序章、或いは唯の始まりのようなもの。 その1
今日から、俺の最後の夏休みが始まる。
…そして、今日、世界初のジャンル、"VRMMO"の、『Craft&Battle』というゲームが発売された。
βテストには外れてしまったが、無事に第1版の現物を入手する事に成功した。
本体の形はゴーグルだけではなく、首に装着する輪、耳に装着するソフトを読み込むイヤホンもある。
ソフトは内蔵型らしく、読み込む必要もない。
…発売会社は全く無名な謎の企業、『ロードアンドダウン』。
このゲームの発表と同日に設立したらしいこの"個人企業"、建物のガワはあるが、サーバーのアドレスも、社長も社員も、宣伝のためにテレビに映っていた広報の一人だけを除いて謎のまま。
これらの情報がβテスト終了の翌日に判明したというのだから尚不思議ではある。
だが、それを補うだけの魅力がこのゲームにはある。
まず、世界初のVRMMORPGということ。
あらゆる科学視点からも不可能だと思われていたのに、ぽっと出の個人企業が不快感なくそれを作ってしまったのだから、それが発表された時は世界が騒めいた。
何処かの国が公式が禁止していたのにもかかわらず、本体を分解して大爆発というニュースが流れた。
それによって少し下火にはなったが、今でもメカニズムの解明が秘密裏に行われていると都市伝説にもなっている。
閑話休題。
二つ目は、全ての住人が本物の人間と遜色なく生きている、という事。
これはメリットとデメリットが両立している要素だが、これほどにまで高度なAIを全てに搭載しているのは、やはり魅力と言って差し支えないだろう。
されどNPC、高がNPCと侮れるようなゲームでは無い。
実際に人格があり、社会を築いている。
そこで傍若無人な行いを行えばどうなるか…言うまでも無いな。
三つ目は、要素が遊びきれないほどまである、という事。
βテストでは種族とレベル以外は一切制限が無く、期間内の一ヶ月間、何度でもステータスリセットが出来た。
ジョブは決められた六つの中だけだったのにも関わらず、スキルの数は悠に100を超え、最後の方にはエクストラスキルも発見された。
さらに四つ目は……
「っと時間か…こんな事考えてる場合じゃないな」
早速装着し…あとは魔法の言葉を紡ぐだけ。
「ログイン」
『Welcome to NEW WORLD [Craft&Battle]!』
深く、深く潜る感覚と共に、手厚い歓迎を受けた。
今、俺は白い真っ平らな空間に居る。
『まずはキャラメイキングをお願いします。種族と性別を一覧から選択してください。』
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性別
男/女
▼人族
・人間
・森人
・鬼人
・魚人
・地人
・妖精
▽獣人
▼魔族
・魔人
・下位悪魔
・下位天使
・下位吸血鬼
▽魔物
▼特殊生命体
・キラーマシン
・マザーマシン
・ジンテーゼマシン
・アンドロイド
・ホムンクルス
・ゴーレム
・マリオネット
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…多いな。
『全ての種族に特色があり、ステータスやスキルに補正が掛かります。自身が本当になりたいものを選択し、新たな生を歩めるものをご考えください。尚、このクリエイトエリア内では時間が凍結しておりますので、御安心して思う存分お楽しみください。』
今、至極当然のように時間の凍結と聞こえたよな。
………まぁいい。
俺は、このゲームで生産職をしたいと思っている。
何故なら…俺は、作業が大好きだ。
健康の為、欠かさず朝昼晩の三食を食べてはいるが、逆にそれ以外は永遠にレベリングやボス周回、卵孵化の単純作業をしている。
リアルが生産職なβテスターによると、ある程度のゲーム補正がかかっているが、全く気にならないそう。
流れ作業というスキルを発見した人もその人だ。
物作りの作業もやりたいとは昔から常々思っていた。
それがこのゲームで叶うのなら、絶対にやるべきだろう。
「特に生産に関わるのは…STR、DEX、INTだったか。」
あまりリアルと姿を変えたくはないんだが…
…おお、良いものがあった
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地人
STR・DEXが高く、AGIが低い。
生産系スキルが取得しやすい。
