表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームの世界が現実に  作者: わけわかめ
Ver,1 Assimilation Game
3/15

沈降、そして、再生。 その1

無事にログアウトし、布団から脱出する。

「…こんなに部屋のものって大きかったか?」

少し目線が低いような気がする。

「まぁ、さっさとコンビニに買いにいくか。」

財布を取得し鍵を閉め、小走りでマンションを下る。

今日はエレベーターが工事で動かない。

階段を駆け下り、入口に辿り着いた。

全く息が上がっていない。

細い道路を横切り、コンビニの弁当コーナーへ。

今日の昼飯はすぐに食べられる笊蕎麦にしよう。

「いらっしゃっ…せー…」

「これ一つだ。割り箸は必要ない」

「あっ…はい…」

…ギョッとした目でこっちを見てるが…この店員とはかなり顔を合わせているハズだよな…

代金を払い、釣り銭を貰って家へ帰る。

…手に持つのも面倒臭い…仕舞うか(・・・・)

手軽になったから、走る速度を上げて駆け上がる。

脚を使うのがもどかしいな…縮地を使うか(・・・・・・)

数分ぶりに帰ってきた我が家のドアの鍵を開け、袋を取り出して(・・・・・)食卓へ座る。

折角だしテレビも付けておこう。

「本日発売された話題のゲームCABにて…」

おお、丁度CABの話題が出てるな。

蓋を開けて水をかけて…ダシもカップに注ぐ。

「正午よりログアウトしたプレイヤーの…」

…旨え…最近のコンビニの飯はより美味しくなったよな…

「身体能力、及び見た目などが…」

……いま聞き捨てならない言葉が

「現実世界でも引き継がれるという事案が発生しています。この事件に対し、発売会社のロードアンドダウンは、これが仕様であり、後日ゲーム内で詳細を発表するとしており…」

「…おい…おいおい…嘘だろ…」

手鏡を見ると…なんということでしょう。

そこにはプラチナヘアーの驚いた顔をしたショタが…

H○ly(クソ) sh○t(がっ)!」

どうしてこうなった!?

ああクソ久しぶりに口調が荒れてやがる…きっとこれは最近勧められたアメリカ映画のせいだ…落ち着け…落ち着け…

「…すぅ……はぁ………」

通りで店員が変な目で見る訳だ…

「…で、テレビがさっきのが本当なら…」

…背中に木刀が出た。

「ステータスも確認できるし…で、装備やインベントリ操作も自由自在。」

まさにこれは…

「ゲームと同化、だな。」

不便ではないが、運営には一つ文句を言いたくなる。

「…まぁいい。食事を終わらせてリログしよう。」

笊蕎麦を食べ終え、ゴミを片付けてベットに寝転がり呟く。

「ログイン」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

再び降り立った部屋を飛び出し、サロンへと向かう。

「カナカム、かなり大変なことが起こった」

「…んー…?わかめんどうしたの…?」

ソファーでダラけきっているカナカムをきちんと座らせる。

見た目だけはいいからもっとしっかりすれば…

「…それでなに…?昼寝しようと思ってたのに…」

「簡単に説明するとだな、このゲームの世界が現実になった。」

「……わかめん…そんな冗談面白くないから…」

ジト目されてもな…事実なんだからどうしようもない。

「…信じられないなら、一回ログアウトして自分の姿を確認してこい」

「分かった…ログアウト」

カナカムが天に昇り、すぐ戻ってきた。

「疑ってごめん…本当に変わってた…」

「だろ?」

「…私これからどうすればいいのかな…」

膝をつき、涙を流して嗚咽を漏らすカナカム。

「落ち着け」

「無理よ!だって…私の家は大企業の…」

「待て、リアル割れは駄目だ」

「…分かった…」

こんな状況だからこそ、リアル割れは死に直結する可能性が高い。

「でも、サクヤが帰ってきたら今後の事も相談しなきゃ…」

「分かったから落ち着け。」

ソファーに腰を降ろさせ、涙を抑える。

…俺はともかく、カナカムのリアルはヤバそうだな。

上流階級の人だったら姿が変わるのは致命的だよな…なった事がないからよく分からないが。

「ぅぅ…ぐすっ…」

「…膝使うか?」

「…うん…」

膝枕とか初めてだけどな…ん?ドアが開く音…

「カナカム〜!私が帰ってきたわ……よ?」

「…あっ」

銀髪の森人エルフがサロンに入り、硬直…いや、震えている。

それにカナカムも震えている。

「…あなた…誰?」

身体の奥底から恐怖が呼び起こされるような声が聞こえる。

「ぁ…そ…れは…」

駄目だ…声が出ない…

「サク…ヤ…これは…違…うの…」

「あらぁ…?何が違うのかしらぁ…?」

こいつが…サクヤ…!

どうみてもラスボスだろ…顔が愉悦してる時の人と同じなんだが…

「…その子に泣かされてたんじゃないの…?」

…少し圧が弱まった?

