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#6

 そんなこんなで嫌な思いをした4月が終わり、5月に入った。


 連休中はあの学級崩壊及び問題児や知らない人が多く、荒れたクラスに顔を出さずに済むことは私にとっては開放的だった。


 なぜなら、理由は2つある。

 1つ目は毎日のように消しゴムをちぎったものを全身に浴びずに済むから。

 2つ目はお気に入りのボールペンをわざとゴミ箱に捨てられ、何度も松井くんや誰かに拾われたことがあったからだ。


 その痛さはそれを受けた人にしか分からない。

 お気に入りのボールペンだって容器に合う新しいペン先に取りかえれば何度でも使えるのに――。


 おそらく、やった人は完全にわざとだ。

 そのようなことはその人達にとっては愉しくて仕方ないのかなと私は思っている。

 また、やられた人の立場に立って本当に考えてほしいと思う。


 そう思いながら、私は連休を過ごしていた。


 あっという間にゴールデンウイークが終わってしまい、もうすぐ3年生になってはじめての中間テストが近づいてくる……。


 それと同時に、今日からまた地獄の日々が始まろうとしている……。



 *



 私はいつも通りに学校に着いた。 昇降口で革靴から上履きに履き替え、朝練のため、音楽室に行こうとした時だった。


「あっ、友梨奈ちゃんだ。おはよう」

「友梨奈ー! おはよー!」


 早紀と凪が私のところに駆けつける。

 彼女らは私と同じ吹奏楽部なので、連休中も一緒だった。

 私達は昇降口で偶然、会ったことは3年生になってからは、はじめてのことである。


「凪、早紀、おはよう」


 私は笑顔で彼女らに挨拶を交わす。

 よかった……。

 私は2人を見て少し安心した。


「どうしたの? 友梨奈ちゃん」


 早紀が私の目をじっと見、首を傾げながら問いかけてくる。


「いや、どうもしないよ」


 早紀の問いかけに私はいつも通りに答える。


「怪しい……」

「怪しくないよ」

「怪しいよ」

「本当に怪しくないよ?」

「本当?」


 早紀と私でそのようなやり取りをする。


「まぁ、それより、早く朝練に行こう!」


 凪が一瞬、ポカンとした表情をしていたが、すぐに気にしなかったように装い、私達に朝練が行われる音楽室に行こうと促す。


「うん」

「そうだね。柚葉ちゃんはきてないかな?」

「まだ音が聞こえないから楽器倉庫で準備してるんじゃないんかな?」

「じゃあ、Let's go!」

「「Go!」」


 私達は早歩きで楽器倉庫に向かって歩を進め始めた。



 *



 私達の学校は放課後の練習の前に少しでも昨日の練習で改善すべき点や急遽変更になったところの練習をしなければならない。

 よって、私達の学校の朝練は自主練習といったところである。


 朝練の内容はもちろん、部活のやり方は学校によって異なるので、なんとも言えない。


 私達は楽器倉庫で楽器の準備をしていた。

 凪はカチャカチャと楽器の分解を始める。


「あっ! 友梨奈、早紀、あたしは楽器の手入れをしてから行くから、先に音楽室に行ってて!」


 彼女は慌ただしくトランペットの手入れをし始めた。


「うん!」

「分かった」


 私と早紀はリード(注・アイスのスプーンみたいなもの。木管楽器はリードがないと話にならない)を口に加えながら、楽器倉庫をあとにした。



 *



 ~~♪ ~~♪


 私と早紀は先ほどまで口に加えていたリードをつけた楽器を持ち、音楽室に入る。

 そこから聞こえてきたのは柚葉が演奏するホルンの音色だけが響いていた。

 彼女は私達がきたことに気がつき、マウスピースから口を離した。


「柚葉、おはよう」

「おはよう、柚葉ちゃん!」


 私達は柚葉に挨拶をする。


「友梨奈、早紀、おはよう。そう言えば凪は?」


 柚葉は私達に挨拶を返すが、凪がいないことに気づく。


「凪は楽器の手入れをしてからくるって」

「そうなんだ。ところで、友梨奈。ここ最近、目がすっごく腫れぼったかったけど……」

「ボクも。最近、目が充血してる時があるから、眠れないんかなって思ったんだ」


 柚葉と早紀はすぐ気づくなぁ……。

 確かに私はここ最近、目が充血してたり、腫れぼったかったりしてるから、気づかれても仕方ない。

 本当は聡と凪にも伝えるべきだと思うけど……。


「実は家に帰ったあと、泣いたんだ……」


 私は思い切って2人に打ち明けた。


「「えっ!?」」


 柚葉と早紀は目を丸くしながら驚く。


「そ、そんなに辛かったんだね」

「嫌だったね……。辛かったね……」


 彼女らはそれぞれ思ったことを口にする。


「うん……。今まで、経験したことがなかったから」


 確かに私はそのような経験は全くない。

 むしろ、はじめてだ。


「ところで、ボクは朝から気づいたことがあるんだけど……」


 早紀が何かを思い出したように話し始める。


「ん?」

「何?」


 私と柚葉は互いに顔を見合わせ、首を傾げた。


「多分、友梨奈ちゃんはもちろん、柚葉ちゃんも気づいてると思うんだ?」


 早紀は一旦言葉を切ると、こう続けた。


「友梨奈ちゃんはもしかして……いじめられてるのかな?」


 私はその時、早紀に言われ、ハッとした。

 消しゴムをちぎられたものが投げつけられたり、ペンをわざと捨てられたりしたということはもしかして……私は――。

2016/01/09 本投稿

2016/02/07 改稿

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