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#7

 ――いじめられているのかもしれないと思った。


 私は3年生になり、今のクラスで目立ったことはほとんどなかったはずだ。

 そもそも、そのようなことをした覚えは全くない。


 それなのに、なぜ……?

 なぜ、私なの?

 私は何度も心の中で自問自答していた。


「そういえば……」


 早紀が何か思い出したようだ。

 私は彼女の顔を見ながら、首を傾げる。


「今日の朝、昇降口でボクと凪ちゃんに挨拶をした時、友梨奈ちゃんはホッとした顔をしてたからさ」

「うっ……」


 私は思わず、ギクッとする。

 早紀にあっさり見破られていた。

 そのため、彼女は何回も「怪しい」と私に言っていたと思う。


「ところで、話は変わるけど、友梨奈は「大丈夫じゃないのに大丈夫」って言うタイプ?」

「う、うん」

「やっぱり? そうだろうなぁと思ったよ」


 柚葉は私の性格を見破られていたようだ。

 確かにそうかもしれない。

 私は「大丈夫じゃないのに大丈夫」と言ってしまうところがある。

 だから、物事を頼まれたとしても、断れずになんでもやろうとするタイプでもあるのだ。


 それにしても、2人は凄いと思う。

 私はもちろんのこと、早紀と柚葉は担当してる楽器が違うからパート練習の時はほとんど話さない。

 早紀や凪は1年生の頃からの付き合いだから、一緒にいる時間は長い。

 それに対して、柚葉は私と同じクラスになってまだ数週間ぐらいしか経っていないのにさすがだ。


「そうだ、友梨奈ちゃん」

「ん?」

「ボクも柚葉ちゃんとおな……」


 早紀が私に言いかけた時だった。


「工藤先輩、友梨奈先輩、荒川先輩。おはようございます!」

「先輩、おはようございます! 私達より早いなんて珍しいですね!」

「おはようございます!」


 あわわ……どうしよう……。

 後輩達が続々と楽器を手に持ち、音楽室に入ってくる。


「「おはよう」」


 私達3人は後輩達に挨拶を返す。


「あたしも楽器の準備、終わったよ! ところで……友梨奈、早紀、柚葉? みんな、どうしたの? なんか真面目な顔をしちゃって……」


 凪もトランペットを持ち、音楽室にやってきた。

 うぅっ……どうしよう……。

 そこに入ってきた部員達は状況が分からず、きょとんとしてるので、少し対応に困ってしまう。


「いや、どうもしないよー」


 早紀が何事もなかったかのように振る舞う。


「なーんか、おかしいのが数人いるけど……」


 凪が呆れたように呟く。


「おかしくないよー」

「なんでもないよー」

「3人で話してただけだもん」

「だから、1、2年生は心配しないでね?」


 私達は凪と後輩達を交互に見ながら、少し慌てたように言う。

 後輩達は「ハイ!」と素直に返事した。


「凪ちゃんにもあとで話すから! それでいいでしょ?」

「うん、それならいいや。まだみんな揃ってないけど、朝練を始めてね!」

「「ハイ!」」


 私は周りを見てみるが、確かに全員揃っていない。

 今のところは部長と副部長の姿をまだ見ていないので、凪が代わりにまとめていたのかもしれない。


「みんな、ごめんね!」

「みんな、遅くなっちゃってごめんね!」


 部長と副部長が5分くらい経ったあと、音楽室に駆けつけた。

 2人とも走ってきたせいか、息が上がっている。


「私達がくるまで誰がまとめてくれてたの?」


 部長が3年生全員に問いかけると凪が手を上げる。


「あたしだよ!」

「新井さん、ありがとね」

「いいえ」


 彼女らは少し遅ればせながら朝練を始めた。



 *



 朝練という名の自主練習。

 部活を1日休むと、本調子に戻るまでに3日くらいはかかるので、テスト明けや休み明けの練習は結構グダグダだったりする。


 これは運動部とよく似ている。

 自分らしいプレーができるように日々の練習は怠れないんだと、バドミントン部に所属している聡が言っていた。


 話は少し逸れたが、私達は「昨日より上手くなりたい」、「みんなでコンクールや演奏会に出たい」などという思いで練習に励んでいるのだ。



 *



 数10分後……。


「もうそろそろ授業が始まっちゃうから、片付けに入ってー!」

「「ハイ!」」


 ふと時計を見たら、もう7時50分。

 私達は急いで楽器を片付け、それぞれの教室へ向かった。


 教室に行きたくないな……。

 ずっと、音楽室や図書館に留まっていられないし……。

 私が教室にいない間に何事も起きてないといいんだけどなぁ……。

 そう思っていた私は柚葉と一緒に他のクラスより騒がしく、行きたくない教室へ向かう……。


「あれ? まひろだ」

「本当だ」


 柚葉がまひろと呼ばれたクラスメイトが廊下にいることに気がついた。


 白鳥(しらとり) まひろ。

 彼女は学校の制服であるブレザーのボタンを全て開き、Yシャツの襟は外に出ており、ネクタイは緩く絞めている。

 下着がすぐ見えそうなくらいの短いスカート。

 いつも授業中に化粧をしたり、ファッション雑誌を読んだりしているので、先生によく注意されていることから私は彼女の名前を覚えてしまったようだ。

 まぁ、先生も呆れているけど――。


 ところで、なぜ、白鳥さんが教室の前にいるのだろうか……?

2016/01/16 本投稿

2016/02/07 改稿

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