第一話 神様からのおつかい
(なんだ? この浮遊感は)
俺は謎の浮遊感を体験しつつ、体は未だ光に包まれている。その状況に呆けていた。
(ああ、まだ転移中なんだな)
異世界へ転移中だという事になんとなく気づいた俺は、光が眩しかったので眼を閉じ、それが終わるまで体を預けて待つ事にした。
そして少し時間が経った頃、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
『お主には、ちと異世界転移してもらうぞ。言っている意味がわかるかの』
おじいさんらしき声が聞こえたが、正直ぶん殴りたいと思った。
『急用でな。わしはお主らで言うところの、神さまじゃ』
……何言ってんだこの爺さん。いやまぁ、こんな非常識が起きて、さらにはテレパシーみたいなのが使えるから神さまなんだろうな。
『時間が無いから手短に伝えよう。お主らにわしの力、神の恩恵を授けて異世界に転移することにしてもらった』
ん? 神の恩恵?
『神の恩恵はゲームで言えば、ステータスに補正が掛かるようなもんじゃ。まぁ、それは後々説明があると思うんじゃがの』
つまり異世界で俺TUEEEEができるのか?
『それでじゃな。異世界に行ってもらって、お主にはオーパーツを回収してもらいたいんじゃ』
オーパーツねぇ……。俺以外に、もっと適正がある人とかいると思うんだけどなぁ。
『そのオーパーツはダンジョン奥深くに眠っている、異常なほどの強力な武器でな。そろそろその世界の民達に取られそうなんじゃ。オーパーツが取られたら、異世界の力や勢力のバランスが崩れてしまうのじゃ』
なるほど、つまりお使いをしろと。
『バランスが崩れる前にオーパーツ全部回収してほしいんじゃ。回収し終わったら、あとはお主らにあげよう。現実世界に帰れる方法はあるんじゃが……それがわしにもわからなくてなぁ。異世界に色々と帰れる情報がある筈じゃからそっちで情報収集頼むぞ』
えぇ、なんてなげやりな……。っていうか神さまなのに何も知らないのか?
『おっと、そろそろ転移が終わる頃じゃな。死なないとは思うが……気をつけるのじゃぞ』
……まぁ、神さまに選ばれたんだな。だったら仕方無い、か。
『あっ、ちなみにお主にした理由は気分じゃ』
じいさん待ってろ、おつかい終わったらすぐぶん殴りに行く!!!!!!!!
と、俺を包んでいた光が、上から徐々に消散した。
気が付くとそこには王座らしき場所で、その前に立っていた。
そういえば肩が軽いような気がして慌てて荷物を確認したが、リュックが見事に無くなっており、ポケットに入っていたスマホと財布だけが残されていた。
周りを見回すと、RPGでよく見る城のくそでっかい廊下の様で、真ん中には赤いカーペットが敷いてある。そして目の前にある王座には、謎のじいさんが座っていた。その左右には三人ずつ槍を持っている騎士らしき人たちが立っている。
見回し終えて一息ついた後、タイミングを見計らった様に謎のじいさんが口火を切った。
「ようこそ、わしらフォーリナー聖国の光よ。お主の名はなんじゃ」
「……その前に、そっちから名乗った方がいいんじゃないかな。じいさん」
「貴様! 我ら聖国王になんて口を!」
「待て待て、よい。そうじゃったな。こりゃ失礼した」
俺はじいさんに対して強めに返したが、騎士らしき人が王? に対しての態度かと怒りの声を上げた。しかしじいさんは、手で騎士を制すと続けて言葉を発した。
「わしの名前は、ティトゥス=ストム。この東の領土、フォーリナー聖国の王である」
ストム国王は、結構な歳なのか白髪で、ほうれい線がくっきりしていて少しよぼよぼながら、何か格闘をやってたのかガタイが良い。頭頂部に国王を示す王冠を被っており、世界史の授業で見たような貴族と同等かそれ以上の服を着ている。
騎士達は、鉄の甲冑を着ていて、そのデザインが中世ヨーロッパ時代に近い鎧の様だ。
「俺は長谷川 玲だ。で、なんで俺がここにいるのか状況を聞きたいんけど……」
「うむ、冷静沈着で助かるわい。大体の召喚されし者は困惑し、何も聞いてはくれんからのう」
ストム国王は、その時のことを思い出したかのように、疲れた表情になって顔を下げた。
国王が顔を下げている間、俺は現実味の薄さから周囲を見渡した。
だが玉座の間にも関わらず、国王を護る騎士はなぜか六人しか居ない。警備が甘いなぁ。
正気に戻ったのか、ストム国王は顔上げて口を開いた。
「すまんすまん、話を戻そう。何故、お主を召喚させたかは追々説明するじゃが、まずこの世界の話を聞いてからでも遅くはなかろう」
俺は状況を聞きたいのは山々だが、(たしかにこの異世界の事を知ってからでも良いかな)、と思いつつ聞くことにした。
ストム国王から言われた話はこうだ。
この世界には冒険者という生業があって、役務が二つに分かれている。
【ダンジョン攻略者】と【騎士】
【ダンジョン攻略者】は、その名の通りダンジョンを攻略に特化した冒険者。
ダンジョンは、さっき神じいさんが言ってたな。
【騎士】は国に任命され、戦争専用に武力を叩き込まれた冒険者。
冒険者って言うのかそれ……?
