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#5

 私と柚葉が図書館に着いてからどのくらい経っただろうか?

 私はここにきて、ずっと泣き続けていたため、時が流れる感覚がなかったかもしれない。


「友梨奈、大丈夫? 教室に戻れそう?」

「……うん……。柚葉、ありがとう」

「また何かあったら教えてね」


 私は静かに頷き、柚葉は「よいしょ」と言いながら、ゆっくりと椅子から立ち上がる。


「じゃあ、戻ろう?」

「うん」


 私も椅子から立ち上がり、私達が教室に戻ろうとした時、図書館のドアがそっと開いた。


「あっ、先生だ」


 柚葉がドアの方を見る。

 早川先生が図書館に入ってきた。

 もしかしたら、彼女は私達のことを心配して様子を見にきたのかもしれない。


「木野さん、私が頼りなくてごめんなさい……」


 早川先生が私に向かって頭を下げてきた。


「先生……」


 私は「先生、私に頭を下げてまで謝らないで……」と言いたかったが、いざ本人が目の前にいるとなかなか言い出せなかった。


 それは仕方がないと思う。

 なぜなら、早川先生は3年生のクラスを受け持つことがはじめてみたいなのだから……。


 彼女が3年生ではじめて受け持ったクラスがあんなに荒れたクラスになってしまった私達、生徒が悪いのに――。

 そう思うと再び涙が溢れてきた。


「あー……友梨奈、また泣いてる」

「木野さん、泣かないで。あなたが泣いてるとお姉さんが悲しむよ?」

「……すみません……」


 そうだった。

 私は先生に言われるまで、あのことを忘れていた。

 友梨香を交通事故で亡くしたあと、私が前向きに生きなければならないことを――。


「まだ、3年生は始まったばかりだからね。これから、楽しいことが待ってるはずだから……」

「……ハイ……」

「もし、何かあったら先生やここにいる荒川さん、学級委員の松井くんとかに相談してね。私は頼りないけど、木野さんの味方だからね」

「分かりました。ありがとうございます」

「もうそろそろ、授業が始まるから2人とも、教室に戻ってね」


 早川先生が右手の腕時計を一瞬見る。

 彼女は私達に教室に戻るよう促した。


「「ハイ」」


 私は柚葉と一緒に図書館を出、戻りたくない教室に戻ることにした。



 *



 教室は相変わらず、他のクラスよりも数倍騒がしい。


「木野さん、大丈夫?」

「友梨奈ちゃん、気づかなくてごめんね」


 私と柚葉が教室に戻ってくると松井くんや何人かの女子が声をかけてくれた。


 嬉しい。

 こんな私を心配してくれる人がこのクラスにいるなんて……。


 その時、1限目の始めを告げるチャイムがタイミングよく校舎に鳴り響く……。



 *



 私は授業中も後ろから消しゴムをちぎったものの攻撃をずっと喰らいまくった。


 それは痛いし、私の周りだけその消しゴムが散らかっている……。


 一応、授業にきた先生は注意したが、それをやった人は聞く耳を持たず、時間が経つにつれてどんどん背中に当たってきた。


 その人はそのようなことをやって(たの)しいの?


 やられた人の気持ちを考えてよ……。


 きっと、ほとんどのクラスメイトはそう思ってるはずだよ。

 ごく一部のクラスメイトを除いては――。


 私は部活までなんとか終え、ようやく学校から解放された。

 重い足取りで家に向かって歩き始める。



 *



「ただいま」

「友梨奈、おかえりなさい」


 私が家に着き、靴からスリッパに履き替える。

 ママがキッチンから返事が返ってきた。

 本当はママの顔を見て言った方がよかったけど、今はママに会う顔がない。

 私は自室に向かって階段を駆け上がった。


「友梨奈?」


 ママはキッチンから出、私を呼んだが、私は部屋に閉じこもった。

 部屋の鍵を閉め、制服のままドアに寄りかかるようにスルスルとしゃがみ込む。


 ママ、ごめんね。

 私は落ち着くまで、1人になりたいの。


 私は今日のことを思い出してしまい、またまた涙が溢れてきた。

 よかった……。

 まだ、私の涙は枯れてなかったみたい。


 私は目がパンパンに腫れるまで、ずっと泣き続けた……。


 まだ4月の最後の方なのに、私の心の中は徐々に薄暗くなってきたようだ。


 そのうち光がなくなり、真っ暗になってしまうのだろうか……。

2015/12/19 本投稿

2016/01/31 改稿

2016/02/07 改稿

2016/10/02 後書き欄の「次回更新予告」の削除

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