「ちがう…ってば…っ!」

必死にカナカムがそう叫べば、サクヤが少し考えるような仕草を見せた。

「…そう…解ったわ。それじゃ、説明してもらおうかしら?」

俺を押し付けるような圧は無くなった…いや、カナカムが局所的に浴びせられてるのか。

「あの…その…この子は…」

カナカムがたどたどしい説明を終えると、次はお前の番だと言わんばかりの目を向けてくる。

「…本当に、手は出してないのよね?」

これは…気を逸らせば殺される…っ!

「当たり前だ」

気力を振り絞って何事もないように返事をする。

これしか手はない。

「…ならいいわ。私も歓迎する。ようこそ、ラナウェイ・ファクトリーへ」

「お、おう…」

サクヤから急に圧が消えて笑顔になっている…さてはこいつも残念美人の一種か

場所を整え、俺とカナカムが座り、テーブルを挟んだ向かいにサクヤが座った。

「要するに、現実世界の私がこのゲームの私と同じになっているのね?」

サクヤはあんまり驚いてはいない…いや、実感がないのか?

「そうなのよ…それで、私はわかめんに慰めてもらってたの。別にやましいことなんてないから!」

カナカムがテーブルを叩いて訴える。

横で叫ぶのは耳が痛くなるからやめていただきたい。

「…前も言ったわよね?ムキになったら怪しいだけだって…」

「だ か ら!違うってば!」

「はいはいわかったわよ…で、ギルドへ招待はしたの?」

「…忘れてました」

…一応持ってきた麦茶を飲んでいたら話が進んでいた。

インベントリに入れておけばゲームの中でも現実でも取り出せるらしい。

「えっと…こうだったっけ…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カナカムから[ラナウェイ・ファクトリー]への招待が来ています。

承認しますか?

YES/NO

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

迷う事なく承認する。

「…さて、これで晴れて私達の仲間ね」

サクヤのその微笑み…これは残念美人のものじゃない…

「たくさんコキ使ってあげる…♪」

組織のボスクラスの妖艶な女性のものだ…!

しかもかなり凶悪なやつのな…

「あの…わかめん?サクヤは結構いい人だから…多分…落ち着いて…?ほら、サクヤもその笑い方やめて…怖いから…」

「…はいはい」

「はぁ…」

どっと疲れた…

「ともかく、私達はご飯を食べてくるから……わかめんは装備を作って来たらどう?私の分はもう倉庫に入れておいたから、自由に使ってくれていいよ♪」

普通にすればカナカムも美人だな…普通にしていれば。

「わかった…できれば二人の武器も作ろうか?」

「お願い!」

「私もお願いするわ。短剣、それか小太刀をお願いね。」

「了解。後の話は昼のおやつを食べながらするとしよう。」

「工房はこの屋敷の裏にあるから、好きに使ってくれて構わない!凄いもの作っちゃって!」

「当たり前だ、ギルマス」

「期待してるから!」

「いいからさっさと飯を食ってこい」

二人を外へ追いやり、裏口から屋敷の外へ。

周りを見ると、確かにログハウス的な建物が一つある。

かなり作りはしっかりとしていて、地下は倉庫になっている。

カナカムが言っていた倉庫はここのことだったのか…

鍛治の炉は家が燃えないように外に設置されていた。

練習がてら、簡単なトタン屋根だけでも作ってみようか。

薪を倉庫から取り出して、炉にくべる。

火は勝手についた。

こういったところはゲームなんだな。

鉄のインゴットを溶かし、薄い板になるように叩いていく。

…大きな鉄板が完成した。

作っておいてなんだが、屋根にするには少々重すぎる。

ここの屋根になりそうなものは見つけた時に買っておこう。

「それじゃ…メインクエストやるか」

再び炉でインゴットを溶かし、形を整えながら叩いていく。

イメージはよくある日本刀の形…ではなく、鞘と反りのある大きな剣。

本当の刀は色々な工程を踏まえて作るため、こんな貧相な設備で作るわけには行かない、という謎のプライドだ。

あくまでも太刀として作ったからか、武器カテゴリは太刀。

だが、見た目はただの大きい変な形の鉄の塊だ。

装備することはできたので、使う分には問題ない。

「…この調子で長槍と短剣も…」


「マズい…インゴットをかなり使いすぎたかもしれない…」

納得いく出来のものができず、試行錯誤を繰り返すこと一時間。

自分が取った分の鉄インゴットは、もう半分を切っていた。

目の前には失敗作の長槍と短剣の山が出来上がっている。

「一体どうしたものか…一応、初心者装備よりはかなり強いから…アルベルトで売り出してもらおう。」

困ったらカナカム(ギルマス)に売り捌いてもらう。

これはうちのギルドで語り継ぐべき言葉だと思う。

「そうと決まれば…」

唯一の成功作とゴミの山をインベントリに入れ、サロンへと戻る。

「…あいつらβ時代からいたなら、これよりも強い装備があるんじゃないのか…?」

…いや、気にしないようにしよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