そして両方の資格を持っていると【冒険神】となれるらしいが、命知らずという肩書きと認識されているので今は誰一人もいない。命を大事にするのは当たり前だよなぁ。
次は【魔法】と【スキル】の説明だ。
魔法は五大魔素【火】【水】【風】【雷】【地】が常識として知られていて、五大魔素の上位属性【光】【闇】がある。
【雷】と【光】の違いは? と聞いたら、【雷】は放出などして攻撃する魔法、【光】は武器、防具、などの性能をアップできる。と、なるほど五大魔素が攻撃系で、上位属性がバフ系なのか。
そして魔法は、【魔方陣による魔法】と【詠唱による詠唱魔法】とある。
前者は大規模でやる魔法で、後者は単独で出来る魔法。ちなみに俺が召喚された方法は【光】による魔方陣で召喚されたと聞いた。
便利だが、詠唱があるなどして戦闘には不向きだ。無詠唱で出来る人はいるらしいが、あくまで説だという。
だが戦闘で、カバーしているのが【スキル】
スキルはそのままであり、例えば[空斬]斬撃を飛ばす、身体能力を伸ばす[怪力] [超足]等々。スキルはステータス数値によってランダムに与えられる。熟練度によって【スキル】が派生し、【強化版スキル】が使えるようになる。
次は【ステータス】の説明だ。
・筋力
・体力
・敏捷
・魔力
・物耐
・魔耐
と6つある。
ステータス確認をするためには【冒険者カード】で確認できる。この【冒険者カード】は、証明書にもなるから重大な物らしい。つまり免許証か。
本当だったら冒険者登録の為、契約書を書いて冒険者テストを受けなければもらえないのだが、異世界転移者として無料でもらえた。ヤッタゼ。
名刺サイズのカードを渡されて、冒険者自身の唾液をちょっと付ければ登録完了。なのだがさすがに気が引けた。なんで唾液なんだよ! 普通血とかだろ! きたねぇ!
嫌々唾液をカードに付けて、時間が経つとカードが光だし、文字が浮き出てきた。
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【ハセガワ=レイ】 Lv1
・筋力 200
・体力 200
・敏捷 200
・魔力 200
・物耐 200
・魔耐 200
【固有スキル】
[異世界人の恩恵]
[???]
【スキル】
[巨空庫]
[第六感察知]
[空歩]
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……神じいさんの恩恵以外に、スキルが頭おかしいのは気のせいかな。俺は真顔でカードを見つめた。
「ステータスのLv1平均数値は50じゃが、お主はその二倍だと思うのじゃ。どうかの?」
声を掛けられハッと我に戻った俺は、ストム国王に聞いた平均数値でまた驚いた。
いやいや、二倍どころか四倍だよ! しかも固有スキルって何!?
「あの~……、言いづらいんだけど。数値は六つとも200で、固有スキルが二つあるんだが……」
「「「「「「「200!?」」」」」」じゃと!?」
質問に答えた瞬間、その場に居た全員が飛び跳ねるように驚愕し、一斉に同じ言葉を放った。
「さ、さ、さらに固有スキルが、あ、あると言ったか?」
「は、はい。二つあるとは言ったけど--」
「「「「「「「二つ!?」」」」」」」
固有スキルの有無を聞かれて答えたが、また、全員一糸乱れぬ言動をとった。仲良しだろ、この7人。
慌てて目の前までやってきて、カードを覗きに来た。俺はあまりの勢いに少し体を引いた。
「……ほ、本当じゃ」
「これは……」
「Lv1でこの数値なら……」
「戦争に……勝てる……ッ」
王を含め4人が呟き、驚嘆しながら俺のカードをまじまじと見てくる。
ん? 今、戦争がなんだって?
「ほ、本当に固有スキルが二個じゃと……?!」
「あ、あの~。スキルと固有スキルって何が違うん、……デスカ?」
俺が問うと、全員が正気に戻り、すぐさまに先ほどまで居た場所に戻っていった。
「お、おっほん。すまない、予想以上過ぎて我を忘れとった。固有スキルというのはな、稀に与えられるものじゃ。確か……人の、性格、才能、個性で付加されるのじゃが……普通は一つなのじゃ。しかし、お主は二つときた」
ストム国王から言うに、人それぞれのオリジナルスキルということになる。
なるほど、じゃあ多分この[異世界人の恩恵]っていうのは、神じいさんから授かったものなのか。
「まったく、予想以上の数値とスキルを引き当てるもんじゃ。しかも[巨空庫] [第六感察知] [空歩]の三つは、単なる伝説だけかと思ってたのじゃが……」
ストム国王は驚嘆を超えて、呆れ顔になった。
「スキルの名前を触れてみろ、詳細が見れる筈じゃぞ」
俺は言われた通り、カードに浮き出てきた文字に指先で触れた。
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・[巨空庫]……無限の貯蔵庫であり、スキルを発動すれば空間の輪が現れ、出し入れする事が出来る
・[第六感察知]……感覚的に、気配、殺気、等が察知できるようになる(自動効果)
・[空歩]……空気を蹴り、飛ぶ事が出来る
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詳細を見た瞬間、口が勝手に開き、呆気にとられる。
わーお。これは俺TUEEEEEじゃなくて、単なるチートだと思うんですけど。と思いつつ残りの[異世界人の恩恵][???]二つにも触れてみた。
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[異世界人の恩恵]筋力、体力、敏捷、魔力、物耐、魔耐の六つステータスに補正向上が付く(Lv上げ、鍛えると共に補正が付く)
[???]???????????????????????????????????????
