融合、そして、同化 その2
微睡みの中。
揺られ、揺らされ、夢の中。
遠くに見えるは円卓八席。
進めど進めど辿り着かぬ。
何かを喪っているような気が…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「わーかーめーん!」
「…夢か」
仮眠を取るはずがいつのまにか眠ってしまっていたらしい。
「…私は着いたから待合室で待ってる」
「了解。今そっちへ向かう」
ログアウトし現実へと…
「カナカムは何処に…」
待合室を見渡し桃髪の影を探すが見つからず…
「わっ!」
「!?」
気配も無く唐突に背後から驚かされた。
思わず棒を出すところだったな…危ない危ない…
「ビックリした?」
「…ここは外だぞ」
側からみれば桃髪と銀髪のカップルがイチャついているように見えるだろう。
実際、一部の方から怨みがましい視線を感じる。
そういう関係じゃないからな。
「まぁまぁーいいじゃなーい♪」
斬りたい、この笑顔
しかしここはゲーム外。
FFが効くかは知らないが下手なことはしないほうが得策だな。
「…んんっ…次の新幹線は5分後にで…る……走るよわかめん!」
「おいちょっと待てぇ!?」
カナカムは待合室を飛び出し、衝突しないように人混みを抜けてゆく。
「切符貰って無いぞカナカムゥ!」
流石に買ってない事はないだろうが!
「…ごめん!忘れてた!先に改札前で待ってる!」
通路を疾走していくカナカムを追いかけ、なんとか改札へ辿り着いた。
「これ…切符…指定席…だから…安心…して…」
「息が切れてるぞ…もうひとっ走りいくからな…」
幸いなことにホームはこちら側。
残り3分のうちには乗れるだろう。
「もう…走りたくない…」
「全力で走るお前が悪い」
切符を通し、比較的空いている中を進む。
見えた新幹線は1分前。
何故ギリギリのスケジュールにしたんだ…
「ギリギリセーフっ!」
席に座ると同時にドアが閉まった。
もはや奇跡な気がする。
「もう少し余裕持てたよな」
「それは中々わかめんが起きなかったから…」
「俺のせいか」
合流してから切符を買えばよかっただろ
「け…結局は乗れたからいいじゃない!」
「そういう事じゃ…」
これはスケジュール管理の問題だからな…
「い い か ら !着くまで暇だし…二人で色々話さない?」
「……だな」
身の上もこの際聞いておいたほうがいいか。
「私はカナカム。だけど、リアルネームは雷香利。名前を聞いてなんとなく察したかもしれないけど、雷コーポレーション会長の娘よ。広告で私のことを見たでしょ?」
「あぁ…確かに見覚えがあるな」
電車の中での既視感はそういう事か
「あの生活も悪くはないけど…私、こういうアテのない旅って大好きだから!幸いお金もあることだし…世界、回ってみない?」
「サクヤの賛同も得られたらな」
勿論、俺は賛成だが…
「リアルで死ぬ事だけは許さんからな」
特にお前なんて死んだらかなりの社会的損失が大きいし。
「…分かってる。私も死なないから、わかめんも死なないでね」
「…ああ」
最低…お前らが生きられればそれで…
「全員揃って旅をする!これが絶対条件だから!」
車内なのに大声を出すな…周りの乗客が驚くだろうが
「……だったら、そうなるようにもう少ししっかりしろ」
この調子だと何が起こるか分かったもんじゃない。
実際、スケジュールの組み立ても荒かったしな。
「ななっなんのことかなー」
…これは秘書に丸投げしてたパターンで図星か。
でなきゃあんなに走る事無かっただろうに
「って今そんな事はどうでもいいの!折角時間はあるんだから身の上話とかしたい!」
いい歳こいて駄々をこねるな。
周りに迷惑がかかる
「ガールズトークは苦手なんだが」
特にファンションの話題はな。
「安心して、私も苦手だから」
カナカムは恥じらいもなく言い切る。
「それでいいのか上流階級」
「…いいんじゃない?」
かなり苦労すると思うがな…
「それじゃまずは…私からね」
「ああ、そうしてくれ」
その間に話題でも探すか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
到着のアナウンスと共に新幹線を降り、改札から出る。
「ちょっと待ってて。私見てくる」
ログインしたカナカムを見送りその近くで待つ。
いいものがありそうな場所…世界遺産がいいか?
