俺と学校と両親(中)
「こ~う~ちょ~!はぁ、はぁ」
俺の目の前には息を切らしている男性がいた。
「あら?どうしたの?」
校長は何もなかったかのような素振りである。
「嫌な感じがしたので来ました。また、していましたね?」
「何を?」
「また、襲おうとしましたね?」
え……また?俺以外にも被害者いるのか?
危うく俺の貞……ってアンリに奪われたんだった。
「証拠は~?」
「ここにありますよ」
男性は懐から魔法アイテムを出す。
「これを仕掛けておきました」
「プライバシーの侵害よ!」
「校長からのセクハラの証拠を掴むためです!」
「ただのスキンシップじゃない!」
「それが過剰過ぎるんです!それも男性、女性関係無く!」
マジで……それは辞めるわ。
「えー」
「『えー』じゃないです。知ってますか?目安箱を開ける度にほとんど校長のセクハラ問題ですよ」
ここウェズ魔法高等学校だよね?大丈夫?不安なんだけど。
「気のせいよ」
「現実を見てください。もう3「ピー」歳なんですから」
え、30越えているのか。そうには見えないが。
「カイル君、嬉しいこと言ってくれるわね」
「……読まないでください」
もう辞めたい。
「す、すみません!校長がご迷惑おかけしました!辞めないで下さい!お願いします!」
目の前の男性が素晴らしい90度を見してくれる。
「あなたも読めるんですか?」
「いいえ、流れ的にそうではないかなと思いまして」
良かった。読心術を使える人が校長以外にいなくて。
「遅くなりました。私この学校の事務長をしております、ライナス=フロックハートと申します。よろしくお願いいたします」
「えーと、今日からこの学校で働くことになりました、カイル=フィギスです。こちらこそよろしくお願いします」
ん?フロックハート?確か校長もフロックハートだった気がする。
「あ、付け加えますとあれの夫です」
「あー、旦那さんですか……毎日お疲れ様です」
「いえいえ、もう慣れました。結婚して10年経ちますから……」
家でも学校でも疲れが取れないんなんて……かわいそうすぎる。それも10年間。
「ねえ、なんかおかしな方向に行ってない?」
いくら校長でも旦那さんは大切にしないと逃げられますよ。
「私、美人!」
あなたが美人でもあんな性癖があれば誰でも逃げます。
「でも……」
落ち込んだ校長をライナスさんが励ます。
「はぁ、あなたは校長です。皆さんの見本となるお方です。しっかりしてください。お願いします」
「……そうよ!なに、これくらいで落ち込んでいるのよ!私は、私は皆の永遠のアイドルよ!今こそそれを「はい、茶番はこれくらいにしましょう!カイル先生には当学校が抱える問題を聞いてもらわないといけません。そうですよね?校長先生」……そうね」
いきなり校長が真剣な顔をする。
「何か事情があって俺が指名されたんですよね?」
俺は校長に確認する。
「ーーーーーというわけであなたに決まりました。ごめんなさい」
校長が全て話し謝ってくる。あなたは悪くないです。
「そういうことです。嘘は一つもありません」
とライナスさんが言う。
俺はこんな話を聞いて嘘だとは思わない。だから……。
「わかりました。その依頼、引き受けます」
俺は何の迷いもなく即答する。
「良いのですか?今までの人はこの話を聞くとすぐに帰られます……」
俺はそんな奴等とは違う。腰抜けではない。
「変えますよ。変えてみせますよ」
俺は変えてみせる。この腐り果てた学校を。
と言った方がいいのか?
そもそもこの依頼、そこまできつくない。
生徒が先生を嘗めてるだけ。
調子に乗っている生徒の鼻をへし折ればいい。
手始めにあれをして、妹は……親父とお袋に聞いた方がいいな。
学年が違ったら……放置。