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力が高く、器用で、足が遅い。
今回の目指すプレイに丁度いいな。
『土人の男で、リアルを元にキャラクターの素体を生成します…Complete.』
目の前に現れたのは、昔の俺…を少し老かしたもの。
身長が150cmぐらいだろう。
『お手元にあるウインドウを操作して貴方の身体を作成してください。』
体の形はそのまま。
髪色はランダムで…プラチナか。
目の色は黒、肌色は…変えなくていいな。
…肌荒れとムダ毛だけ消そう
『貴方の身体は完成しましたか?』
「勿論」
『次はステータスの振り分けです。合計210ポイントをHP、MP、STR、VIT、DEX、AGI、INTに振り分けてください。』
…一つあたり30pか。
とりあえず、HPとMPにそれぞれ20pをつぎ込む。
AGIは元々低いから…10p。
VITもそこまで要らないだろ。(20p)
その代わりに生産に関わるSTRとDEX、INTは50p振っておこう。
『これでよろしいですか?』
「あぁ。問題ない」
『ではジョブの選択をお願いします。尚、一部スキルに特定の職業しか取得不可能なものがあります。』
…戦闘系、魔法系、生産系、特殊系があるな。
俺は勿論、生産系の中から選ぶ。
料理人、樵、大工………製作者?
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製作者
作る事に特化したジョブ。
戦闘系スキルは才能が無ければ取りにくい。
固有スキル
製作
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戦闘系スキルが取りにくいのか…まぁ、取れない訳ではないのなら…これでいいか。
『武器とスキルを選択してください。尚、派生武器のスキルと取得不可能なスキルは一覧に含まれていません。』
………刀はいいよな…お、あったあった。
振り回すのなら太刀が丁度いいはず。
大きすぎると逆に振り回せないしな。
スキルも大量にある。
だが固有含め7つまでしか取得できないからな…悩むな…
結局俺が選んだスキルは…縮地、刀術、抜刀術、付与、採取、製作、鑑定の七つ。
大体の生産系スキルは製作で代用できるらしく、取得しなかった。
縮地はAGIでは無くDEX優先版のワープ型短距離移動スキル。
刀術と抜刀術は派生元と派生スキルで、刀術を取得すると選択肢に出てきたから取得した。
付与は作ったものに何かを付与できるかと思い取得した。
採取も、説明を見る限りでは製作と同じような総合的スキル。
鑑定はどう考えても必須。
他のスキルは後でスキルポイントを使って取得できるらしいから、今の所は我慢しよう。
『初期装備を選択してください。尚、ステータスに違いはありません。』
…装備は無難に刀と布の服。
アイテムは…あぁ、貰わなかったら現金が多く貰えるのか…ならそれで良い。
『最後に、名前を入力してください。』
名前…そうだな……俺が好きな味噌汁の…わかめだな
『ステータスを作成しました。確定すると、変更は不可能になります。』
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名前:わかめ
種族:地人
ジョブ
レベル 1
所持金:10000チェイン
HP:20/20
MP:20/20
STR:55
VIT:20
DEX:55
AGI:8
INT:50
装備▼
両手:木太刀
頭:なし
体上:布の服
体下:布のズボン
靴:革の靴
スキル▼
・戦闘
縮地 :LV.1
刀術:LV.1
+抜刀術:LV.1
・魔法
付与:LV.1
・生産
採取:LV.1
製作:LV.1
・特殊
鑑定:LV.1
称号▽
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数値が少し…って種族補正だな。
『ステータスが完成しました。身体に定着させます……Complete.』
…ん?定着…?
『Welcome to our WORLD.』
第一回 うちの作品の独自の表現紹介をするコーナー(名前募集中)
謎の下三角記号について
ステータスなどのリストを閉じている時に▽を使い、開いている時に▼を使っています。
書くのが面倒くさかったり…書かなくても影響なかったり…それ程度の表現なのであまり気にしなくても良いです
次回は〜を並べたものについて…?