「お待たせー♪ホテルで合流でいいって。ほら、手繋ご?」
…渋々手を繋ぐ。
こうでもしなきゃ勝手に何処かに行きそうだからな。
駅を出てすぐ近くの大きな建物へと入る。
案の定ここがそうらしい。
そして、ソファーに座っているのは…
「あら、やっぱりあなた達も姿は一緒なのね」
疑うまでもなくサクヤだった。
なんならさっきよりも見た目がいい気がするが…気のせいか?
「はじめまして。私はカナカム、又の名を雷香利。あなたは?」
二人は直立して向かい立つ。
………なんだこの空気
「初めまして、香利。私はサクヤ、本当の名を千両血花と言うわ。よろしくね」
二人は固い握手をして着席する。
…今のはなんだったんだ
座った二人がこちらにもしろと言わんばかりの目線を向けてくる。
「…俺はわかめ。本名は佐倉千代だ。……よろしくな」
「よし!全員揃ったところで部屋に行こっか!」
カナカムが指を鳴らすとどこからともなく従業員が現れた。
手荷物を渡すべきなんだろうが、生憎今は全てインベントリにしまい込んでいる。
彼に礼だけは言い、案内役に追従する。
エレベーターの中に入った。
豪華でかつ洗練された空間だ。
そして…俺達の部屋は……
「31階、VIPルームです」
HPには載っていないスイートの上、裏の階層、31階だった。
さすが支配人の娘、ここまでいい部屋を用意できるとは…
「鍵のかかる小部屋は四つ。大部屋とジャグジー・シャワールーがございます。私共ルームサービスは電話で駆けつけますので、気軽にご利用ください。それでは失礼いたします。よい一日をお過ごしください」
再びエレベーターで下へ降りる案内役。
後に聞いた話だが、さっきの案内役はこのホテルのナンバーワンらしい。
名目上は香利の父だが、経営は現地に任せる経営方針でやっているそう。
簡単に説明するならグループ企業の売り上げの一部をロイヤリティーとして本社が徴収するようなもの。
…決してブラック企業じゃないと香利が熱弁していたが、本当にそうだろうか……?
「二人とも、ゲーム中で話さない?ここでも聞かれることはないと思うけど…一応ね。」
了承し、渡された鍵の部屋へ。
緑を基調とした俺の好みの部屋だ。
……なぜ好みを知っている?
そんな事は頭の片隅へ追いやり、ベットで寝転がりログインする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さて、第一回ラナファク会議(仮)を開催します!」
どこから持ってきたか繋げた机の前にホワイトボードを置いたよくあるスタイルの会議。
議長兼書記はカナカム、その他二人は意見役でお送り致します……ってな。
「おー」
サクヤが無表情で手だけを上に上げる。
「…(仮)?」
「この名前ダサいから変えようと思ってるんだけどいい案が無くて…」
…このギルドの名前が入っていてかつシンプルでこれはこれでまたいいと思うが…
「そういう問題じゃない!…んんっ…話を戻して、最初の議題は……」
机を叩いた事などなかったかのように話を続けるカナカム。
「次の行き先よ!」
「おーー」
「どこでもいいぞー」
カナカムが腕を突き上げて熱弁するが、俺とサクヤは興味がなさそうに脱力している。
「…二人ともやる気ある?」
「あるわよー」
「ぞー」
…ペットボトルでも緑茶は旨いな
「わかめん今飲んでる場合じゃない!それにサクヤも!」
あぁ…まだ半分も飲んでないのに…
「行き先はギルマスが決めることでしょう…?」
「もしかしてサクヤがギルマス譲ったのって私に仕事押し付けるため!?」
悪役オーラを出したサクヤが言う。
やる気があるやつに仕事を与えるのはいい手段だよな
「……ふふっ…どうかしら」
「ぐすん…サクヤにハメられた…」
泣き崩れたフリで状況を打開出来ることもなく、会議は続行。
とりあえずはゲーム内の何処かで戦う事に。
「そうね…南に港町があるらしいから、南の沼地を推すわ」
最初が港町か…クルーザーがあればそのまま出航できそうだな
「俺はβテストの時はいなかったからな。お前らに任せる」
…個人的には火山に行きたいが。
