…法定速度を守れ」
「あら、ここは異世界よ?法定速度なんて決まってるわけ無いじゃない♪カナカム、思う存分飛ばしなさい!」
「イエスマム!……あれ、私がギルマス…だよね?」
安全性って一体…
「目的地の洞窟の入り口までこれで行って、そこからは歩く。それでいい?」
「…おう」
ここで唐突だが一つ話をしたい。
勿論のことだが、速度を出すと振動がある。
それにこの石畳の道の整備も行き届いてない。
…よって、車内はかなり揺れる。
「わかめんはシートベルトをつけないからよ」
「それにしたってこれはヒドイだろ!?」
一服しようと開けたペットボトルが溢れかけた。
ギリギリインベントリに入れて事なきを得たが。
「シートベルト何処だよ!?」
「…座席の間にあると思うけど」
揺れ過ぎてロクに探せねえ!?
「…無い?」
「本当に何処だ!?」
「私は座席にしがみつく事をお勧めするわ」
「…は?」
俺の身体に強烈なGが襲いかかり壁に押し付けられた。
「ぐぉっ!?」
駐車するためカナカムが急転回で速度を殺したらしい。
「到着…わかめん大丈夫?」
「…これを見て大丈夫だと思うなら眼科行け…」
っ…HP減ってる…ポーション飲むか…
「ごめん…ちょっとやり過ぎちゃったかな」
「そうね…シートベルト締めてた私でも痛かったわよ」
とりあえず体勢を戻して車を降りる。
洞窟は異様な雰囲気を纏っている。
「本当にここでいいのか?」
「間違って無いはずよ。もし間違ってたなら後でカナカムを裁くだけだから」
「…………やめて?」
「あら、不安なの?」
「そういうわけじゃないけど…」
「なら行くわよ?」
装備を冒険者服に変えたサクヤが先行する。
「…わかった」
灯りをつけて中に入ったが、特に変なところはない。
「私のスキルが発動したわ。私達が最初よ」
「…スキルで分かるのか」
「あぁ、言ってなかったわね。私のこの偉人装備の能力は、私か仲間が『新発見』をすると装備時限定でステータスが上昇する。そのおかげでエクストラスキルを入手できたのよ」
「へぇ…」
「だからわかめんも積極的に新しいことにチャレンジしてちょうだい。全力でバックアップするわ!」
「………いまルビおかしかったよな」
「それじゃここの魔物を探しましょうか…ってあら?もう空洞のようね」
話をずらされたような気もするが、確かにまっすぐ進んだだけなのに大きな空洞がある。
…テントの残骸も見える。
「本当に進むのか?」
「もちろんよ。冒険者だから」
そう言いながら空洞の中にサクヤが中に入ると……
「GLUUAAAAA!!!!」
「ボスっ!?」
天井から降ってきた大きな人影。
その額には大きなツノ。
…これは……
「オーガよ!」
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オーガリア洞窟のボス
[オーガチャンピオン]
オーガリア洞窟に住み着いた流れ者のオーガ。
力が強いが、細かい動きは苦手。
強み:一撃が重い、動きが素早い、硬い
弱み:細かい動きが苦手、知能が低い
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ちなみに最後のやつはノリです
ボス戦前だけ作るかも