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
全ての詳細を見て、疑念から確信へと変わった。
うん、これ間違いなくチートだ。俺自体がオーパーツなんじゃないのこれ。
しかし一番気になるのは--
「この[???]っていうのはなんだ? バグってるのか?」
「バ? グってる? というのはわからないのじゃが、多分レベルを上げるか、何かのきっかけで分かるようになるんじゃないかのう?」
「あー。さっき言ってたスキルの派生か、なんちゃらみたいな感じか。というよりさっき誰かから戦争がなんたらって……」
騎士6人のうち1人がギョッとし、誰が溢してしまったのか分かったのか、ストム国王が一番端に並んでいた騎士を睨んでる。こちらに顔を戻すと頬杖をして、ため息を付いた。
「この後に話すつもりじゃったし、まぁいいじゃろ。まずダンジョンの土地について話そうかの」
騎士2人が何処からか持ってきたのか、この異世界の世界地図を手に持って広げ始める。世界地図は丸くて六分割されていた。
ダンジョンは魔法の五大魔素を元にし、5つのダンジョンがあり、最下層にはオーパーツがあるそうだ。今居るここと、もう一つの国【ゲシュミット帝国】とダンジョンの土地を奪い争い、ダンジョン略奪戦争の真っ只中であった。
この聖国が所有している土地は東側―― 二分割している東南が【火】東北が【風】
帝国が所有している土地は西側―― 分割している南西が【水】北西が【地】
今は、六分割している北の一つ【雷】の土地を奪い合っている。
「ふむふむ。で、この下の土地、森? はなんの土地なんだ?」
「ここは土地というより、魔物の森と言っておこうかのう」
「魔物ねぇ……これも何か分けられているのか?」
「察しがいいのぉ。魔物は理性が無く、自分の種族以外には躊躇無く敵意を持って襲いかかってくるのじゃ。もう一つは亜人族と言われていて、理性があり敵意をもたん。今生存確認されている種族は【兎人族・獣耳族・エルフ族】の三種族だけじゃ」
「生存確認されているって……絶滅した種族でもいるのか」
「そうじゃな。絶滅亜人族と言われいて【人弧族・竜人族・吸血鬼】の三種族じゃ。今の亜人族は聖国の法律により、安全に暮らしているのじゃが……外に出た亜人族が行方不明になる事もあってじゃな」
「……奴隷……とか?」
「……真実はどうかわからんか、帝国では亜人族の奴隷らしいものを見た、という報告が上がっておる」
うん。なんつーか異世界モノのテンプレ過ぎて言葉も出ない、というより突っ込みたい。
今更だが何かが物足りないと思い、ここに来た時とまた同じく周りを見た。そう副島がいないのだ。
「……ん? そういえば思ったんだが、俺以外は召喚されていないのか?」
「そうじゃが、なにか気になる事でも?」
「気になる事っていうか……俺以外もう一人、友人も召喚された筈なんだが……まさか」
「おそらく帝国側に召喚されてしまったんじゃないかのう。この召喚魔法は何百年に一度という代物なんじゃ。あちらさんも出来る筈じゃろうて」
予想してたのが的中して、ちょっと冷や汗が出た。でもあいつなら帝国っぽさがあって似合うから良かったかもしれないな。
俺は下を向き、頭を掻きながら面倒なことになった……と少し困った顔をした。ハァ……溜め息を吐いた後、覚悟を決めたような真剣な顔をして問うた。
「で、大事な事を聞いてないんだけど」
「大事な事とは?」
「決まってるだろ、俺を召喚した理由だよ」
そう、召喚した理由はなんなのか。話を聞く限り、神じいさんが俺をここに呼び出したわけじゃないし、あの神じいさんが多分、選抜役だっただけだろうけど……気分って言ってたしな。
「そうじゃな、もう説明も充分じゃろ。今は戦争真っ只中と言ったな? 戦争をはじめてからもう何年も経っていて、キリがないのじゃ。そろそろ切り札でも切ろうと思って召喚魔法をしたのじゃ」
「……」
「お主に、戦争を参せn」
「断る」
はい、一話始まりました。ちなみにぶっちゃけるど現在9/16、第二話完成していません。
更新は来週か再来週にします (多分)
だって作者の趣味でしかも○ナニーみたいなもんだからね!仕方ないね!