他ゲームだと鉱石系の素材が多いからな…
「わたしは…山越えかな…ほら、βテスト時塞がれてた洞窟あったじゃない?あの先って大きな街があるんだって。私は行きたいんだけど…」
全員が違う意見か…なら
「…よし、じゃんけんで決めよう」
「そうね、じゃんけんなら公平よ」
サクヤもそう思うか。
スムーズに決まって楽だしな…
「…あれ?議長が最終議決権持ってるんじゃ…」
『そんな訳ないでしょう』
「…ぐすん」
全員が立ち上がり、それぞれの構えを取る。
『じゃんけん』とは古より伝わりし拳法であり、その本質は天に運命を委ねることにある………なんて冗談はさておき、
『最初はグー!じゃんけん…ポイ!』
結果はカナカムの一人勝ち。
「やった!」
「…明日の行き先はあの洞窟ね…分かったわ。わかめんもそれでいいかしら?」
「ああ。問題ない」
強いて言うならこの刀が振えるかだな…
「なら今夜は明日に備えてゆっくり寝て、疲れをとって攻略よ!」
確かにもう夜だしな……
「おー」
「そうだなー」
「…またテンション下がってない?」
…駄目だ腹減ってきた
「…カナカムぅ…飯ってリアルで食えるよな…?」
「大丈夫…なハズよ。」
「……早く行くぞ…」
急いでログアウト。
飯を食わなければ…
「こちら、当ホテル自慢のバイキングビュッフェでございます」
目の前には大量の料理。
おそらく、時間的に出来立てのものだろう。
「飯…ウマソウ…オレ…クウ……」
「サクヤぁ!わかめんが…わかめんがぁ!」
「きっと空腹で野生に戻ったのよ…そっとしておきましょう」
トレーを取得し皿を載せ、腹を満たすための供物達を並べてゆく。
「……わかめんってあんなキャラだったかな?」
「さぁ…私は知らないわ」
さぁ儀式の時だ…
「…いただきます」
米と肉の旨味が凝縮され、胡椒の刺激がより二つを引き立てる。
「美味い…」
「あら、元に戻ったみたいね」
「よかったぁ……変なオーラ出てたもん…サクヤみたいに…」
「…そこまでか?」
腹が減っていて特に覚えてないが…いつも通りだっただろ
「…へぇ…私みたいに…ねぇ……?」
「地雷踏み抜いちゃった!?」
サクヤがいつも通りのオーラを出す。
無視して晩飯を食おう。
「いやっ!待って!せめて部屋の中で!」
カナカムは既に逃走態勢だが、サクヤはエサを逃さない。
「あら…?どうして私から逃げようとするのかしら…?」
「ごめんなさぁぁい!」
…味噌汁も旨いな…もう一杯貰うか
「…というか飯の時に暴れるな。常識だろ?」
「…それもそうね…」
席に座りなおしたサクヤは再び優雅に食べ進む。
お嬢様なカナカムよりも品があるんじゃないか…?
「……助かった…ありがとうわかめん…」
「私は一言も許すとは言ってないわよ」
「そんなぁ…」
刑期の先延ばし、ってところだな。
……デザートは久しぶりに杏仁豆腐でも…
「わかめん、私の分のデザートもお願いできる?」
「任せろ。杏仁豆腐でいいな?」
「わかったわ。お願い」
明日から洞窟か…食料は…これの余った分を貰おう。
なに、食料廃棄になるよりは有効活用になるはずだ。
……このロースビーフ旨いな
「…お前ら、夜中までうるさくて寝れなかったんだが」
うちの独自設定を開示していこうのコーナー(名前募集中)
第三回の今回の議題はこちら
『伏せ字の種類』です
記憶によれば3種類が存在。
1、シンプルに#の連打。
音数ではなく、文字数で伏せてます。
漢字でもひらがなでも等しく#一つですよ
例
千代の持つ黒く蒼い太刀。それは、彼が打ったモノだ。
↓
##の持#黒##い#刀。そ#は、#が##たモ#だ。
2、不規則な記号の連打
キーボードの記号欄を適当に押しているだけです。
規則もへったくれもないです。
3、文字化け
厳密には伏せ字ではないですが…一応。
2との区別はピンキリ。
暗号化しているので、解けば何かが見える筈です。
オマケ
4、二つの仮名が入り混じる
全く伏せ字と関係ないですけど…折角なので。
発音が悪いか、少しノイズが入って聞き取りにくいというイメージです。
機械音声がだす不自然な発音が近いかも…?
次回の予定は未定です